ページトップ
  • 昭和57年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第2 日本国有鉄道|
  • 特に掲記を要すると認めた事項

旅客営業の収支等について


旅客営業の収支等について

科目 (損益勘定) (項)運輸収入 (項)雑収入 (項)給与其他諸費
(項)営業費 (項)保守費 (項)管理共通費
(項)利子及債務取扱諸費
部局等の名称 日本国有鉄道
旅客営業の概要 鉄道荷物を担当する部門を除く旅客部門の営業
本院が調査した上記事業 本社ほか30鉄道管理局等
同事業の収入及び経費 収入 2兆5513億円 (新幹線9206億円、在来線1兆6307億円)
経費 3兆0010億円 (新幹線7175億円、在来線2兆2834億円)

 昭和57年度における日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)の旅客部門の営業成績は4497億円の損失(新幹線2030億円の利益、在来線6527億円の損失)となっているが、とりわけ在来線の損失は国鉄全体の損失1兆3778億円の47.4%に上っている。
 国鉄では、56年5月に経営改善計画を策定して、増収施策の推進、輸送の効率化などに努めているものの、営業を取り巻く環境は一段と厳しくなってきており、運賃改定を主体とした施策により大幅な収入の増加を期待することにはおのずから限界があるので、利用者の需要に適合した、より効果的な営業体制を整備して増収に努める一方、職員の業務効率の向上などにより経費の節減を図ることが緊要である。
 特に、本院において、旅客営業関係職員等に係る業務効率等について調査したところ、旅客取扱駅等において業務量に見合わない要員配置や効率低下などの事態が見受けられ、経費節減の効果に乏しい状況となっている。
 しかして、国鉄には社会的要因や組織上の問題など困難な事情はあるが、現在のままで推移すると、60年度に幹線の損益で収支均衡を図るという経営改善計画の当面の目標の達成すら困難になると認められる。

(説明)

 国鉄の旅客部門の昭和57年度末の営業規模は、営業キロ21,113km、旅客取扱駅5,190駅、1日当たりの旅客列車本数18,813本、同旅客列車キロ1,348千km等となっている。

 旅客部門の57年度の輸送量をみると、普通旅客は1126億60百万人キロ、また、定期旅客は781億07百万人キロ計1907億67百万人キロ(幹線系線区1817億48百万人キロ、地方交通線90億19百万人キロ)に上っているが、この輸送量は毎年漸減する傾向を示しておりピーク時(49及び50年度)に比べ大幅に減少している。このため国内の輸送機関別旅客輸送量の合計に占める割合は50年度に30.3%であったものが、57年度には23.7%と6.6%低下している。

 この旅客営業の成績について、57年度の収入とこれに直接対応する経費(以下「原価」という。)を対比すると、収入2兆5513億円に対し、原価は3兆0010億円で営業係数(収入を100とした場合の原価の割合)は118となり、差引き損失は4497億円であるが、その内訳をみると新幹線が収入9206億円、原価7175億円、営業係数78で差引き2030億円の利益を計上しているのに対し、在来線は収入1兆6307億円、原価2兆2834億円、営業係数140で差引き6527億円と同年度の国鉄全体の損失1兆3778億円の 47.4%に達する大幅な損失を計上しており、しかも、その収入と原価との乖(かい)離はピーク時に比べますます増大してきている。更に、57年度の在来線の収入、原価を幹線系線区と地方交通線とに区分すると、前者は収入1兆5302億円、原価1兆8386億円、営業係数120で差引き3084億円の損失、また、後者は収入1005億円、原価4449億円、営業係数442で差引き3443億円の損失となっており、地方交通線の損失がその収入に比べて際立って多額なものとなっている。

 国鉄では、56年5月に経営改善計画を策定し、この旅客営業については、60年度において旅客部門の収入(関連事業収入等を含む。)で保守部門等の共通費などを含めて経費の回収に努め、ひいては行財政上の措置等とあいまって、同年度に幹線の損益(東北・上越両新幹線の開業に伴う影響を除く。)において収支均衡を達成することを目標としている。

