ページトップ
  • 昭和57年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第2 日本国有鉄道|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

固定資産の貸付け等について、貸付けに関する基準の適用方を明確にするなどして収入の増加を図るよう是正改善の処置を要求したもの


固定資産の貸付け等について、貸付けに関する基準の適用方を明確にするなどして収入の増加を図るよう是正改善の処置を要求したもの

科目 (勘定)損益勘定 (項)雑収入
部局等の名称 仙台、千葉、東京北、東京南、東京西、名古屋、大阪、天王寺、広島、門司各鉄道管理局
固定資産の貸付け等の概要 土地を使用承認又は暫定利用の承認により使用料算定上の評価額を減額して貸し付けたりなどしている措置
固定資産の貸付け等の件数及び面積 463件、316千余m2
(昭和57年度分使用料11億0689万余円)

 上記の固定資産の貸付け等に当たり、使用料が低額となっていたり、ほとんど管理に手数を要しない簡易自動車駐車場を部外者に管理させて経費を要していたり、業務に関連があるため無償で貸し付けた施設が目的外に使用されていたりなどしていて、使用料が7億0208万余円低額となっていた。
 日本国有鉄道では、保有する土地、建物の一部を事業の目的を妨げない限度において部外に貸し付けるなどしているが、貸付けに関する基準の適用方が明確でなかったなどのため、使用料の増収を図ることができるものについて上記の事態を生じていた。
 したがって、今後固定資産の利活用による関連事業の推進が重要な施策となることから、早期に基準の適用方を明確にするなどして固定資産の効率的な利活用を図るよう改善の要がある。

 上記に関し、昭和58年11月28日、日本国有鉄道総裁に対して是正改善の処置を要求したが、その全文は以下のとおりである。

固定資産の貸付け等について

 貴公社では、昭和57年度末現在、土地6億6137万余m2 (資産価額5328億0661万余円)、建物2377万余m2 (資産価額1兆1075億9375万余円)等の固定資産を保有し、その大半を鉄道事業の用に供しているが、土地、建物等の一部については、事業の目的を妨げない限度において、部外に貸し付けたり、簡易自動車駐車場として利用したりなどして関連事業に活用(57年度関連事業収入735億3129万余円)しているほか、業務を部外に委託するなどの際に委託業務等の円滑な遂行に資するため無償で受託者等に使用させている。
 しかして、仙台鉄道管理局ほか9鉄道管理局(以下「10鉄道管理局」という。)について、これら固定資産の貸付け等の状況を検査したところ、使用料の算定が適切でないため低額となっていたり、直営で管理できる簡易自動車駐車場を部外者に管理させて経費を要していたり、業務に関連があるため無償で貸し付けた施設が目的外に使用されていたりなどしていて適切でないと認められる点が次のとおり見受けられた。

1 使用承認の使用料算定について

  貴公社では、事業の用に供している資産又は将来、事業の用に供する計画のある資産を、その用途又は目的を妨げない限度において第三者に使用承認という方式で貸し付けることとしている。そして、使用承認を行うに当たっては、貴公社が事業の用に供するなどの必要が生じた場合には、撤去、立退きを義務づけるとともに、建築階層の規制をしたり、貸付期間の限定をしたりするなど利用上の制限を課することとしている。
 そして、使用承認による場合は権利金等を徴収しておらず、その使用料も利用上の制限を考慮して算定することとしている。すなわち、使用料は、「土地建物等貸付基準規程」(昭和41年施達第12号)等に基づき、土地評価額に使用承認の特殊性による修正率として0.9(56年度以前に使用承認を開始したものは0.8)を乗じ、これに建築階層の規制による修正率(使用者の建築物を撤去、立退きさせる場合に容易と認められる2階建てまでに建築階層を規制することによる減額修正率)を乗じて使用料算定上の評価額とし、この評価額に基づいて資本利子額(評価額の7%)を算出し、この資本利子額に管理費(資本利子額の5%)、公租公課相当額等を加算して決定することとしている。

