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  • 昭和57年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第11 労働省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

福祉施設の設置及び管理運営について適切な事業実施を図るよう意見を表示したもの


福祉施設の設置及び管理運営について適切な事業実施を図るよう意見を表示したもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定)(項)雇用促進事業団出資
部局等の名称 労働省
福祉施設の概要 労働省が雇用促進事業団に出資金を交付して設置する勤労者体育施設、農村教養文化体育施設、共同福祉施設
設置箇所等 北海道ほか23府県125箇所、出資額82億4693万余円

 上記125箇所の福祉施設は、設置及び管理運営が適切でなかったため、その利用が低調となっている。
 これら福祉施設は、雇用保険の事業主が負担した労働保険料を原資として、雇用保険の被保険者等の福祉の増進を図るため、労働省が設置市町村を決定し、これに基づき雇用促進事業団が建設を行い、その管理運営を都道府県等に委託して行わせているものであるが、設置市町村や施設内容等の決定において調査が十分でなく、また、設置後の管理運営に当たって利用促進を図るための適切な対策を講ずる配慮に欠けていたなどのため、その利用が低調となっていた。
 したがって、これら福祉施設の設置は今後も引き続き多数に上ることから、本事業の意義を十分生かすよう適切な実施を図る要がある。

 上記に関し、昭和58年12月5日、労働大臣に対して意見を表示したが、その全文は以下のとおりである。

福祉施設の設置及び管理運営について

 貴省及び雇用促進事業団(以下「事業団」という。)では、雇用保険法(昭和49年法律第116号)及び雇用促進事業団法(昭和36年法律第116号)の規定に基づき、労働保険料のうち事業主が負担し雇用福祉事業等に充てる分を財源として、貴省から事業団に出資金を交付して雇用保険の被保険者及び被保険者であった者(以下「被保険者等」という。)のために教養、文化、体育又はレクリエーション等の福祉施設を設置、運営しており、これら施設は、昭和57年度末現在で、勤労者体育施設ほか18種類で1,193箇所(出資額1636億9455万余円)に達していて、このうち、設置数が多く、今後も引き続き建設が予定されている勤労者体育施設、農村教養文化体育施設、共同福祉施設の3福祉施設は全国で855箇所(出資額611億7718万余円)となっている。

 貴省では、これらの福祉施設の種類ごとに定めた計画基本方針に基づき、毎年度市町村から施設設置要望を都道府県を経由して提出させ、これを審査のうえ設置市町村を決定し、事業団に通知し、事業団では、上記計画基本方針に即して定めた福祉施設設置方針及び事業団一般業務方法書の規定により施設の内容及び設置場所等を決定することとしており、設置した施設の管理運営は、事業団が都道府県に委託し、都道府県はこれをさらに地元市町村等に再委託して行わせている。

 そして、(ア)勤労者体育施設については、地方中小都市等を中心として、中小企業に働く勤労者が容易に利用できる地域に、体育館、野球場等を、(イ)農村教養文化体育施設については、農村地域工業導入促進法(昭和46年法律第112号。以下「農工法」という。)に基づき定める実施計画に従い導入される工業に就業する者が容易に利用できる箇所に、教養施設、スポーツ施設等を、(ウ)共同福祉施設については、中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条に掲げる中小企業者が組織する団体の所在する地域で、当該中小企業の従業員が容易に利用できる箇所に、教養文化施設等を、それぞれ地域の実情に応じて設置することとしている。

 しかして、事業団が45年度から56年度までの間に北海道ほか23府県に設置し、運営している上記3福祉施設205箇所(建設費総額190億8195万余円、うち出資額136億6204万余円)の56及び57年度中の利活用状況等について調査したところ、勤労者体育施設については138箇所のうち69箇所、農村教養文化体育施設については38箇所のうち30箇所、共同福祉施設については29箇所のうち26箇所、計125箇所(建設費総額110億4817万余円、うち出資額82億4693万余円)において、被保険者等の利用が全利用者の30%以下と低率であったり、被保険者等の利用者数が著しく少なく、農村教養文化体育施設については、農工法に基づく導入企業の従業員の利用が皆無となっているものがあったり、また、共同福祉施設については、会議室、研修室等施設の一部がほとんど利用されておらず、なかには全く利用されていないものもあるなどしていて、労働保険料を原資として被保険者等のために実施している本事業の意義が十分生かされているとは認められない事態が見受けられた。

 このような事態を生じているのは、貴省が策定している施設設置についての計画基本方針が、設置箇所を人口1万人以上の市町村としているにすぎず、施設内容もその概略を規定するにとどまっており、これら施設について、貴省では、体育活動等の実情及び当該施設の利用計画、同種施設の設置状況、農工法に基づく実施計画の策定状況、導入企業の実績等について十分な調査を行わないまま設置市町村を決定し、また、事業団においてもその策定している福祉施設設置方針が貴省の計画基本方針とほぼ同内容となっていることから、体育活動等の実情、利用計画、立地条件等について十分な調査確認を行わないまま施設内容及び設置場所等を決定設置したこと、また、設置後の管理運営に当たり、利用促進を図るための適切な対策を講ずるなどの配慮に欠けていたことなどによるものと認められる。

 ついては、貴省及び事業団では、上記3福祉施設を今後も引き続き多数設置することとしているのであるから、本件施設が事業主が負担した労働保険料を原資として被保険者等の福祉の増進を図るため設置するものであることにかんがみ、被保険者等の要望に即し、かつ、多数の利用が見込まれる施設の設置運営を行い、本事業の意義を十分生かすよう格段の配慮が必要である。
 よって、会計検査院法第36条の規定により改善の意見を表示する。