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  • 昭和57年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 12 建設省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

住宅の新築、宅地の取得等に必要な資金の貸付けを適正に実施し、国庫補助の目的を達成するよう是正改善の処置を要求したもの


(2) 住宅の新築、宅地の取得等に必要な資金の貸付けを適正に実施し、国庫補助の目的を達成するよう是正改善の処置を要求したもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)建設本省 (項)住宅建設等事業費
部局等の名称 栃木、埼玉、岐阜、島根、岡山、山口、熊本、大分各県
事業主体 市21、町14、村3計38貸付主体
補助事業 住宅新築資金等貸付事業
貸付件数 2,043件
資金貸付額 9,401,000,000円 ( 昭和53年度〜56年度 )
上記に対する国庫補助金交付額の合計 2,332,864,284円 ( )

 上記の住宅新築資金等貸付事業2,043件において、住宅の新築等が実施されず国庫補助の目的が達せられていない事態が318件あり、貸付金14億5630万円、これに対する国庫補助金相当額3億6205万余円が不適切に交付されていた。
 この貸付事業は、歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地域の環境の整備改善を図るため、地方公共団体が住宅の新築、改修、宅地の取得を行おうとする者に資金を貸し付けるものであるが、事業主体における貸付けの決定、貸付金の支払い、工事完了審査等が適切を欠いたため、貸付後1年から5年を経過しているにもかかわらず住宅の新築、宅地の取得が行われていなかった。
 したがって、建設省において、本件貸付事業を適正に実施させるため、関係の地方公共団体に対して速やかに、適切な指導を行う要がある。

 上記に関し、昭和58年11月30日、建設大臣に対して是正改善の処置を要求したが、その全文は以下のとおりである。

地方公共団体が実施している住宅新築資金等貸付事業に対する国庫補助金の経理について

 貴省では、昭和49年度から、「住宅新築資金等貸付制度要綱」(昭和49年建設省住整発第69号)に基づき、歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地域の環境の整備改善を図るため、当該地域に係る住宅の新築(新築住宅の購入を含む。以下同じ。)、改修、住宅の用に供する土地の取得について必要な資金の貸付け(貸付限度額は620万円、利率は年2%以内、償還期限は25年以内)の事業を行う地方公共団体に対して、毎年度、事業に必要な新規財源の4分の1の額を補助金として交付しており、その額は、53年度以降57年度末までの分だけでも、住宅新築資金分450億4216万余円、住宅改修資金分123億4221万余円、宅地取得資金分136億4665万余円、合計710億3104万余円の多額に上っている。

 しかして、栃木県ほか7県の38市町村では、53年度から56年度までの間に、新規財源合計199億3817万余円と期限前償還金等合計9476万余円とを合わせた200億3293万余円をもって住宅新築資金2,488件129億1610万円、住宅改修資金1,414件30億2306万余円、宅地取得資金1,270件40億9377万円の貸付けを行っているが、会計実地検査の際、このうち、住宅新築資金1,408件72億7350万円、宅地取得資金635件21億2750万円合計2,043件94億0100万円について調査したところ、住宅新築資金貸付において、借受申込書に住宅の建築場所、規模等が記入されていないばかりか、極めて簡単な内容の建設業者の見積書の提出を受けただけのものについて、建築実施の確認ができたとして貸付けを行ったなどのため、貸付後相当な期間(1年から5年)を経過しても住宅の新築が行われていないものが221件11億4590万円(国庫補助金相当額2億8462万余円)見受けられ、また、宅地取得資金貸付において、借受申込書に対象土地の面積、取得費等の記載がないばかりか、宅地取得の確認できる書類の提出もないものについて、取得の確認ができたとして貸付けを行ったなどのため、貸付後相当な期間を経過しても宅地の取得が行われていないものが97件3億1040万円(国庫補助金相当額7743万余円)合計318件14億5630万円(国庫補助金相当額3億6205万余円)見受けられ、国が補助した目的が達成されていないもので、適切とは認められない。

 このような事態を生じているのは、借受人の事情等にもよるが、前記の各市町村において、「住宅新築資金等貸付要領」(昭和49年建設省住整発第70号の2)により本制度の運営の指針が示されているのに、借受申込書やそれに添付させることになっている図面が不備なものについて貸付けの決定を行っていたり、貸付対象である住宅取得等の契約締結の事実確認が十分できないものについて貸付金の支払いをしていたり、その支払いも工事費等の資金需要に応じて行うという配慮を払うことなく一括して行っていたり、貸付金の支払後相当の期間が経過しているにもかかわらず工事完了届が提出されないものをそのまま放置していたり、完了審査を行う場合でも現地確認などの効果的な方法によっていなかったりしているなど貸付決定、貸付金の支払い、工事完了審査等が安易に行われていたことによると認められる。

 ついては、本件住宅新築資金等貸付事業は今後も引き続き実施されることが見込まれるのであるから、貴省において、上記の事態にかんがみ、速やかに、本件貸付事業を実施している地方公共団体に対して、(ア)住宅新築資金等貸付制度要綱等本件事業執行に関する準則を遵守すること、(イ)貸付けの決定に当たって借受申込者に対し本件制度の趣旨、内容等についての理解を一層徹底させること、(ウ)貸付金の支払いに当たって借受人の工事費等支払に係る資金需要の確認を徹底することなどについて、適切な指示、指導を行い、もって、本件貸付事業の適正な実施による補助目的の達成を期する要があると認められる。

 よって、会計検査院法第34条の規定により、上記の処置を要求する。