 しかして、前記10鉄道管理局が、57年度に使用承認により貸し付けている土地19,920件、1,881千余m2 、使用料4,115,833千余円のうち、使用料が年額1件100万円以上のもの654件、682千余m2 、使用料2,951,484千余円について調査したところ、建築階層の規制による修正率の適用方が規定上明確でなかったことなどから、特に1階層としての建築階層の規制をしていないものについてまで、使用者が実際に利用している建築物が1階層であることとして、1階層規制による修正率を適用していたり、
 例外的に3階層以上の建築物の設置を承認する場合は、建築物が構造上堅固なものとなり事実上撤去、立退きが困難となるので、建築階層の規制を行わない取扱いが相当と認められるのに、使用者の建築階層に応じた修正率を適用していたりなどしているため、使用料が低額となっているものが138件、119千余m2 、使用料586,639千余円見受けられた。

  いま、上記土地について建築階層の規制による修正率を適正に適用して使用料を再計算すると807,156千余円となり、これに比べて上記使用料は約2億2051万円低額となっていると認められる。

2 暫定利用制度の運用について

 貴公社では、貨物駅の集約、宿舎の統合等によって相当数の土地が未利用状態となっていることから、前記使用承認制度の特例として「未利用地の暫定利用について」(昭和52年施用第261号)を定め、将来、鉄道事業又は関連事業用として利用する計画等又は処分する計画等のある未利用地を、その計画等に基づいて利用又は処分するまでの間、商品の展示場等用として暫定的に使用させて、収入の確保に努めることとしている。
 そして、暫定利用を承認するに当たっては、その期間を6箇月以内の短期間としているため、その使用料は、土地評価額に暫定利用承認の特殊性による修正率として0.6から0.8を乗じ、これに建築階層の規制による修正として1階層制限の修正率を乗じて使用料算定上の評価額とし、この評価額に基づいて資本利子額(評価額の7%)を算出し、この資本利子額に管理費(資本利子額の2%)、公租公課相当額等を加算して決定することとしていて、前記使用承認による貸付けに比べて使用料が低額となっている。

 しかして、前記10鉄道管理局のうち広島鉄道管理局を除いた9局が、57年度中にテニス場、住宅展示場等用として暫定利用を承認している土地39件、84千余m2 、使用料369,737千余円のうち、使用料が年額1件100万円以上のもの29件、82千余m2 、使用料363,563千余円について調査したところ、暫定利用は、上記のように当該対象地の利用計画等が実施されるまでの間の短期間に限って承認することとなっているのに、この趣旨の周知徹底が図られていなかったことなどから、当該対象地の具体的な利用計画等がなく、しかも、当初から長期間にわたる使用が予想されるもの、例えば、テニス場のように建設費等に多額の投資を要し、短期間ではその回収が困難と認められるものなどについて暫定利用を承認しているため、前記使用承認による貸付けに比べて使用料が低額となっているものが25件、67千余m2 (うち、3年以上継続して承認しているもの14件、41千余m2 )、使用料240,544千余円見受けられた。

 いま、上記土地について、前記使用承認による貸付けを行ったとして使用料を再計算すると442,547千余円となり、これに比べて上記使用料は約2億0200万円低額となっていると認められる。

3 簡易自動車駐車場の管理について

 貴公社では、暫定利用制度の一形態として、駅構内等の利用価値が高いと見込まれる未利用地について、将来、事業の用に供したり処分したりするまでの間、駐車場として活用することとし、「未利用地を簡易自動車駐車場として利用する場合の取扱方について」(昭和55年施用第14号)を定め、直営又は部外者に管理させることによって暫定的に簡易自動車駐車場として利用することとしている。
 そして、直営で管理する場合は、駐車料金総額がすべて貴公社の収入となるが、部外者に管理させる場合においては、原則として、駐車料金総額から駐車場の管理運営に必要な人件費、管理費等の経費(以下「管理費等」という。)を控除した残額を使用料として収受している。