 しかして、本院において旅客営業の収支と上記計画の達成状況を調査したところ、次のような状況となっている。

(旅客営業の収支)

 前記のように収入と原価が乖離して多額の損失を生じているのは、次のような原因によると認められる。

1 収入について

 国鉄では、57年度に普通、定期旅客運賃及び特別急行等の料金について平均6.1%の改定を実施したほか、東北・上越両新幹線の開業に伴う新規旅客の誘致、企画商品の増売等の営業活動を行って収入の増加に努めているが、他方、在来線の旅客輸送量が前年度に対し3.9%減少したり、東海道・山陽新幹線の旅客輸送量も0.5%減少したりしたことなどから57年度の旅客輸送量は全体で0.7%減少して経営改善計画上の年度予定値1968億人キロを3.1%下回り、この結果、雑収入等を除く旅客収入は前年度に対し平均運賃・料金改定率にほぼ見合う6.2%増の2兆4562億円を確保し得たに過ぎない状況である。

 以上のように旅客輸送量が期待したほど増加せず、必要な収入を確保できないのは、高速道路の整備等による自家用乗用車の急速な普及、地方空港の整備に伴う航空機の大型化、ジェット化、民営鉄道及び地下鉄(以下「民営鉄道等」という。)の整備・増強など輸送環境が大きく変ぼうし、国鉄の輸送の根幹となる都市間輸送や大都市圏輸送が近・中距離では自家用乗用車、バス及び民営鉄道等に、長距離では航空機にそのシェアを奪われてきたことなどの事情はあるが、主として、国鉄の普通旅客運賃は実際に乗車する営業キロに、遠距離逓減(3地帯制)による1キロ当たりの賃率を乗じて設定する、いわゆる全国一律制の運賃となっているため、個々の線区の原価に見合った水準の運賃を決定することができず、収入に比べて原価の高い地方交通線等の線区の運賃は、中小民営鉄道等に比べ割安な運賃となっており、一方、当該線区で発生した損失は、収入に比べて原価の低い東海道・山陽新幹線や大都市圏の一部の線区の利益で補てんすることになるので、大都市圏の線区の運賃は大手民営鉄道等に比べ一般的に高い水準のものとなっていることから、国鉄では大手民営鉄道等と発着区間が同一で運賃に大幅な開差を生じている90区間について、特定割引運賃を設定し較差の是正に努めているものの、なお割高なものになっていること、主要中核都市圏輸送については、人口の外延化が進んでいるので、新規需要の開拓と輸送量の確保を図るためこれに応じた編成、運転間隔及び駅間隔等による輸送体制を整備することが望ましいが、広島圏の一部を除く各都市圏についてみると、最混雑時、昼間時間帯及び終日当たりの列車運転回数が民営鉄道等に比べて少なく、特に昼間時間帯はダイヤ上の着発時刻が不規則であるなど利用客の利便性に欠けており、これに加えて、駅間距離も民営鉄道等に比べて極めて長いなど圏内の旅客を広域的に集め輸送する体制が整備されていないことによるものである。なお、国鉄では、新規需要の開発等を目的としてフルムーン夫婦グリーンパス等458種類の企画商品を設定して積極的な営業活動を展開してはいるが、この企画商品については、通常の運賃・料金による収入と設定後の割引運賃・料金による収入に基づいて損益分岐点となる発売枚数及び収入額を算定し、この数値を上回る効果がない場合には当該企画商品の改廃を行うこととされているのに、かなりのものがその算定を行っていなかったり、設定後の実績による見直しを行っていないものが見受けられるほか、複雑多岐な商品構成となっているのに、宣伝、周知活動の不足からその種類、内容が利用者に十分周知されていない状況にある。

