科目 | (損益勘定) (項)雑収入 | |||
部局等の名称 | 釧路、旭川、札幌、青函船舶、盛岡、秋田、仙台、高崎、水戸、千葉、東京北、東京南、東京西、長野、静岡、名古屋、金沢、大阪、天王寺、米子各鉄道管理局及び四国総局 | |||
対象債権の概要 | 踏切において、列車に自動車が衝突するなどの事故によって生じた損害額をその原因者に弁償させるための損害賠償金債権 | |||
対象債権額 | 昭和57年度末現在保有債権 827件 | |||
総額1,677,679,571円 | うち収納済額 収納未済額 |
431,500,975円 1,246,178,596円 |
上記部局において、損害賠償金債権発生後相当期間を経過しているのにその管理が適切を欠いているため、収納未済額が1,246,178,596円に上っている。
このように収納未済額が多額となっているのは、上記債権の管理に当たって準拠すべき事務処理要領が整備されていなかったなどによるもので、速やかに要領等の整備を図って債権の管理を適正にし、その収納に努める要があると認められた。
上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。
(説明)
日本国有鉄道では、踏切において、列車に自動車が衝突するなどの事故によって生じた損害額をその原因者に弁償させるため、損害賠償金債権(以下「損害金債権」という。)を管理している。そして、踏切事故に関する事務は、「死傷及び損害事故処理基準規程」(昭和39年総法達第2号)に基づき、鉄道管理局長等が処理することとなっており、他方、踏切事故により発生した債権については、原因事項を所掌する鉄道管理局長等(以下「債権発生機関の長」という。)が、「収入支出事務基準規程」(昭和39年経達第15号)に基づき、当該債権発生後遅滞なく、債務者に対し、発生原因、債権金額、別に指定する納入期限までに納入すべき旨等を通知するとともに、会計長に徴収の要求(以下「徴収要求」という。)を行うこととなっていて、その徴収要求を受けた会計長は、当該債権を徴収整理帳等に記帳するとともに、債務者に対して支払の請求等を行うこととなっている。
しかして、本院において昭和58年中に上記部局における損害金債権の管理状況について検査したところ、次のとおり適切を欠いていると認められる点が見受けられた。
すなわち、これらの部局における損害金債権は57年度末現在832件、総額1,339,802,792円となっているが、その管理及び収納の業務についてみると、そのうち827件、1,246,178,596円については債権発生機関の長が会計長に徴収要求を行わないまま次のように処理していた。
(1) その管理に当たって、管理の台帳を全く備えていなかったり、簡易な管理台帳を備えているに過ぎなかったり、徴収に当たって、正規の支払請求書を用いずに、納付書で支払請求をしていたり、現金出納職員以外の者が現金を取り扱っていたり、不納欠損処理と認められる処理を行っていたりしている。
(2) 事故発生後債務者に請求するまでに長期間を経過しているものが多数見受けられ、なかには、損害額確定後において1年以上請求手続きを行っていないものが223件(収納未済額253,665,515円)あり、また、事故発生から債権を確定しその履行を請求するまで又は未請求のまま3年以上の期間を要しているものが141件(同152,735,283円)ある。
(3) 分割延納としている債権416件のうち、大部分は嘆願書等により安易にこれを認めており、なかには、担当者と債務者間の口頭約束によっていたり、債務者の任意にゆだねていたりしているため、分納額、納入年限等が不明確になっているものが88件(収納未済額163,764,257円)あり、また、分割延納とする際、債務名義を取得しているのは、僅か107件に過ぎない。
(4) 債務の履行が1年以上遅延している損害金債権は、57年度末現在、総債権件数の32%に当たる266件(収納未済額299,075,173円)に達しており、そのうち未納期間が3年以上10年未満のものは136件(同117,000,974円)、10年以上のものは53件(同22,090,524円)となっていて、なかには、時効中断の措置をとっていないため、既に時効期間を経過しているものが相当数ある。また、これらの債権に関する督促の状況についてみると、督促を全く行っていないものが98件(同106,307,850円)ある。
このような事態を生じたのは、債権発生機関の長が、会計長に徴収要求をするまでの間の債権管理の手続きが明確に定められていなかったり、当該債権を管理するための台帳の様式等が定められていなかったりするなど、具体的な事務処理要領が整備されていなかったこと、鉄道管理局等において、本件債権管理事務を適正に行うことについての認識が不足していたこと、本社において、これらの実態を把握しておらず、適宜、的確な指導監督をしていなかったことなどによるもので、速やかに要領等の整備を図って債権の管理を適正にし、その収納に努める要があると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、日本国有鉄道では、58年11月に「求償業務処理要領(案)」を定めるとともに、「求償業務の厳正化について」及び「踏切事故等に係る損害賠償金の徴収方等について」の通達を発するなど損害金債権の管理を適正に行うために必要な処置を講じた。