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  • 昭和57年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第2 日本国有鉄道|
  • 本院の指摘に基づき当局においで改善の処置を講じた事項

軌道整備工事におけるバラストかき込み工費の積算を施行の実態に適合ずるよう改善させたもの


(3) 軌道整備工事におけるバラストかき込み工費の積算を施行の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (損益勘定) (項)保守費
部局等の名称 東京南、東京北、新潟、高崎、盛岡各鉄道管理局
工事名 蒲田・川崎間(京電上下)15K 600M 付近道床整理その他工事ほか459工事
工事の概要 マルチプルタイタンパによるバラスト軌道保守作業の補助作業として、マクラギとマクラギとの間に道床バラストを補充し整形を行うなどの工事
工事費 14億1368万余円
請負人 株式会社旭工業社ほか10会社
契約 昭和57年4月〜58年3月
指名競争契約及び随意契約

 上記の各工事において、軌道整備工事におけるバラストのかき込み工費の積算(積算額3億0084万余円)が適切でなかったため、積算額が約1億5610万円過大となっていた。
 このように積算額が過大となっているのは、近年では軌道の整備状況が良好になり補充バラストの所要量が減少したなどのためかき込み作業量が減少しているのに、上記の部局では従来からの積算事例を漫然と踏襲するなどして、その作業量を算定のうえ工事費を積算していることによるもので、施行の実態に即した積算基準を定める要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

 日本国有鉄道では、軌道整備工事を毎年多数施行しているが、このうち、東京南鉄道管理局ほか4鉄道管理局管内の川崎保線区ほか18保線区(注) が昭和57年度に施行している道床整理等の工事460工事(工事費総額14億1368万余円)について検査したところ、次のとおり、工事費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記の 460工事は、東海道本線等の1、2級線の軌道整備のため、別途に直営で施行するマルチプルタイタンパ(軌道上を自走し道床バラストを連続的につき固めなどする作業車。以下「マルタイ」という。)によるバラスト軌道保守作業の補助作業として、バラストかき込み(マクラギとマクラギとの間にバラストを補充する作業)、道床整理(道床を所定の形に整えるため、バラストの整理等を行う作業)及びしめ固め(コンパクタにより道床肩、のり面を締め固める作業)等を請負により行わせるものであるが、このうち、バラストかき込み工費の積算については、日本国有鉄道で定めた積算要領(昭和54年積軌54第6号)において「現地の実情により20mm程度こう上する場合に、その必要延長のみを計上する。」としていることから、マルタイにより軌道を20mm程度こう上(レール等を所定の計画高さまで持ち上げることをいう。)する必要のある区間をマルタイ施工延長の51%から100%と見込んで、本件各工事におけるマルタイの施工総延長1,955km の うち、バラストかき込みの作業総延長を1,678kmとし、バラストかき込み工費を総額300,845,000円と算定していた。

 しかして、マルタイのつき固めに伴い投入される補充バラストは、各保線区における軌道整備計画に基づき、本件バラストかき込み作業に要する補充バラストのほか、道床肩等に補充する分を含めて算出し、その投入区間、投入時期等を決定したうえ、別途に直営によって現地に搬入されているものであるが、上記各工事に該当する軌道に投入された補充バラストの実績総量は1,955kmにつき65,139m3 となっていた。

 このことは、仮に上記投入量の全量を軌道20mmこう上した場合に必要となる補充バラスト量としたとしても、軌道延長100m当たりバラスト必要投入量は8m3 であるから、バラストかき込みの作業延長は最大814kmとなるので、前記の積算延長1,678kmは少なくとも864km過大に見込んだ計算となっている。

 いま、仮に本件各工事について、補充バラスト量を上記814kmにつき全量20mmこう上するためのものとしてバラストかき込み工費を算定したとすれば、同工費は少なくとも約1億5610万円低減できる計算となる。

 前記のように、実際に投入した補充バラスト量に対応しない積算延長となったのは、積算要領の内容が不明確になっていることによるもので、これは、積算要領を定めた54年以前はマルタイの導入初期で、マルタイによる施工箇所が少なく、しかも、軌道の整備状態が悪く、こう上の程度も線区、区間によって区々となっていたなどのため、こう上量や必要延長等について標準的な基準を設定することが困難であった実情等から積算要領の内容が具体性、実効性を欠くものとなり、積算担当者は従来の経験や積算事例により作業量をそのまま漫然と踏襲してきたことによると認められる。

 しかしながら、近年、マルタイによる施工区間が拡大し、併せて施工技術も向上したなどのため、軌道の整備状態は全般的に良好となり、マルタイの稼動1km当たりの補充バラストの投入量は年々逓減の傾向を示してきたほか、そのこう上作業も平準化されてきたものであるから、軌道状態に即した補充バラストの所要量について調査、検討を行えば統一的なバラストかき込み量の標準値の設定も可能と認められ、施行の実態に即した積算基準を定める要があるものと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、日本国有鉄道では、58年10月施行実態を調査した結果に基づき積算事務の簡素化も併わせ考慮して、補充バラスト及びマルタイつき固め施工延長から標準的な必要バラストのかき込み量を算出し、これに必要な人工を標準値として歩掛かりを設定し、積算要領を経済的かつ効率的なものに改正して、同月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

 (注)  川崎保線区ほか18保線区 川崎、横浜、大船、小田原、上野、大宮、小山、水上、酒田、柏崎、新津、熊谷、高崎、渋川、一ノ関、一戸、八戸、野辺地、青森各保線区