2 原価について

 57年度の旅客部門の原価は3兆0010億円であって、その内訳は人件費1兆2693億円(営業係数に占める値49.8)、修繕費5167億円(同20.3)、業務費2462億円(同9.6)等となっている。また、上記原価を新幹線、在来線の別に区分してみると、新幹線は人件費1071億円、修繕費1237億円、業務費825億円等計7175億円であり、また、在来線は人件費1兆1622億円、修繕費3930億円、業務費1636億円等計2兆2834億円であって、在来線の原価が原価全体の76.1%に達している状況である。
 しかして、上記原価は、駅係員等の経費、旅客列車の乗務経費、旅客車の入換え、保守等の経費など旅客営業に係る個別費と、線路等の保守費、輸送固定施設の資本関係経費、管理経費など他部門との共通的な経費で一定の配分基準(旅客列車キロ、人件費割合等)により旅客部門に割り掛けられた共通費からなっている。そして、原価3兆0010億円の中で、かなりの割合を占めているのが、駅で発生する経費4020億円、車掌区経費1324億円、乗務経費1995億円、車両保守費3479億円等の個別費1兆9903億円であるので、この個別費の発生箇所である職員配置駅、車掌区、電車区、機関区等について、人件費、業務費等の経費及び旅客営業に直接従事しているとされた職員と委託業務に係る委託会社の職員の合計人工などを把握し、これに基づき業務効率等を調査したところ、次のような状況となっている。

(1) 職員配置駅等について

 57年度末現在の職員が配置されている旅客取扱駅、運転取扱駅及び信号場は、合計2,646箇所で、これら職員配置駅等には、出札、改札等の旅客取扱業務を担当する職員や駅構内における列車の組成、信号機の取扱い等の業務を担当する職員などが配置されているほか、相当数の旅客取扱駅には、旅客車折返し清掃等の委託業務に係る委託会社の職員が配置されており、その1日当たりの平均所要員(注1) は89,157人であるが、実際にはこれを上回る91,518人の平均現在員(注2) を抱えていて、これに旅客業務に係る委託会社の1日当たりの平均所要人工を加えるとその合計は95,464人となっている。
 しかして、上記平均現在員の中で、旅客の取扱業務に直接従事しているとされた職員は61,649人、旅客業務に係る委託会社の所要人工は3,946人計65,595人(以下「駅充当人員等」という。)、同業務に係る人件費(退職手当及び共済組合交付金を除く。以下同じ。)及び業務費(以下これらを「駅旅客経費」という。)は総額2892億9194万円である。そこで、この駅充当人員等及び駅旅客経費などに基づき、57年度の業務効率を50年度と比較すると、次表のとおり、

年度 駅充当人員等 駅旅客経費
B
旅客
(乗車人員)
C
旅客列車取扱本数
D
1人当たりの年間所要経費
B/A
旅客1人当たりに要する経費
B/C
1人1日当たりの取扱旅客 
C/(A×365)
1人1日当たりの取扱列車
D/(A×365)
駅充当人員 委託会社の所要人工

A

50

62,391
(100)

3,496
(100)

65,887
(100)
百万円
209,636
(100)
百万人
6,691
(100)
千本
234
(100)
千本
3,181.8
(100)

31.3
(100)

278.2
(100)

3.6
(100)
57 61,649
(98.8)
3,946
(112.9)
65,595
(99.5)
289,292
(138.0)
6,380
(95.4)
231
(98.9)
4,410.2
(138.6)
45.3
(144.7)
266.5
(95.8)
3.5
(97.2)

( )は、50年度を100とした指数

旅客が減少しているのに、駅充当人員等が横ばいで推移しているなどのため1人1日当たりの取扱旅客及び取扱列車は減少している。更に、旅客取扱駅の窓口等で発売している乗車券類の57年度の1窓口1日当たりの平均発売枚数は643枚で、50年度の836枚に比べ減少しており、また、主として改札を担当する職員の57年度の1人1日当たりの取扱旅客は1,491人で、50年度の1,803人に比べその取扱実績は低下している。
 このため、札幌鉄道管理局ほか6鉄道管理局(注3) を選定し、これら鉄道管理局の旅客取扱駅719駅を業務量によって区分すると、乗車人員が1日平均1,200人未満の駅は299駅(41.6%)、1,200人以上の駅は420駅(58.4%)となっている。そして、これらの駅の駅充当人員等と乗車人員の関係についてみると、駅施設の規模、入換作業 等の有無などの差異があるものの、例えば乗車人員が301人から500人までの小規模駅の駅充当人員等は1.0人から33.1人まで、また、10,001人から30,000人までの駅の駅充当人員等は12.8人から310.6人までと区々となっていて、旅客取扱収入と駅旅客経費とを比較すると、前者の66駅(22.1%)、また、後者の13駅(3.1%)が駅旅客経費を償うだけの旅客取扱収入すら確保できない状況である。

