日本電信電話公社(以下「公社」という。)では、街頭用ボックス形公衆電話の料金箱の取集業務を部外に請け負わせており、関東電気通信局ほか8電気通信局管内の各電気通信部等計58機関(注1) が昭和56年度に街頭用ボックス形公衆電話の料金箱延べ105万9千余個の取集業務に対して支払った4億5225万余円について検査したところ、次のとおり、取集業務に係る請負金額の算定が業務の実態からみて適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記取集業務については、公社では、50年7月「街頭公衆電話等の料金取集業務の運営について(指示)」(昭和50年電業電第30号 業務管理局長通達)を発して、取集する料金箱の標準容量が1個当たり硬貨1、500枚となっていることを配慮のうえ、取集コースの編成上の都合等を勘案して実施するよう指示しており、これに基づいて上記各機関では管内の対象電話施設ごとに取集周期を決定し、この取集周期により取集コースを定めるなどして積算した取集単価に基づいて単価契約を締結し、取集実績個数により請負金額を支払っていた。
しかしながら、街頭用ボックス形公衆電話は、近年、既設の10円硬貨専用の街頭用ボックス形公衆電話が逐次10円及び100円硬貨併用の街頭用ボックス形公衆電話(以下「100円黄公衆電話」という。)に取り替えられてきており、52年度には、全国の124,795施設のうち100円黄公衆電話は30%であったものが、56年度では、162,678施設のうち65%と増加しているが、一方、料金箱1個当たりの料金収入についてみると月額33,000円程度とほぼ横ばいとなっていることから、一定期間における料金箱内の硬貨収納枚数は100円黄公衆電話の比率が高くなるに従い減少していく傾向にあると認められた。現に、本院で関東電気通信局ほか2電気通信局管内9電気通信部(注2) の25,348施設について取集業務の実態を調査したところ、標準硬貨収納枚数1,500枚の半数以下の状態で取集されていると認められるものが対象施設数の過半数に達していた。このため、現行の取集周期は硬貨収納枚数の実際と乖(かい)離しており、不経済な事態となっていると認められた。
いま、仮に100円硬貨混入の割合を考慮し、個々の電話施設について硬貨収納枚数を算定し、現行の取集周期を延長するなどして取集作業の見直しを行ったとすれば、料金箱の取集予定延べ個数107万1千余個、これに前記の取集単価を乗じた額4億5719万余円は70万6千余個、3億7357万余円となり、約8300万円が低減できたと認められた。
このような事態となっているのは、前記通達において取集周期の設定方法やその見直し時期等に関し、何ら具体的な基準を定めておらず、しかもその後においても、これらの実態を踏まえた処置を講ずるための指導を十分に行わなかったことなどによると認められる。
上記についての本院の指摘に基づき、日本電信電話公社では、57年10月に「街頭公衆電話等の料金取集業務運営の改正について(指示)」(昭和57年電業電第46号 業務管理局長通達)を発して、取集周期、取集作業の見直しの要件を新たに明示することにより取集業務を硬貨収納枚数の実態に適合したものに改め、同月以降締結する請負契約から適用することとする処置を講じた。
(注1) 関東電気通信局ほか8電気通信局管内の各電気通信部等58機関
関東電気通信局 | 千葉、埼玉、茨城、群馬、山梨各電気通信部 |
信越電気通信局 | 長野電気通信部管内長野電話局、松本、信州新町、中野、木曽福島、諏訪、飯田各電報電話局 |
東海電気通信局 | 愛知、静岡両電気通信部 |
北陸電気通信局 | 北陸電気通信局(富山電気通信部管内) |
中国電気通信局 | 岡山電気通信部、山口電気通信部管内下関電話局、山口、小郡、宇部、小野田、岩国、柳井、防府、徳山、下松、光、萩、美称各電報電話局 |
四国電気通信局 | 徳島電気通信部管内徳島、鳴門、小松島、阿南、牟岐、日和佐、脇町、阿波池田、鴨島各電報電話局 |
九州電気通信局 | 福岡電気通信部 |
東北電気通信局 | 山形、秋田両電気通信部、宮城電気通信部管内吉岡、岩沼、亘理、白石、大河原、鳴子、中新田、小牛田、石巻、気仙沼、迫、若柳、栗駒各電報電話局、福島電気通信部管内福島、二本松各電報電話局 |
北海道電気通信局 | 札幌、旭川両電気通信部 |
(注2) 関東電気通信局ほか2電気通信局管内の9電気通信部
関東電気通信局 | 千葉、埼玉、茨城、群馬、山梨各電気通信部 |
中国電気通信局 | 岡山、山口両電気通信部 |
北海道電気通信局 | 札幌、旭川両電気通信部 |