日本原子力研究所では、その業務の実施に要する経費について毎年度多額の政府出資及び国庫補助(昭和55事業年度以降2箇年間の政府出資額1167億余円、国庫補助金額318億余円)を受けているが、これらを原資として実施している個々の事業の実施が計画に比べて遅延する場合があるなどのため、年間を通じて相当額の余裕金を生じており、その昭和55事業年度以降2箇年間の1日当たりの平均残高は115億2400万余円に上っている状況である。この余裕金の運用状況について検査したところ、次のとおり適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、同研究所において業務上生ずる余裕金の運用については、日本原子力研究所法(昭和31年法律第92号。以下「法」という。)第33条の規定により、銀行への預金又は郵便貯金とされているが、この規定の運用については更に「余裕金の運用について」(昭和53年53達第42号。以下「理事長達」という。)を定めて銀行預金に限定し、その種類については定期預金(3箇月又は6箇月)、普通預金、当座預金及び通知預金によることとしていた。そして、これらの規定に基づく余裕金の運用実績についてみると、前記の1日当たり平均残高115億2400万余円に係る年間平均受取利息は3億9282万余円で、その平均運用利回りは3.4%にとどまっていた。
しかし、法第33条に規定する銀行預金の種類としては、理事長達において定めるもののほか、それらに比べて利回りの有利な譲渡性預金(注) が54年5月に創設されており、他団体においてはこれがかなり活用されているのであるから、同研究所においてもこれによる運用を図るべきであったと認められ、仮に、55年4月から57年3月までの2箇年間に3箇月又は6箇月の定期預金として運用した余裕金のうち譲渡性預金とすることが可能なものについて、これにより運用したとすれば、受取利息は定期預金による運用実績に比べて約1億5500万円増加し、2箇年間の余裕金全体の平均運用利回りは4.0%になった計算となる。
このような事態を生じたのは、主として前記のとおり、法による余裕金の運用方法を理事長達をもって更に限定していることによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、日本原子力研究所では、57年8月に、従来の理事長達を廃止し、譲渡性預金による余裕金の運用ができるようにすることなどを内容とする新たな理事長達を定めて、同月以降適用することとする処置を講じた。
(注) | 譲渡性預金 | 払戻しについて期限の定めがある預金で、譲渡禁止の特約のないものをいい、銀行等が証書1枚当たり5億円以上の単位で発行し、預入期間は3箇月以上6箇月以内で、利率は臨時金利調整法の適用除外となっている。 |