 しかして、前記10鉄道管理局が、57年度中に簡易自動車駐車場を部外者に管理させている土地239件、262千余m2 、使用料767,549千余円について調査したところ、部外者に管理させる場合の取扱方が明確でなかったことなどから、上記簡易自動車駐車場のなかには、駅舎に隣接しているうえ、月極駐車場で駐車料金は前金で直接納付することになっているなど、ほとんど管理に手数を要しない場合であっても、部外者に管理させているものが134件、111千余m2 、使用料279,709千余円見受けられた。

 いま、上記簡易自動車駐車場について、直営で管理することを考慮するなどすれば、部外者に管理させるための管理費等が不要となるので駐車場に係る収入は435,698千余円となり、上記使用料に比べて約1億5598万円の開差を生じることとなるものと認められる。

4 無償の使用承認等に係る貸付施設の利用について

 貴公社では、業務上必要と認められる場合には、特例として、「固定財産管理事務基準規程」(昭和41年経達第23号)等に基づき、無償の使用承認等により固定資産等を貸し付けたり、使用させたりすることができることとしている。
 しかして、前記10鉄道管理局が、57年度中に無償の使用承認等により貸し付けるなどしている土地及び建物12,017件、土地939千余m2 及び建物141千余m2 のうち、業務委託等に伴う作業員詰所、受託事務所等に係るもの1,774件、土地127千余m2 及び建物81千余m2 について調査したところ、貴公社の業務量の減少等に伴い、貸し付けた施設に余裕を生じたりしたことから、その施設の全部又は一部を受託会社等が自社営業のための支店又は宅配便取扱所等として目的外に使用していたり、貸し付けた施設以外の施設を受託会社等が駐車場として未承認のまま使用していたりしているのに、使用実態を把握すべき駅、保線区等の現場業務機関と貸付担当部局相互の連絡調整が緊密に行われていないなどのため、無償の使用承認等を継続したりなどしていて適切でないと認められるものが166件、土地17,440m2 及び建物489m2 見受けられた。

 いま、上記土地及び建物について、目的外に使用されている部分を有償とし、また、未承認のまま使用されている部分を承認のうえ有償として使用料等を徴収することとすれば、57年度において約1億2357万円の増収を図ることができたと認められる。

 これらのうち、前記各項別に主な事例を挙げると、別記のとおりである。

 このような事態を生じているのは、関連部局間の連絡調整が十分でなく用地等の管理に関する体制が整っていなかったり、使用承認等の制度を運用する際に必要な基準等が明確に定められていなかったり、各鉄道管理局において使用承認等に関する制度の趣旨が十分理解されていなかったり、これに対する本社の指導が適切に行われていなかったりしていたことなどによるものと認められる。
 ついては、貴公社では、56年5月に策定した経営改善計画において、固定資産の利活用による関連事業の推進を重要な増収施策としていることにかんがみ、

