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  • 昭和56年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第10 雇用促進事業団|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

総合高等職業訓練校の転換計画及びその実施について処置を要求したもの


 総合高等職業訓練校の転換計画及びその実施について処置を要求したもの

(昭和57年11月17日付け57検第399号 雇用促進事業団理事長あて)

 雇用促進事業団では、職業訓練法(昭和44年法律第64号。以下「法」という。)及び雇用促進事業団法(昭和36年法律第116号)に基づき、労働者の職業に必要な能力を開発し、向上させるなどのための公共職業訓練を実施しており、このための訓練施設は、労働保険特別会計の雇用勘定からの出資金及び交付金を受けて昭和56年度末現在で、職業訓練大学校1校、職業訓練短期大学校(以下「短大」という。)6校、総合高等職業訓練校(以下「総訓校」という。)83校等計93施設を設置、運営している。

 これら施設のうち総訓校は、主として新規中学校卒業者(以下「中卒者」という。)を対象として基礎的技能を習得させるための養成訓練(訓練期間2年)を行う施設として設置(取得価額552億1378万余円)され、運営(56年度の運営費232億2493万余円)されているものであるが、近年、中卒者の進学率が向上して養成訓練の対象者が減少してきたこと、中高年の離転職者の再就職を図るための能力再開発訓練を行うことが急務となってきたことなどにより、53年5月、法の一部改正が行われ、総訓校(53年4月末現在設置数87校)は、すべて新規高等学校卒業者を対象とした高度技能労働者の養成訓練を実施する短大又は離転職者のための能力再開発訓練等を実施する技能開発センター(以下「センター」という。)に転換させることとなった。これに伴い従来総訓校と都道府県立の職業訓練校(以下「県訓校」という。)とが分担してきた中卒者の養成訓練はすべて県訓校(57年3月末現在286校、定員27,905名)の担当するところとなるなど、公共職業訓練の体制の再編整備が図られることになった。

 しかしながら、総訓校の転換の実施状況についてみると、87校628訓練科のうち57年8月末現在で転換を了しているものは、法改正後4年余も経過しているのに全体の具体的な転換計画が策定されていないこともあって、短大に転換したもの5校43訓練科、センターに転換したもの3校19訓練科、一部の訓練科が転換したもの151訓練科、計213訓練科で33%程度にすぎず、残りの415訓練科のうちいまだに転換の目途すらたっていないものが355訓練科あり、このなかには全訓練科について転換の目途がたっていないものが24校167訓練科もある状況である。

 このような転換状況にかんがみ、旭川総訓校ほか37校(取得価額255億3809万余円)の運営(56年度の運営費111億6503万余円)の実態について調査したところ、これらの総訓校では短大又はセンターヘ転換するまでの間の暫定措置として養成訓練を引き続き実施しているが、近年、中卒者の入校希望者が減少していること、同地域内の県訓校においても同一又は同種の訓練科が設けられていることなどから入校生が少なく、訓練生の定員と実員とを対比してみると55年度は定員4,655名に対し実員2,552名、56年度は定員4,305名に対し実員2,541名にすぎない状況となっている。これを訓練科ごとにみると、定員に対する実員の割合が50%に満たないものが55年度では233訓練科のうち88訓練科、56年度では215訓練科のうち72訓練科となっており、更に指導員1名が受け持っている訓練生数が5名以下となっている訓練科が、55年度では116訓練科、56年度では90訓練科もあり、これらのうちには訓練生が在科していないものが2科、1名のものが6科、2名のものが38科、3名のものが49科も見受けられた。そして、これら38校のうち33校では、養成訓練生数が減少していることから離転職者等の再就職のための職業訓練を併せて実施しているが、これらについても養成訓練同様入校希望者が少なくなっており、また、訓練を修了した者のうち再就職できなかったり、受講した訓練とは全く関連のない職種に再就職していたりしている者が半数近くもいる状況であった。

 このように転換をしていない総訓校における養成訓練及び離転職者等に対する訓練がいずれも非効率なものになっていて、事態解消の目途が全く立たないまま推移しているのは適切ではなく、養成訓練の受講者が多かった当時の訓練定員を基に設置した教室、実習場等の施設の規模等が現行の訓練定員や内容からみて過大なものとなっている。

 また、上記38校では54年度から56年度の間に養成訓練用の機器43億8441万余円を新たに設置しているが、前記のように総訓校における養成訓練は短大又はセンターヘ転換するまでの間暫定的に行われているものであり、近年、養成訓練生数が減少していることなどを併せ考慮すると、総訓校の訓練用機器の設置については極力これを抑制し、将来転換することとなる短大又はセンターにおける訓練の設備基準が明らかになった段階で必要な機器を設置するよう配慮の要があると認められる。しかるに、これらの指導が十分でなかったり、転換計画が明示されないこともあり、各総訓校では従来と変わることなく訓練用機器の調達を要求しており、旭川総訓校ほか19校についてみると、最近数年間の訓練生数の実績からみた必要台数を上回って旋盤等47台合計1億9445万余円が新たに設置されており、なかには労働省令の定める養成訓練に関する設備基準により保有すべき台数をも上回っていたものが見受けられた。

 このように未転換の総訓校において、その運営が効率的に実施されていないのは、社会経済状況の変化に即した公共職業訓練体制を目途とした法の改正後、4年余を経過しているのに総訓校全体の具体的な転換計画さえ策定されていないこともあって、従来どおり養成訓練を県訓校と競合して実施していたりしているなど、同事業団の転換に対する適切な対応が十分行われていなかったことによると認められる。

 ついては、上記のように訓練施設が過大になっていたり、運営が非効率となっている事態にかんがみ、速やかに未転換校の転換に関する具体的な計画を策定し、関係機関との調整の促進を図り、法改正の趣旨に則した転換を行うとともに、訓練用機器については適正な数量を設置するよう指導、監督を強化し、もって訓練の効果的な実施と施設・機器等の効率的な運営ができるよう適切な処置を講ずる要があると認められる。