科目 | (損益勘定) (項)保守費 |
(工事勘定)(項)一般施設取替改良費 | |
部局等の名称 | 旭川、札幌、秋田、仙台、新潟、高崎、水戸、千葉、東京北、東京南、東京西、長野、静岡、名古屋、金沢、大阪、天王寺、福知山、広島、門司、大分、鹿児島各鉄道管理局及び四国総局 |
工事の概要 | 主要線区の輸送力増強対策等のため従来の規格のレールより重量化する重軌条更換工事及び摩耗、経年劣化したものを同規格のレールに更換するレール更換工事 |
レール価額 | 66億3760万余円 |
上記の部局では、重軌条更換工事等の施行に当たって、レールの材質の使用区分の適用が適切でなかったなどのため、工事費が約2億5460万円不経済となっていた。
このような不経済な事態を生じたのは、レールの材質の使用区分が定められている軌道構造標準が、更換の原因となる通過トン数等の実態と遊離したものになっていたことなどによるもので、同標準を適切なものに改める要があると認められた。
上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。
(説明)
日本国有鉄道では、主要線区の輸送力増強対策等として、従来の規格のレールより重量化する重軌条更換工事及び所定の通過重量トンを超過し又は経年により摩耗・劣化したレールを同規格のレールに更換するレール更換工事を直轄により毎年多数実施している。
これら工事に使用するレールの材質については、〔1〕 レール全体の耐摩耗性を図るため頭部に熱処理を施した頭部熱処理レール(以下「焼入れレール」という。)、〔2〕 継目部の耐摩耗性を図るためレールの両端頭部約10cm部分に熱処理を施した端頭部熱処理レール(以下「端焼きレール」という。)、〔3〕 熱処理を施していないレール(以下「普通レール」という。)の3種(価格は焼入れレールが最も高く、以下端焼きレール、普通レールの順)に分け、その使用区分については、本社制定の「軌道構造標準」(昭和46年施保第599号。以下「標準」という。)において線路等級の別に敷設箇所ごとの取扱いを、次のとおり定めている。
種別
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線路等級 |
頭部熱処理レール | 端頭部熱処理レール |
1級線 2級線 |
半径800m以下の外側レール | 全区間。ただし、長大レール、頭部熱処理レールの使用区間、短レール使用区間及び分岐器を除く。 |
3級線 | 半径500m以下の外側レール | |
4級線 | 半径300m以下の外側レール | |
その他 | 摩耗のはなはだしい曲線の外側レール |
これによれば、(ア)焼入れレールについては、直線区間等のレールに比べて摩耗度が高い1、2級線曲線半径800m、3級線同500m、4級線同300m以下の曲線区間(以下「急曲線区間」という。)の外側レールに、(イ)端焼きレールについては、レール継目部の摩耗を抑えるため急曲線区間の曲線半径より緩やかな曲線区間(以下「緩曲線区間」という。)の外側レールや曲線区間内側の定尺レール(長さ25m のもの)及び直線区間のレールに、(ウ)普通レールについては、短レールに当たる切断レール(曲線区間の場合、外側レールと内側レールの延長差を調整するため内側レールの端部を13cm切断したレール)や短尺レール(信号機の設置箇所の関係で電気回路を絶縁するなどのため切断したレール)などに、それぞれ使用することとしている。
そして、これらレールの更換期の基準については、別途、本社制定の「軌道整備基準規程」(昭和39年施達第11号)に基づき、レール種別(30kg、37kg、40kgN、50kg、50kgN、60kgレールの別)、線路等級別に定められた摩耗限度(例えば50kgNレールの場合、1、2級線では10mm、3、4級線では13mm)に到達したときはレールを更換するほか、累積通過トン数(線区を1年間に通過する全車両の総重量の累積)を超過したとき又は経年(例えば50kgNレールの場合、累積通過トン数が4億トンを超えたとき又は敷設年数が40年を経過したとき)によりレールを更換することとしている。
しかして、上記部局が昭和57年度中に実施した重軌条更換工事等775件工事において使用したレール(延長1,149,645m、出納価額計66億3760万余円)について、その施工状況を検査したところ、端焼きレールを使用することとされている直線区間、緩曲線区間の外側、曲線区間の内側の各レールについて焼入れレールを使用したり、普通レールを使用することとされている曲線区間の内側の切断レール等に焼入れレールや端焼きレールを使用したりするなどしていたものが656件工事、レール延長304,750m見受けられた。そして、これらの状況は、同一線区でありながら、施工を担当した鉄道管理局又は保線区によってレールの使用区分が異なっており、また、同一線区内の工事であっても施工箇所ごとにその取扱いが区々となっていた。
このように、上記部局におけるレールの使用区分が区々となっている事態については、前記の標準の内容が実態にそぐわないものとなっていることによると考えられたことから、標準の適否について検討したところ、
(1) 標準の内容が更換の基準に整合しないものとなっていること
すなわち、レールを更換する時期については前記のとおり摩耗、累積通過トン数又は経年によって更換期が到来したときとされているが、
(ア) 3、4級線は、累積通過トン数が著しく低い状態であっても経年によるレール更換期が到来するとレールを更換することとなるが、標準においては、このような場合であっても、端焼きレールを急曲線区間の外側を除く全区間について使用することとしている。しかも、本件のレール更換は50kgNレールに換えるものであって、従来の30kg、37kgレール等に比べると継目部が著しく強化されるものである。
したがって、端焼きレールを使用することとしている区間については、端焼きレールに代え、普通レールを使用することとしても支障はないものである。
(イ) 4級線は、年間通過トン数500万トン未満のものとされているが、この中には、年間の通過トン数が300万トン未満の線区が数多くある。これらについては、摩耗によるレールの更換期到来前に経年によるレール更換を行うこととなるが、標準においては、このような場合であっても、焼入れレールを急曲線区間の外側レールに使用することとしている。しかしながら、焼入れレールに代えて、普通レールを使用することとしても支障はないものである。
(2) 標準の内容が適切なものになっていないこと
1、2級線の急曲線区間の内側レールの場合、外側レールと内側レールの継目箇所を同一のマクラギ上に合わせるために、端焼きレールと切断した普通レールの組合せとしている。しかし、急曲線区間の内側レールでは、端焼きレールと切断した普通レールの混用が多くなることによって摩耗度が異なる継目部が多くなり軌道構造上好ましくなく、また、端焼きレールと普通レールを区別して保守することは実行上多くの困難があるとされていることなどから、この区間のレールについてはすべて普通レールで統一すべきであると認められる。
上記のように、普通レールの使用方を標準に明記するなどしたうえ経済的な施工を図る要があると認められた。
いま、仮に本件各工事に使用したレールについて、上記に基づく適正な材質の使用区分により施工したとすれば総額約2億5460万円が節減できたと認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、日本国有鉄道では、58年11月に軌道構造標準を改正するとともに、その適切な運用を期するため、軌道工事標準示方書、軌道工事監督要領等を整備して、レールの材質の使用区分を改正するなどして適切な施行を図る処置を講じた。