(2) 列車乗務員基地について

 57年度末現在の車掌区、車掌所等の現業機関(以下これらを「列車乗務員基地」という。)は合計145箇所で、これら基地には旅客の案内、車内用乗車券類の販売等を担当する車掌などの職員が配置されており、その平均所要員は24,609人であるが、実際にはこれを上回る25,953人の平均現在員を抱えている。
 しかして、上記平均現在員の中で、旅客の取扱業務に直接従事しているとされた職員(以下「車掌充当人員」という。)は19,471人、同業務に係る人件費及び業務費(以下これらを「車掌旅客経費」という。)は総額874億9077万円である。そこで、この車掌充当人員及び車掌旅客経費などに基づき、57年度の業務効率を50年度と比較すると、次表のとおり、

年度 車掌充当人員
A
車掌旅客経費
B
乗務キロ
C
1人当たり年 間所要経費
B/A
1乗務キロ当た りの経費
(B/C)×1000
1人1日当たり の乗務キロ
C/(A×365)
50
19,368
(100)
百万円
62,588
(100)
千km
1,066,561
(100)
千円
3,231.4
(100)

58.7
(100)
km
150.9
(100)
57 19,471
(100.5)
87,491
(139.8)
893,859
(83.8)
4,493.4
(139.1)
97.9
(166.8)
125.7
(83.3)

( )は、50年度を100とした指数

乗務キロが減少しているのに、車掌充当人員が横ばいで推移しているなどのため1人1日当たりの乗務キロは減少している。
 また、列車乗務員基地の職員のうち、主要業務を担当する車掌(平均現在員19,283人)の57年度の勤務時間等の実績についてみると、1人1日当たりの平均勤務時間は5時間31分(実乗務時間3時間25分)で、勤務時間の標準1日平均6時間40分(注4) を下回っていて、50年度の上記数値6時間16分(同4時間10分)に比べ、効率が低下している状況である。

(3) 動力車乗務員基地について

 57年度末現在の機関区、電車区等のうち機関士、運転士等(以下「動力車乗務員」という。)が配置されている現業機関(以下これらを「動力車乗務員基地」という。)は合計242箇所で、その動力車乗務員などの職員の平均所要員は45,527人であるが、実際にはこれを上回る48,251人の平均現在員を抱えている。
 しかして、上記平均現在員の中で、旅客列車の運転業務に直接従事しているとされた職員(以下「運転充当人員」という。)は37,645人、同業務に係る人件費及び業務費(以下これらを「運転旅客経費」という。)は総額1817億0130万円である。そこで、この運転充当人員及び運転旅客経費などに基づき、57年度の業務効率を50年度と比較すると、次表のとおり、

 

年度 運転充当人員
A
運転旅客経費
B
乗務キロ
C
1人当たり年所要経費
B/A
1乗務キロ当たりの経費
(B/C)×1000
1人1日当たりの乗務キロ
C/(A×365)
50
36,484
(100)
百万円
124,551
(100)
千km
657,408
(100)
千円
3,413.8
(100)

189.5
(100)
km
49.4
(100)
57 37,645
(103.2)
181,701
(145.9)
600,306
(91.3)
4,826.7
(141.4)
302.7
(159.7)
43.7
(88.5)

( )は、50年度を100とした指数

乗務キロが減少しているのに、運転充当人員が増加したなどのため1人1日当たりの乗務キロは減少している。
 また、動力車乗務員基地の職員のうち、指導機関士等を除く動力車乗務員(平均現在員37,531人)の57年度の作業時間等の実績についてみると、1人1日当たりの平均作業時間は4時間51分(実乗務時間2時間23分)で、作業時間の標準1日平均6時間40分(注5) を大幅に下回っていて、50年度の上記数値5時間16分(同2時間44分)に比べ、効率が低下している状況である。なお、東京北、東京南、東京西各鉄道管理局所属の電車区における運用表(注6) に基づく平均作業時間が6時間24分、平均実乗務時間が2時間42分であるのに対し、一部の大手民営鉄道等の電車運転士のこれに対応する平均作業時間は6時間29分、平均実乗務時間は4時間11分となっていて、国鉄の実乗務時間は大手民営鉄道等に比べ極めて短いものとなっている。

