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  • 昭和56年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第2 日本電信電話公社|
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  • 物件

顧客サービスシステムの増設用物品の購入に当たり、所要数量の見直しを行わなかったため、不要の物品を購入し不経済になったもの


(174) 顧客サービスシステムの増設用物品の購入に当たり、所要数量の見直しを行わなかったため、不要の物品を購入し不経済になったもの

科目 (建設勘定) (項)電信電話施設費
部局等の名称 日本電信電話公社本社
購入物品 顧客サービスシステム用のJS1301号HAブロックマルチプレクサチャネル用品8個、JS1200号H(P)Eチャネル装置用電源用品8個、JS1300号HDチャネル装置用品12個ほか13品目
購入価額 362,450,000円(当初概算契約金額329,733,600円)
契約の相手方 株式会社日立製作所
契約 昭和56年4月及び8月随意契約
支払 昭和56年10月、57年4月2回
支払金額

362,450,000円

 上記の物品の購入に当たり、所要数量の見直しを行わなかったため、不要の物品を購入し約6170万円が不経済になったと認められる。

(説明)

 上記の物品は、東京都23区内の電話局等の営業窓口に設置した端末装置により電話加入原簿の内容をオンラインで検索するシステム(以下「顧客システム」という。)に使用するもので、そのうちJS1301号HAブロックマルチプレクサチャネル用品(以下「チャネル」という。)は中央処理装置と電話加入原簿の内容を記憶する磁気ディスクパック装置(以下「ディスク装置」という。)との間のデータの転送を行うのに必要な装置である。

 しかして、昭和50年度に顧客システムの基本設計を行った際、都区内全域にオンラインサービスが拡大された時期の電話加入原簿を記憶するには36台のディスク装置が必要であるとし、また、所要のデータを端末装置に出力するまでに要する時間(以下「応答時間」という。)を2秒と設定し、上記36台のディスク装置を3群に分割し、各群にそれぞれ4個、合計12個のチャネルを割り当てることとした機器構成を定めた。そして、53年3月の顧客システムの試行開始までにディスク装置4台、チャネル4個等を設置し、残りはオンラインサービス範囲の拡大に伴い逐次増設することとして、55年度にディスク装置8台を、56年度にディスク装置12台及びチャネル8個を基本設計時に定めた機器構成をそのまま採用して増設している。

 しかし、顧客システムでは、上記のとおり、応答時間を基に1群4個のチャネルで12台のディスク装置を接続することとしているが、仕様書によると、このチャネルは1群4個で32台までのディスク装置を接続することができることになっており、この種システムにおける機器所要数量算定の基礎として一般に用いられる応答時間やチャネルの利用率(注) 等からみてシステムの運用上支障がなければ、本件顧客システムにおいても基本設計の機器構成に代えて、36台のディスク装置を2群に分け、それぞれに4個ずつのチャネルを接続する構成とすることが可能、かつ、経済的であると認められる。そして、その可能性について、本件契約時の56年8月までに入手できたディスク装置へのデータの読み出し、書き込み回数等の資料に基づいて検討してみたところ、ディスク装置16台と20台との2群の機器構成を採った場合においても都区内全域にオンラインサービスが拡大された時期における応答時間は2秒弱で当初の設計条件を満たしており、また、利用率も約28%でチャネルの所要数量を決定する基準として通常用いられる利用率50%から60%を下回っている状況で、運用上も支障がないと認められるので、このようにしたとすれば56年度に購入した8個のうち4個は購入の要がなかったと認められる。現に、日本電信電話公社が民間金融機関等にサービスを提供している他のデータ通信システムにおいては20台以上のディスク装置を1群として運用していたり、応答時間は3秒から4秒、チャネルの利用率は50%から60%と設定しているシステムが相当数見受けられる状況である。

 本件顧客システムについては、50年の基本設計後、詳細設計、プログラムの開発、試行、本格実施という経緯を経ており、56年8月の契約時にはチャネルの所要数量算定の基礎となる具体的な資料を入手していたのであるから、これに基づいて所要数量の見直しを行うべきであったのに、これを行うことなく当初の基本設計時の機器構成をそのまま踏襲したのは適切と認められず、このため不要なチャネル4個及びこれに電力を供給するJS1200号H(P)Eチャネル装置用電源用品4個、チャネルとチャネルを接続するJS1300号HDチャネル装置用品4個を購入する結果となったもので、その購入価額約6170万円が不経済になったと認められる。

 (注)  チャネルの利用率  ディスク装置等のファイルを単位時間に利用する回数に1回利用するのに必要とするチャネルの使用時間を乗じたもので、チャネルの利用度合を表わす値である。 (参考図参照)

参考図

(参考図)