本州四国連絡橋公団(以下「公団」という。)では、本州四国連絡橋の建設工事を実施しているが、そのうち第一建設局ほか2建設局(注1) で昭和55年度以降57年8月までに契約している門崎高架橋上部工(4径間)製作工事ほか17工事(工事費総額599億2100万円)について検査したところ、次のとおり、鋼板の一次素地調整費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の各工事は、本州四国連絡橋の海中基礎の鋼製設置ケーソン、橋りょうの塔、箱けた、補剛けた等を製作、架設するもので、これらに使用する鋼板には公団本社制定の「鋼橋等塗装基準」に従い、一次素地調整として原板ブラスト処理(注2) 及びショッププライマー(注3) (無機ジンクリッチプライマー)塗装を行うものであるが、この一次素地調整費の積算についてみると、公団本社制定の「土木工事積算要領・土木工事積算標準」(以下「積算基準」という。)に基づき、工事請負業者が自社工場において、鋼板をブラスト設備によりブラスト処理を行った後、塗装工によりショッププライマーを塗布することとして1m2 当たり469円から561円計1,248,116.6m2 分を総額7億4102万余円(工場管理費を含む。)と算定していた。
しかし、本院において、鋼板の一次素地調整の施工の実態を調査したところ、近年、大手の鉄鋼会社(以下「鉄鋼各社」という。)では原板ブラスト処理とショッププライマー塗装を自動的に連続して行う機械設備を保有し、鋼板需要者の要望に応じてこれらの処理を行い、一次素地調整済みの鋼板を供給しているのが実情であり、本件各工事のほとんどの請負業者が自社工場で施工することなく鉄鋼各社に発注している状況であった。そして、鉄鋼各社は需要者等に一次素地調整の料金を示しており、それによれば1m2 当たり300円となっていて、上記積算単価に比べて相当低廉となっていた。
したがって、本件各工事について、鉄鋼各社が示している料金により積算したとすれば、積算額を約3億2000万円程度低減できたと認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、本州四国連絡橋公団では、57年11月に一次素地調整費の積算について鉄鋼各社が示している料金によることとするよう積算基準を改め、同月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。
(注1) 第一建設局ほか2建設局 第一、第二、第三各建設局
(注2) 原板ブラスト処理 鋼球や鋼砕粒など細粒を原板に投射し、その衝撃力で黒皮、さび等を除去する。
(注3) ショッププライマー 原板ブラスト処理後、一時的な防錆効果のために塗る塗料。これにより製作加工の能率を上げることができる。