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  • 昭和57年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 12 建設省|
  • 特に掲記を要すると認めた事項

国が補助した土地区画整理事業の施行に伴って整備された宅地の利用の現状について


国が補助した土地区画整理事業の施行に伴って整備された宅地の利用の現状について

会計名及び科目 道路整備特別会計 (項)街路事業費 (項)北海道街路事業費
部局等の名称 建設省
土地区画整理事業の概要 都市計画区域内の土地について、公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を図るため、土地の区画形質の変更及び公共施設の新設又は変更を行う事業
補助の概要 土地区画整理事業を行う地方公共団体又は土地区画整理組合等に対してその費用の一部に充てるため補助する。
本院が調査した事業 北海道ほか23都府県管内の163事業、施行面積7,528ha
事業費 2908億6572万余円
補助対象事業費 1665億2355万余円
国庫補助金交付額 1087億6574万余円

 市町村又は土地区画整理組合等が建設省の補助を受けて施行している上記163土地区画整理事業のうち、事業の施行に伴って整備された宅地(土地区画整理事業においては、施行地区内の道路、公園等の公共施設の用に供されている国又は地方公共団体の所有する土地以外の土地を「宅地」という。)合計5,418haの利用状況を調査したところ、昭和58年3月末現在で、住宅、店舗用地等市街地における宅地の通常の用途に利用されていない宅地(以下「未利用宅地」という。)が1,662ha見受けられた。そして、これら163事業のうちには、未利用宅地が宅地面積の2分の1を超えているものが36事業あり、これら事業においては整備された宅地合計1,097haのうち未利用宅地が合計682haとなっていた。
 そして、上記の未利用宅地について土地所有者の意向を調査してみると、営農意思が強いもの、宅地を他に譲渡する意思がないものなどが大部分を占めている状況である。

(説明)

 建設省では、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、国土の均衡ある発展と公共の福祉に寄与することを目的として実施される都市計画事業の一環として、土地区画整理法(昭和29年法律第119号)の規定に基づき都市計画区域内の土地について土地区画整理事業を推進している。この土地区画整理事業は、施行地区について、道路、公園等公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を図るための土地の区画形質の変更及び公共施設の新設又は変更を行うもので、土地については、区画形質の変更に伴って施行地区内の土地所有者に原則として従前の所有面積より小さい面積(利用価値は増進している。)が従前地と照応して配置され(これを「換地」という。)、従前地面積と換地面積との開差分が事業の費用に充てるため売却される土地(これを「保留地」という。)と公共施設用地になるものであるが、国は、この土地区画整理事業を施行する地方公共団体又は土地区画整理組合等に対し、事業に要する費用の一部に充てるため、施行地区内の都市計画道路を用地買収方式によって整備することとして計算された額を限度として道路、公園等の工事費等について道路整備特別会計(揮発油税、石油ガス税等が財源とされている。)から補助しており、その額は、48年度から57年度までの間に補助したものについてみると、住宅・都市整備公団及び地域振興整備公団に対する分を除いても、補助対象事業費は1兆3068億4253万余円、これに対する国庫補助金交付額は8698億6134万円の多額に上っている。

 しかして、北海道ほか23都府県(注1) において、会計実地検査の際、48年度以降54年度までの間に土地区画整理事業が完了し、又は事業の完了には至っていないが道路建設工事等の工事がすべて完了している163事業(土地区画整理事業費合計2908億6572万余円、補助対象事業費は合計1665億2355万余円、国庫補助金交付額は合計1087億6574万余円)について、事業の施行に伴って整備された宅地の利用状況を調査したところ、次のような状態となっていた。

 すなわち、上記163事業の施行に伴って整備された宅地は合計5,418ha(うち保留地376ha)であるが、58年3月末現在で、〔1〕 農耕地となっているものが1,020ha〔2〕 空地となっているものが421haあるなど1,662haが未利用宅地となっており、上記保留地のうちにも、その処分後空地のままとなっているなど未利用宅地となっているものが71haある状況であった。

