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  • 昭和56年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第6 阪神高速道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

道路標識柱の製作費の積算について


 道路標識柱の製作費の積算について

 阪神高速道路公団(以下「公団」という。)では、自動車専用道路の新設、改築等の工事を毎年多数実施しているが、そのうち、大阪第一建設部ほか3建設部(注) 及び大阪、神戸両管理部が昭和55、56両年度中に契約している夕陽ヶ丘入路標識柱工事ほか25工事(工事費総額7億2938万円)について検査したところ、次のとおり、道路標識柱の製作費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記26工事は交通案内、規制等の標識板、テレビカメラ等を支持するための道路標識柱を製作し、設置するもので、その製作に当たっては主材料に鋼管を、補助材料に鋼板及び形鋼を使用し、工場においてこれらの鋼材を切断、溶接などの加工をし、更に防錆のための溶融亜鉛めっき付着量550g/m2 (以下「亜鉛めっき」という。)を施した後、現場において門型、F型等の形状に組み立てているものであるが、その製作加工費及び亜鉛めっき費の積算についてみると、公団本社制定の「積み上げ単価ファイル」、「土木補修工事積算基準」及び「基礎単価表」(以下これらを総称して「積算基準」という。)に基づき、製作加工費については、1t当たりの製作工数を12.5人とし、これに労務単価を乗ずるなどして1t当たり326,713円から356,681円とし、製作重量563.6t分で1億9282万円、また、亜鉛めっき費については形状の複雑さに応じて1t当たり87,150円又は140,700円とし、亜鉛めっきを施す鋼材重量573.6t分で7259万余円、合計2億6541万余円と算定していた。

 しかして、上記積算基準の製作工数はこの種標識柱の製作業者団体が需要者向けの価格算定資料に示した工数を基として、1t当たり門型13.9人及びF型等10.4人とし、公団の過去の施工実績が総設置重量比で門型標識柱60%程度、F型等標識柱40%程度となっているので、この率で加重平均して両形式とも1t当たり12.5人として定めたものである。また、上記の亜鉛めっきの単価は、積算基準を作成した53年当時、積算関係資料に本件標識柱と同程度のめっき付着量のものの単価が掲載されていなかったので、公団が亜鉛めっき業者から参考に徴した見積書により定めたものである。

 しかし、

(1) 上記製作工数は、1基当たりの重量が0.8tから1.6t程度で、また、1基しか製作しない場合を想定した工数であるのに対し、本件各工事の標識柱は、同形状の1基当たり平均3t程度のものを1工事当たり平均7基(21t)程度製作するもので、このような場合は通常1t当たりの製作工数が低減するのであるから、上記の製作工数をそのまま採用したのは施工の実情に沿わないと認められ、本院がこの種標識柱を設置している他団体及び製作業者について調査したところ、本件程度の標識柱の製作工数は前記工数の85%程度となっており、本件各工事の製作工数は相当高いものとなっていた。

(2) 亜鉛めっきの単価については、54年ごろから積算関係資料に本件標識柱と同程度のめっき付着量のものの単価が掲載されるようになっており、また、本件標識柱と同種の構造物を多数設置している他団体では、その積算関係資料を参照して単価を定めており、これらの単価は公団の前記積算単価1t当たり87,150円又は14,700円の80%程度又は50%程度となっている状況で、本院が製作業者について調査したところでもこれと同程度の単価となっており、本件各工事の単価は相当高いものとなっていた。

 したがって、上記各工事の製作加工費及び亜鉛めっき費について、施工の実態等を考慮して積算したとすれば、積算額を約6000万円程度低減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、阪神高速道路公団では、57年10月に積算基準の製作工数及び亜鉛めっきの単価を適正なものに改め、同月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

 (注)  大阪第一建設部ほか3建設部 大阪第一、大阪第二、大阪第三、神戸各建設部