1 関連部局間の連絡調整を十分行い、用地等の管理体制を整備すること

2 使用承認を行う場合の使用料算定の基礎となる建築階層の規制に関する基準の適用方を明確にすること

3 暫定利用制度と一般の使用承認制度との区別を明確にすること

4 簡易自動車駐車場を部外者に管理させる場合の取扱方を定めること

5 無償の使用承認等により貸し付けるなどした施設の目的外使用や、用地の無断使用を防止するほか、一部有償化を要する場合にその取扱方を定めること

などの措置を講じるとともに、各鉄道管理局等に対する指導の徹底を図り、もって固定資産の効率的な利活用を図る要があると認められる。

 よって、会計検査院法第34条の規定により、上記の処置を要求する。

1 使用承認に当たり使用料の算定が適切でないもの

鉄道管理局名 所在地 面積 使用者 57年度使用料 同修正使用料 開差額
m2 千円 千円 千円
<事例1>
千葉 小岩駅構内 465 土地管理業者 6,039 8,682 2,643
 この用地を店舗・催事場用として使用承認するに当たって、特に1階層としての建築階層の規制をしていないものであるから通常の場合の修正率を適用すべきところ、上記会社が1階層の店舗等を建築することとしていたとして、1階層による減額修正率を適用したため、使用料が低額となっている。
<事例2>
東京北 池袋駅構内 382 ビル管理業者 16,743 23,112 6,369
 この用地を事務所・荷捌所用として使用承認するに当たって、上記会社が事実上撤去、立退きが困難となる堅固な3階層の鉄骨造りの事務所等を建築するものであるから、建築階層の規制を行わない取扱いが相当と認められるのに、3階層による減額修正率を適用したため、使用料が低額となっている。

2 暫定利用制度の運用が適切でないもの

鉄道管理局名 所在地 面積 使用者 57年度使用料 同修正使用料 開差額
m2 千円 千円 千円
<事例1>
仙台 宮城野駅構内 7,920 不動産業者 27,858 48,477 20,618
 この用地を53年12月に住宅展示場等用として暫定利用を承認しているが、当時、貴公社では同地の具体的な利用計画がなく、また、住宅展示場等を開設するためにはモデルハウスの建設等に多額の投資が必要であり、長時間にわたる使用となることが予想されるのであるから、一般の使用承認とすべきであるのに、暫定利用として承認したため、使用料が低額となっている。
<事例2>
天王寺 天王寺駅構内 5,315 不動産業者 25,557 45,994 20,436
 この用地をテニス場用として55年10月に暫定利用を承認しているが、当時、貴公社では同地の具体的な利用計画がなく、また、テニス場を開設するためにはクラブハウスの建設等に多額の投資が必要であり、長期間にわたる使用となることが予想されるのであるから、一般の使用承認とすべきであるのに、暫定利用として承認したため、使用料が低額となっている。

3 簡易自動車駐車場の管理方式が適切でないもの

鉄道管理局名 所在地 面積 管理者 57年度駐車料金総額 同管理費等 同使用料 同駐車場に係る修正収入 開差額
m2 千円 千円 千円 千円 千円
<事例1>
東京南 久里浜駅構内 995 駐車場管理業者 3,155 1,782 1,373 3,155 1,782
 この用地を簡易自動車駐車場(収容台数45台)として利用するに当たって、上記会社にその管理を行わせているが、同駐車場は駅舎に隣接し、すべて月極使用としていて管理に手数を要せず、直営による管理が可能と認められるのに、同社に管理させているため、駐車場に係る収入が低額となっている。
<事例2>
東京西 西国分寺・新小平駅間 484 土地管理業者 1,512 1,085 427 1,512 1,085
 この用地を簡易自動車駐車場(収容台数21台)として利用するに当たって、上記会社にその管理を行わせているが、同駐車場の収容台数は少なく、デパートと一括利用契約していて管理に手数を要せず、直営による管理が可能と認められるのに、同社に管理させているため、駐車場に係る収入が低額となっている。

4 無償の使用承認等に係る貸付施設の利用が適切でないもの

鉄道管理局名 所在地 面積 使用者(利用者) 57年度使用料(利用料)相当額
m2 千円
<事例1>
東京西 新宿駅構内 121 通運事業者 3,186
 この用地を貨物受託用施設等用として無償で貸し付けているが、上記会社はその一部を支店として目的外に使用しているのに、同地のすべてについて無償としている。
<事例2>
大阪 茨木駅構内 45 通運事業者 3,481
 この用地を作業員詰所用として無償で貸し付けているが、上記会社は同用地に隣接する貴公社の用地150m2 を営業用車両等の駐車場として未承認のまま無償で使用している。