日本国有鉄道では、ディーゼル、電気両機関車及び気動車等(以下「機関車」という。)の使用効率とその運行に係る関係業務機関の作業能率の向上を図るため、「機関車運用計画基準規程」(昭和39年運達第7号)等を定めていて、各鉄道管理局長等はこれらに基づき機関車の運行単位、行路、走行キロ等のほか機関車への燃料の補給(以下「給油」という。)、エンジン冷却用水の補給(以下「給水」という。)の時期等を指定した運用表を作成することになっている。また、燃料の補給区及び積込量については、列車の運行を確保し併せて経費の節減を図るため、「運転用動力取扱基準規程」(昭和39年運達第24号)に基づき各鉄道管理局長等がこれらを定めることになっている。
そして、各鉄道管理局等においては、上記の給油、給水の作業を請け負わせる場合、一般にはこれらの作業とブレーキ用等の砂の補給作業、構内清掃等の附帯作業(以下これらを総称して「燃料補給等の作業」という。)に排水処理装置の管理等の作業を合わせて請負契約を締結しているが、そのうち、燃料補給等の作業については、作業員の勤務形態別人数、作業内容、運用表に基づき具体的に定めた給油、給水の時刻等を記載した作業ダイヤを作成し、これを基に作業費を算定している。
しかして、旭川鉄道管理局ほか11鉄道管理局(注) が、昭和56年度中に管内74機関区等における上記作業の請負額として支払った24億4380万円のうち、燃料補給等の作業費15億1055万円について検査したところ、次のとおり、前記の各規程に基づいて作成した運用表における機関車への給油、給水の時期の指定や、作業ダイヤにおける作業時刻の設定が適切でないため、作業が効率的に行われず不経済になっていると認められる点が見受けられた。
すなわち、上記各鉄道管理局管内の旭川機関区ほか44機関区等における燃料補給等の作業について、運用表及び作業ダイヤにおける給油、給水時期の指定等の状況並びに契約の内容を検討したところ、給油については、運用表において走行キロ及び燃料消費量に関係なく原則として機関車の運行行路における1運行単位ごとに行うよう指定されており、これに基づいて具体的に設定された作業ダイヤにおける給油時刻をみると、いずれも機関車が機関区等に入区した直後に給油を行うこととされており、契約上もこれに必要な作業員を配置する場合に要する労務費を算出して作業費としていた。このため、1運行単位における機関車の走行キロが短く燃料タンク容量に比べて燃料消費量が少量でタンクになお多量の燃料がある場合にも給油が行われることになって給油回数が必要以上に多くなっていたり、複数の機関車の入区時刻が近接している場合当該時間帯に給油作業が集中したりしていて、これに必要な作業員数を配置せざるを得ない結果となっていた。
しかしながら、上記の45機関区等においては、燃料タンク容量と1運行単位における燃料消費量の実態からみて、1回の給油量を増加させ、給油間隔を伸ばすことにより、給油回数を減少させることが可能なものが多数見受けられるのに、運用表において一律に1運行単位ごとに給油することとして給油時期を指定しているのは実情に沿わず、また、複数の機関車の入区時刻が近接している場合でも、それらの機関区等における滞泊時間は相当長いのが実情であり、その間に給油すれば足りるのに、作業ダイヤにおいて給油時刻を一律に入区直後の時刻に設定しているのも実情に沿わないと認められ、これらのことは給水についても同様と認められた。
したがって、給油及び給水については、運用表において、タンク容量と消費量を考慮のうえ適切な時期(回数)を指定するとともに、作業ダイヤにおいて、機関車の滞泊時間を考慮のうえ作業が集中しないよう作業時刻を設定すべきであり、そのようにして作成された運用表及び作業ダイヤに基づく適正な作業員数により本件作業費を算定したとすれば、前記燃料補給等の作業費15億1055万余円のうち約1億9300万円を節減することができたと認められた。
このような事態を生じたのは、給油、給水に関し準拠することとしている前記の各規程において運用表で給油、給水の時期を指定する場合の基準が明確に示されていなかったこと、及び日本国有鉄道本社において効率的な作業ダイヤを作成させるための適切な指導を行っていなかったことなどによると認められる。
上記についての本院の指摘に基づき、日本国有鉄道では、57年10月に「機関車運用計画基準規程」、「運転用動力取扱基準規程」等を改定するとともに、各鉄道管理局等においては、これに基づき同年11月のダイヤ改正以降燃料補給等の作業を効率的に行わせることとする処置を講じた。
(注) 旭川鉄道管理局ほか11鉄道管理局 旭川、札幌、青函船舶、秋田、高崎、千葉、東京南、名古屋、大阪、福知山、広島及び鹿児島各鉄道管理局