(4) 車両検修基地について

 57年度末現在の機関車、電車等の定期検査及び臨時検査(以下「検修」という。)を行っている機関区、電車区等の現業機関(以下これらを「検修基地」という。)は合計328箇所で、これら検修基地には、車両の検査、修繕を直接担当する職員や基地構内において車両の入換え、委託業務の指導等の業務を担当する職員などが配置されているほか、旅客車上回り検査等(注7) の委託業務に係る委託会社の職員が配置されている。そして、これら検修基地における平均所要員は44,651人となっているが、実際にはこれを上回る46,684人の平均現在員を抱えていて、これに上記委託業務に係る委託会社の平均所要人工を加えるとその合計は63,185人となっている。
 しかして、上記平均現在員の中で、旅客用車両の検修業務に直接従事しているとされた職員は27,541人、委託業務に係る所要人工は10,026人計37,567人(以下「検修充当人員等」という。)、同業務に係る人件費及び業務費(以下これらを「検修旅客経費」という。)は総額1445億4666万円である。そこで、この検修充当人員等及び検修旅客経費などに基づき、57年度の業務効率を50年度と比較すると、次表のとおり、

 

年度

検修充当人員等

検修旅客経費
B
年間検修車両数
C
1人当たりの年間所要経費
B/A
検修1両 当たりに要する経費
B/C
1人 当たりの年間検修車両数 
C/(A×365)
検修充当人員 委託会社の所要人工

A

50

27,664
(100)

8,624
(100)

36,288
(100)
百万円
102,393
(100)
千両
5,815
(100)
千円
2,821.7
(100)
千円
17.6
(100)

160.3
(100)
57 27,541
(96.6)
10,026
(116.2)
37,567
(103.5)
144,547
(141.2)
5,687
(97.8)
3,847.7
(136.4)
25.4
(144.3)
151.4
(94.4)

( )は、50年度を100とした指数

検修車両数が減少したこと、検修業務の外注化の拡大に伴い委託会社の所要人工が増加したが、それに見合う検修充当人員の減少がなかったことなどから1人当たりの検修車両数は減少している。

 このような事態となっているのは、主として、次の理由によると認められる。

(1) 職員配置駅については、〔1〕 乗車人員が1日平均1,200人未満の駅は、停留所化又は業務委託化の対象となっているが、その縮小が円滑に行われていないほか、主たる業務である乗客の取扱いなどに差異がないのに、日勤勤務、1昼夜交代勤務等の組合せによる勤務体制を執り多数の要員を配置しているものがあること、〔2〕 乗車人員が1日平均1,200人以上の駅では、出札窓口が利用実態に応じた窓口数になっていなかったり、永年の慣習等により、駅職員のうちかなりの者が出札、改札、操車、連結等細分化された業務だけを専門に処理していたり、首都圏の一部駅を除いては、改集札に当たってラッチ(注8) の片側のみを開放して改集札を行っていたり、駅と検修基地間の車両の誘導作業を双方の分岐点までそれぞれの職員が行っていたりなどしているため、多数の要員配置を余儀なくされているものがあること、〔3〕 乗車人員が多い首都圏等の国電区間でも行っていない駅ホームでの折返し簡易清掃を、短距離の通勤・通学列車について委託により行わせているなどしているものがあること

