ページトップ
  • 昭和56年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第8 日本鉄道建設公団|
  • 特に掲記を要すると認めた事項

上越新幹線建設に伴い取得した併設道路用地の費用の回収について


 上越新幹線建設に伴い取得した併設道路用地の費用の回収について

 日本鉄道建設公団(以下「公団」という。)では、上越新幹線建設用地取得の際、本線沿いの工事用道路用地のほか、沿線の新潟市ほか27市町村の要望により将来市町村が幅員4mの工事用道路用地と併せて道路幅を広くして利用するための併設道路用地を、工事用道路用地の外側に沿って昭和47年度から56年度までの間に取得しているが、その取得面積は合計約212,800m2 (幅員は主として2m、延長約100km)、取得費用等は約55億3600万円となっている。

 これらの併設道路用地は、新幹線の建設工事に直接関係のある用地ではないから本来関係市町村が独自に取得すべきものであるが、市町村の財政事情や工事の円滑な進ちょく等を配慮して、取りあえず公団は、これらに要した費用は将来関係市町村が負担することを前提とするなどの覚書等を取り交わし、詳細については引き続き協議することとして買収したものである。そして、工事用道路用地については、新幹線開業以降は日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)に対して、鉄道施設と一体のものとして貸付料の対象となるが、併設道路用地については、国鉄への貸付対象とならないので、関係市町村に有償譲渡されない限り、公団において保有せざるを得ないこととなる。

 しかして、国鉄においては、上越新幹線と同時施行の東北新幹線建設に伴い、関係市町村の要望によりこの種併設道路用地を取得している事例があり、費用の負担額、精算時期、物件の引渡し条件等の詳細な協定を当該市町村との間に締結していて、これに係る資金の回収は順調に行われているが、これに比べ、公団においては、本件用地の取得に当たって、このような具体的な協定を取り交わしていなかったなどのため、長期間資金の回収は皆無の状況となっていたので、本院において56年2月に、早急な解決を図る要がある旨の指摘をしたところ、公団では、同年10月に至り、ようやく譲渡価額は原則として財産原簿価額(取得価額、築造費及び利子等)とすることのほか、協定の締結は開業までを目途とすることなどの具体的な処理方針を定め、関係市町村に対し、当該併設道路用地についての概算の譲渡価額及び面積を示し、問題の解決を図ることとした。

 しかるに、その後も事態はほとんど進展をみせておらず、協定締結の目途とした上越新幹線の開業時点においても関係市町村は、有償譲渡に対して財政事情等の理由から協定の締結に応じていない状況であり、このため取得に要した投下資金約55億3600万円が長期間未回収のままとなっており、その建設利息も56年度末までに約16億6000万円(うち56年度分約3億3000万円)と多額に上っている状況である。

 このような事態となったのは、公団において、当初、工事の進ちょくを図るあまり関係市町村と有償譲渡に関する詳細な内容を規定した協定を締結することなく、取りあえず有償譲渡を前提とした覚書等を取り交わしたにとどまり、併設道路用地を取得した後においても、関係市町村との間に工事に伴う各種の設計協議のほか減渇水補償等の問題が絡んでいるものもあって、本件用地問題だけを切り離して単独で解決することが困難であったなどのため、交渉を強力に推し進めることができなかったことによるが、当初公団による本件併設道路用地の買取りを要望した関係市町村においてその後財政事情等の理由を繰り返して有償譲渡の協定を締結することについて応じていないことにもよると認められる。

 しかしながら、今後このような事態のまま推移すると、上越新幹線の本体施設を国鉄に貸し付けた後においても、本件併設道路用地をそのまま公団において保有する変則的な管理を続けることとなるばかりでなく、前記投下資金が未回収のまま放置され、更に今後も引き続き毎年多額の利息を負担しなければならない事態が継続することになる。