会計名及び科目 | 国立学校特別会計 (項)施設整備費 |
部局等の名称 | 京都大学 |
工事名 | 京都大学超高層電波研究センター基幹整備(敷地造成)工事 |
工事の概要 | 超高層電波研究センターの中高層大気観測施設を建設するため、中高層大気観測用レーダーのアンテナ敷地等の造成、電波障害防止フェンス等の築造を行う工事 |
工事費 | 1,058,100,000円(当初契約額980,000,000円) |
請負人 | 株式会社大林組 |
契約 | 昭和57年3月 指名競争契約 |
しゅん功検査 | 昭和58年3月 |
支払 | 昭和57年5月、58年4月2回 |
この工事のうち、電波障害防止フェンス(工事費相当額41,691,804円)の設計が適切でなかったため、その強度が著しく不足していると認められる。
(説明)
この工事は、京都大学超高層電波研究センターの中高層大気観測施設を建設するための敷地造成等の工事であって、滋賀県甲賀郡信楽町の山林の中腹部に中高層大気観測用レーダー(以下「MUレーダー」という。)のアンテナ敷地、観測棟敷地等を造成するとともに、電波障害防止フェンス等を築造したものである。
しかして、この工事のうち電波障害防止フェンスは、高さ約10m、延長約332mで、MUレーダーのアンテナ敷地の山すそ側にこれを半円形に取り囲むように築造したものであるが、その設計について設計図書でみると、165本のH形鋼(高さ150mm×辺の長さ150mm×ウェブ肉厚7mm×フランジ肉厚10mm)を支柱として2m間隔で建て、この支柱に横胴縁として等辺山形鋼をボルト止めし、これに鋼製ネットをボルト等で固定することとしている。そして、この設計は、本件フェンスが風速毎秒50mの風荷重に耐え得ることを条件とし、鋼構造建築物の構造設計の指針として一般的に採用されている「鋼構造設計規準」(社団法人日本建築学会作成)等に準拠して行っている。
ところで、上記「鋼構造設計規準」によれば、鋼材を支柱として使用する場合には、当該鋼材に係る圧縮応力度等は次式を満たさなければならないこととなっている。
しかるに、上記H形鋼を本件フェンスの支柱として使用できるかどうかの検討(断面算定)に当たって、次表のように、圧縮応力度及び曲げ応力度については正しく算定したが、許容圧縮応力度及び許容曲げ応力度については、その算定過程において、例えばその算定上必要となる当該H形鋼の座屈長さ(柱材の実長を、その支持条件の違い等を考慮して一定の方法で修正した仮定の長さ)の算出に際し、当該H形鋼は実際には下端が固定され上端が自由という支持条件であるのに、両端ともピン支持である場合の計算方法を採用するなどの誤りをし、それぞれ過大に算定したため、上記式の左辺は正しくは3.01となるのに0.97となり、その結果、同式を満たすものと誤認して、当該H形鋼を本件フェンスの支柱として使用することとしたものである。
(応力度の単位はkg/cm2 )
圧縮応力度 | 曲げ応力度 | 許容圧縮応力度 | 許容曲げ応力度 | 上記式の左辺の値 | |
当局の算定値 | 11 | 1,974 | 442 | 2,100 | 0.97<1 |
正しい算定値 | 11 | 1,974 | 146 | 673 | 3.01>1 |
そのため、風力係数、空気密度その他風速以外の本件フェンスの設計条件をそのまま踏襲して、本件フェンスが耐え得る風荷重に対応する風速を試算してみると、毎秒28m程度に過ぎないものとなっている。
すなわち、本件フェンスの設計は、風速毎秒50mの風荷重に耐え得るという設計条件を満たしておらず、本件フェンスの強度は所期のそれより著しく不足したものとなっており、工事の目的を達していないと認められる。
(注) | 圧縮応力度 | 材に外から圧縮力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさ |
許容圧縮応力度 | 材に生ずる圧縮応力度の設計上許される限度 | |
曲げ応力度 | 材が曲げられたとき、曲がった内側に生ずる圧縮力又は外側に生ずる引張力の単位面積当たりの大きさ。内側も外側も材の一番へりの部分の応力度が大きい。 | |
許容曲げ応力度 | 材の一番へりの部分に生ずる曲げ応力度の設計上許される限度 |