(2) 列車乗務員及び動力車乗務員については、〔1〕 標準作業時間1日平均6時間40分が実質的な上限となっているため、乗務員の効率的な運用が妨げられているほか、乗務員の作業時間のうちの準備時間は、車掌の場合、乗務前後を通算して50分から90分、運転士の場合乗務前60分、乗務後50分などの時間が設けられていたり、また、乗務の中間地で乗務のため列車を待ち合わせるための時間は、動力車乗務員の場合往路の実乗務時間の3分の1に等しい時間(1時間を限度とする。)などが設けられているため、作業時間の中に占める準備時間及び待ち合わせ時間の割合が高くなっていたりなどして実乗務時間の低下を招いていること、〔2〕 合理化を目的に特別急行列車等について車掌の基本乗組数を見直した際、業務が集中する区間に限定して特別改札要員を乗務させることにしたのに運賃ほ脱の防止等を理由に季節等に関係なく必要以上の要員を乗務させているなどしていて列車乗務員の運用が効率的でないこと、〔3〕 動力車乗務員の1人乗務の場合における1継続乗務キロの制限が在来線の特別急行列車については100キロ未満又は155キロ未満となっているなどのためこの制限距離内での乗務員運用を余儀なくされていたり、4週に2日の割合で発生する非番日の前後の勤務について勤務の終了時刻と次の勤務の開始時刻との間に36時間の休息時間を設けたり、公休日の前日の勤務の終了時刻が17時から18時までとなった場合次の勤務の開始時刻を11時以降にしたりするなど乗務員運用に制約があること

(3) 検修基地については、〔1〕 57年度中に、旅客車の上回り検査作業及び臨時検査等の委託を主体とした所要員約4,200人の削減を行い、58年4月1日現在の所要員は38,591人となったのに対し42,528人の現在員を抱えながら所要員削減と同時に業務委託を行っているため委託経費が増大していること、〔2〕 委託による旅客車の上回り検査作業等の受取り検収は職員が定期検査等を行う際に併せて行うことが可能であるのに、そのための職員を多数配置していること、〔3〕 業務委託の中には、動力車乗務員に勤務変更等がある場合、待機中の予備乗務員宅に赴いて連絡等を行う使い番業務や、車両とう載用品の点検、補充等を行う道具番業務があるが、これらは検修職員等が処理することが可能であるのに、安易に委託に付しているため経費が増大していること

(4) 列車乗務員基地、動力車乗務員基地及び検修基地については、数次にわたるダイヤ改正により列車キロの削減等が行われたため、現行の配置では、乗務員の効率的な運用を行ったり、車両検修の一層の効率化を図ったりすることは困難な情勢となってきていることから基地の統廃合を行う必要があるが、配置転換等を伴うのでその実施が容易でないこと

(経営改善計画の達成状況)

 国鉄では、前記経営改善計画に基づき部門別経営改善計画を定め、旅客部門については、〔1〕 運賃・料金の適正化、旅行需要の開発等による収入の確保〔2〕 効率的な輸送体系の形成〔3〕 小規模駅の停留所化、業務委託化の徹底、職員配置駅の省力化、列車乗務員の能率向上などにより旅客営業関係職員1人当たり輸送人キロを60年度までに25%程度向上させ、また、運転部門については、〔1〕 運用の効率化等により動力車乗務員1人当たりの人トンキロを同様20%程度向上させる〔2〕 臨時検査等を主体とした部外能力の活用、検修基地の統廃合等によりその他運転関係職員1人当たりの換算車両キロ(注9) を同様20%程度向上させるなどの施策を徹底し、営業基盤の維持強化を図ることを目標にしている。そして、この目標達成のため運賃・料金の改定、各種営業施策の展開などによる増収、高速列車網の整備、大都市圏輸送の改善、中小旅客取扱駅の停留所化及び業務委託化、出改札、駅運転取扱い等の業務体制の見直し、列車乗務員の基本乗組数等の見直し、動力車乗務員の1人乗務化率の向上、乗務行路等の見直し、波動業務等の外注化を主体とした検修の近代化などの施策を推進し、55年度は11,000人、56年度は12,000人、また、57年度には年度計画14,300人を上回る24,900人の所要員の縮減を行っている。
 しかしながら、上記経営改善計画の57年度までの達成状況をみると、

