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  • 昭和56年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第9 住宅・都市整備公団|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

民営賃貸用特定分譲住宅に関する業務運営について処置を要求したもの


 民営賃貸用特定分譲住宅に関する業務運営について処置を要求したもの

(昭和57年11月19日付け57検第402号 住宅・都市整備公団総裁あて)

 住宅・都市整備公団では、昭和49年4月以降民営賃貸用特定分譲住宅(以下「民賃住宅」という。)の建設及び譲渡の業務を行っていて、56年度までの実績は、建設2,445件65,544戸、譲渡2,088件56,246戸に上っており、56年度中の民賃住宅建設戸数が公団の住宅建設戸数に占める割合は36.8%に達し、民賃住宅は同公団の住宅建設事業において賃貸住宅及び分譲住宅と並ぶものとなっている。

 この民賃住宅に関する業務は、49年に制定された「民営賃貸用特定分譲住宅制度要綱」(昭和49年総裁通達46−6。以下「制度要綱」という。)に基づいて実施されているが、制度要綱によると、譲渡対象者は、貸家経営を行おうとする土地の所有権又は借地権を有する個人又は法人、建設地域は、原則として京浜、京阪神、中京及び北九州・福岡圏の既成市街地及びその周辺地域並びに地方中心都市、建設敷地面積は、2,000m2 (既成市街地の場合は1,000m2 程度)以上、公団資金の建設費への充当範囲は、住宅については公団賃貸住宅程度の仕様であれば原則として工事費相当額、住宅に併設される店舗等の施設(以下「施設」という。)については公団賃貸住宅程度の仕様であれば併せて建設する住宅の床面積の3分の2(支社長が特に健全な市街地の形成に資すると認める場合は4分の3)以下の床面積の工事費相当額としている。また、公団充当資金の償還については、期間は住宅35年(53年度までは30年)、施設10年で、金利は住宅の当初10年間は年利率5.5%(利子収支差額については政府の一般会計から利子補給を受けている。)、その他は民間から調達した資金の借入金利に連動した利率とし、債権の保全措置としては、譲渡した建物についての抵当権設定登記及び所有権移転請求権の仮登記、その敷地についての停止条件付賃借権設定請求権の仮登記を行うとともに、個人又は法人のいずれか1名以上の連帯保証人を立てさせることとしている。

 しかして、同公団においては、第3期住宅建設5箇年計画(51年度から55年度)の発足を契機として、地方都市の人口及び世帯の増加に対応して、制度要綱を弾力的に運用し、賃貸住宅の経営が可能な地域であれば上記以外の地域でも建設できることとしたり、敷地面積の要件を緩和して12戸程度以上の住宅建設が可能な敷地面積があれば建設できることとしたり、施設建設費への充当範囲を拡大して併せて建設する住宅の床面積と同面積の工事費相当額までとしたりしてきたこともあって、近年、民賃住宅建設の伸びが著しく、割賦金の総額が急増している。

 このような状況にかんがみ、民賃住宅割賦金の償還状況について検査したところ、次のとおり適切を欠くと認められる事態が見受けられた。

 すなわち、56年度末においては、民賃住宅の譲渡件数は施設なしの住宅877件、施設付住宅1,211件、計2,088件となっているが、これらについて毎月1回徴収することとしている割賦金の収入調定額(前年度以前収入調定に係る収納未済額を含む。)は住宅に係るもの258億9851万余円、施設に係るもの121億3551万余円、計380億3402万余円であるのに対し、収納未済額が住宅に係るもの33億6624万余円、施設に係るもの34億0269万余円、計67億6894万余円となっていて、収納未済額の収入調定額に占める割合はそれぞれ12.9%(住宅)、28.0%(施設)、17.7%(計)と高率であり、滞納額に係る遅延利息相当額は56年度末現在で8億6568万余円の多額に上っている。そして、収納未済となっている割賦金のうち1契約につき12回分以上滞納しているものが104件51億5234万余円(住宅に係るもの25億1798万余円、施設に係るもの26億3435万余円)に上っていて、前記収納未済額の76.1%を占めている状況である。

 いま、上記の12回分以上滞納しているものを主な態様別に分類してみると、次のとおりである。

(1) 貸家経営の不振によるもの 14件 滞納額 3億5303万余円
 これらは、賃貸住宅に対する需要減退等のため、入居者が少なかったり、低賃料で入居させたりしていて賃料収入が計画どおり得られないものである。
(2) 施設経営の不振によるもの 27件 滞納額 13億2694万余円
 これらは、施設に対する需要の見通しが十分でなかったなどのため、賃借人がいなかったり、低賃料で貸し付けていたりしていて、賃料収入が計画どおり得られないものである。
(3) 賃料収入金の他事業への充当等によるもの 32件 滞納額 18億5584万余円
 これらは、譲受人が他に営んでいる事業の資金として民貸住宅の賃料収入金を充当しているものなどである。
(4) 賃料収入金の借入金返済への充当によるもの 6件 滞納額 5億9323万余円
 これらは、民賃住宅建設に関連して譲受人が要した土地購入資金、敷地に設定されていた第三者の権利を抹消するための資金、施設内装工事資金等として金融機関等から借り入れた資金の返済に賃料収入金を優先充当しているものである。
(5) 譲受人の不誠実によるもの 8件 滞納額 3億9720万余円
(6) その他の事由によるもの 17件 滞納額 6億2607万余円

 これらは、入居者の賃料の滞納、居住環境の悪化による入居者の退去、管理人による賃料収入金の横領、第三者のための保証債務の履行など種々の理由によるものである。

 しかして、上記のような事態が生じているのは、貸家、施設経営の不振や譲受人の不誠実等によるところでもあるが、同公団における民賃住宅の譲渡に係る事務処理において、(ア)譲受申込についての調査、検討や資料徴取が十分でないまま、賃貸住宅、施設の需要見通し、予定家賃、予定賃貸料の設定、関連の調達資金返済についての考慮等が的確でない償還計画を作成しているなど審査が必ずしも十分であるとは認められない状況であること、(イ)滞納事案についての支払催告の処置が総じて緩慢で、支払計画、財源対策に関する確約書等の提出を求めるなどの方途も講じられておらず、また、譲渡契約において約定している割賦金の一時支払請求権等の権利、又は前記のような抵当権等の権利を行使した例もないなど滞納発生後の対応も適切に行われているとは認められない状況であることによると認められる。

 ついては、前記の滞納となっている事態について適切な対応策を講じて早期解消を図る必要があることはもとより、住宅・都市整備公団では、建設省が57年度に木造賃貸住宅地区総合整備事業制度を創設したのに伴い民賃住宅制度を活用してこれに参画することとなるなど今後も引き続き多数の民賃住宅の建設が見込まれているのであるから、以上のような事態にかんがみ、速やかに、審査業務に関しては、徴すべき書類、調査の内容及び方法、償還計画の作成方法等について、滞納発生後の措置に関しては、債権の保全対策、実行手続等について、具体的な基準や指針を整備する処置を講ずるとともに、これが厳正に励行されるよう指導監督を徹底し、もって民賃住宅に関する業務の適切な運営を図る要があると認められる。