 とりわけ、上記163事業のうち、未利用宅地が宅地面積の2分の1を超えているものが岩手県ほか15府県内(注2) で36事業(土地区画整理事業費合計452億9724万余円、補助対象事業費は合計193億5410万円、国庫補助金交付額は合計121億9020万円)見受けられ、これらの事業の施行に伴って整備された宅地合計1,097ha(うち保留地96ha)についてみると、〔1〕 農耕地となっているものが493ha〔2〕 空地となっているものが132haあるなど682ha(宅地面積の62.2%)が未利用宅地となっている状況であり、上記保留地のうちにも未利用宅地が26ha見受けられた。また、これら36事業は工事完了後3年経過のものが7事業、4年経過のものが9事業、5年経過のものが3事業、6年経過のものが8事業、7年経過のものが6事業、10年経過のものが3事業となっているが、整備済み宅地面積に対する未利用宅地の比率がいずれも60%前後となっていて、年月の経過による未利用宅地の減少傾向は余り見られない状況である。そして、これらの未利用宅地について土地所有者の意向を調査したところ、(ア)営農意思が強いもの196ha、(イ)宅地を他に譲渡する意思がないもの157ha、(ウ)建物の建設時機を見計らっていて相当な期間を経過しているもの 97ha、(エ)土地の値上りを待っていて相当な期間を経過しているもの64haなどとなっていた。

 本件、土地区画整理事業について、建設省においては、土地の区画形質の変更及び公共施設の新設又は変更の完了によって事業の目的は達成しているとしており、また、本事業によって、道路、公園等の公共施設用地の取得が円滑に行われる利点があるうえ、既成密集市街地で施行される場合には密集市街地の整正改良、市街化未熟成地域について施行される場合には将来における無秩序な開発の抑止という効用も大であることは過去における多数の施行例によって認められているところである。しかして、事業施行に伴って整備された宅地の利用については、一般の土地と同様に宅地所有者等の意向に左右されているものであるが、建設省においても、近年に至って、55年には、宅地需給の逼迫緩和のため土地区画整理事業の活用を図り、事業施行地区内の宅地の有効な利用の推進に努めるため、保留地又は保留地予定地の処分に当たっては、土地購入者に対し建築計画の提示を求め或いは住宅を供給する公共的な機関に対して優先的に処分するなどの方策の推進を図り、57年には、土地区画整理事業施行地区内の土地所有者等に当面営農等の継続を希望する者が少なくないという現実に対応して、営農等の継続を希望する者の換地を地区内の一団地にまとめたり、大区画のものとしたりする(これらに係る換地の面積は地区面積のおおむね30%を超えないこととされている。)とともに、これらの営農希望土地に関しては公共施設等の工事を事業末期に行うこととする手法を採り入れた土地区画整理事業の施行を推進するなどの対策を講じている。

 しかしながら、土地区画整理事業そのものの目的は達せられたとしても、前段において記述したとおり、事業の施行に伴って整備された宅地のうちに未利用宅地が相当部分を占めており、しかも営農意思の強い者の所有する農耕地や宅地を放出する意思のない者の所有地が多い地区が少なからず存在している現況と、現下の宅地需給の状況とにかんがみ、事業施行後の宅地の利用についてなお種々の方策により一層の促進が図られることが望まれる。

(注1) 北海道ほか23都府県  北海道、東京都、京都・大阪両府、岩手、福島、栃木、埼玉、千葉、神奈川、新潟、石川、長野、岐阜、愛知、滋賀、兵庫、島根、愛媛、福岡、佐賀、熊本、大分、宮崎各県
(注2) 岩手県ほか15府県  京都府、岩手、福島、栃木、埼玉、千葉、神奈川、新潟、石川、長野、岐阜、愛知、兵庫、福岡、熊本、宮崎各県