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上記の土地使用料の徴収に当たり、土地使用料の算定が適切でなかったため、徴収額が約12億6000万円低額となっていた。
このように徴収額が低額となっていたのは、土地使用料算定の基礎となる標準価格の算定に当たり、空港内に設定された路線価(注)
を平均して算出していたことなどによるもので、適切な算定方法に改める要があると認められた。
上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。
(説明)
東京航空局で、昭和56年度から58年度(58年4月末現在)までの間、東京国際空港の土地の一部を日本空港ビルデング株式会社等に、旅客ターミナルビルディング、航空機整備工場、有料駐車場等の用地として使用許可しているが、使用許可に当たり徴収した土地使用料(総額71億2262万余円)について検査したところ、次のとおり、算定方法が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記土地使用料は、運輸省が、関係省庁と協議のうえ定めた「昭和56年度、57年度及び58年度における空港の土地等使用料算定基準等について」に基づき、55年分の当該土地に係る相続税課税標準価格(以下「標準価格」という。)に所定の率を乗ずるなどして1m2 当たり年額848円56から4,516円65とし、56年度641,199.22m2 分24億1107万余円、57年度635,926.72m2 分24億6929万余円、58年度617,717.12m2 分22億4225万余円3箇年度分合計で71億2262万余円を徴収していた。
しかして、土地使用料算定の基礎とした55年分の標準価格の算定についてみると、空港を一つの団地と見なし、空港内の異なった土地の価格を平均して統一価格を設定することとし、55年分の同空港内の路線価図の路線価が、1m2 当たり70,000円から160,000円と路線別に設定されているので、路線価を集計のうえ、これを路線価を付している路線数で除した平均値1m2 当たり90,333円を標準価格としていた。
しかしながら、同空港において使用許可した土地は、主として航空機整備工場等の施設が設置されている地区(以下「整備地区」という。)と、主として旅客ターミナルビルディング、有料駐車場等が設置されている地区(以下「ターミナル地区」という。)とに分かれており、両地区の路線価、路線価を付した路線数及び土地使用許可面積との関係をみると、路線価がすべて1m2 当たり70,000円と低価で、かつ、使用許可面積が約27万m2 と少ない整備地区の路線数が11であるのに対して、路線価が1m2 当たり100,000円から160,000円と高価であって、かつ、使用許可面積が約35万m2 と多いターミナル地区の路線数が8にすぎない状況となっており、このような状況の下で上記のような算定方法により算出した標準価格は、常に低価に設定されることとなるものである。
また、国税庁の相続税財産評価に関する基本通達(昭和39年直資56)によれば、標準価格は、一区画の土地(以下「画地」という。)に面した路線の路線価を当該画地の位置や形状等による補正を行って算出すること(以下「個別計算」という。)となっているものであるから、路線価を平均して算出した標準価格は適切な標準価格を表示したものとは認められない。
したがって、標準価格は個別計算により、使用許可の対象となる画地ごとに設定する要があると認められた。
いま、仮に上記により、使用許可した画地ごとに1m2
当たりの標準価格を再計算すると、63,000円から180,800円となり、この結果56年度から58年度までの間の1m2
当たりの土地使用料年額は700円から9,040円、これに使用許可面積を乗じて算出した場合の土地使用料は、56年度28億2242万余円、57年度28億7719万余円、58年度26億8470万余円、3箇年度分合計83億8432万余円となり、前記の徴収額71億2262万余円は、これに比べて約12億6000万円程度低額となっていると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、運輸省では、58年11月に「東京国際空港土地使用料の算定方法について」の通達を発して個別計算の方法により標準価格を算定することに改め、59年度以降徴収する土地使用料から適用する処置を講じた。
(注) 路線価 おおむね同一価額と認められる一連の宅地が面している路線ごとに、相続税財産評価のため設定されている宅地1m2 当たりの価格