(1) 増収施策の推進、効率的な輸送体系の形成にもかかわらず、55年度から57年度までの3箇年の旅客輸送量は1931億人キロ、1921億人キロ、1908億人キロと減少傾向を示しており、60年度までに2032億人キロにすることを目標としている経営改善計画の上記各年度における予定旅客輸送量1937億人キロ、1938億人キロ、1968億人キロをいずれも下回っている。

(2) 業務体制の効率化施策の推進により、所要員が縮小されたため、職員が大量に退職しても欠員が発生せず、58年度の新規採用の原則停止が実現できたなどの効果はあったものの、旅客営業関係職員、動力車乗務員、その他運転関係職員だけについてみても多くの現在員を抱えている結果、上記職員1人当たりの輸送量、作業量は次表のとおり、

年度
項目
55 56 57
旅客営業関係職員1人当たり輸送人キロ〔万人キロ〕 229.7
(100)
233.1
(101.5)
235.2
(102.4)
動力車乗務員1人当たり輸送人トンキロ〔千人トンキロ〕 4,930
(100)
4,986
(101.1)
4,948
(100.4)
その他運転関係職員1人1日当たり換算車両キロ〔キロ〕 1,681
(100)
1,710
(101.7)
1,749
(104.0)

( )は、55年度を100とした指数

微増の状態で推移しており、目標達成のためにはかなりの努力が必要な状況となっている。

(3) 営業収入に占める一般人件費率の55年度から57年度までの3箇年間の実績は70%、68%、66%と向上しているが、60年度までに51%にすることを目標としている経営改善計画の上記各年度における指標74%、68%、64%に比べてその達成率は逐次悪化し、57年度はむしろ下回ったものとなっている。

 以上のように、他輸送機関との競争の中で、今後、従来実施してきたような運賃改定を主体とした施策により大幅な収入の増加を期待することにはおのずから限界があり、また、国鉄が講ずる増収策にも種々の問題がある。一方、国鉄が講じている要員縮減のための施策は、将来その経営に効果をもたらすものではあるが、その実施過程においては所要員に対して現在員が大幅に上回るため、業務効率の低下をもたらすばかりでなく、当分の間は人件費等の固定経費の削減効果に乏しく、しかも、所要員削減と同時にその相当部分が業務委託化されるため委託経費が増加するなどの事態を招いている。

 しかして、国鉄は全国的な規模で営業を行っているため組織が大きく、しかも、系統別の管理体制となっていることなどから、経営方針が職員に十分理解されず.必ずしも協力が得られなかったり、横断的かつ弾力的な業務の運営が阻害されていたり、輸送体系の変化、旅客のニーズ等に適時的確に対応し得なかったりしていること、増収等に寄与する設備投資を行おうとしても現下の国鉄の経営事情からこれを抑制せざるを得ないこと、地元等の関係者が職員配置駅、検修基地等の存続を強く希望するなどのため、その縮小が円滑に行われないことなど困難な事情を抱えてはいるが、前記のような諸問題に対する抜本的な対策を講じないまま推移すると、幹線及び地方交通線の収支を改善するための諸施策の推進により旅客部門の収入で保守部門等の共通費などを含めて経費の回収に努め、ひいては60年度に幹線の損益で収支均衡を図るという経営改善計画の当面の目標の達成すら困難になると認められる。

(注1) 平均所要員  職員配置駅等の57年4月から58年3月までの各月(職員配置駅及び信号場については、57年4月、8月、10月及び58年3月)の1日現在における業務遂行上必要な基本要員、波動要員、長期病欠者及び鉄道学園入学者の平均値
(注2) 平均現在員 職員配置駅等における現在員(賃金支弁職員を含む。)について平均所要員と同一手法により算出したもの
(注3) 札幌鉄道管理局ほか6鉄道管理局 札幌、仙台、東京南、名古屋、大阪、広島及び門司の各鉄道管理局
(注4) 勤務時間の標準1日平均6時間40分 「列車乗務員の労働時間等の取扱いに関する協定」に基づく1日平均の標準労働時間で、行路表で定められた総勤務時間を行路表上の所要員で除したもの。なお、50年12月11日までの標準労働時間は7時間である。
(注5) 作業時間の標準1日平均6時間40分 「動力車乗務員の労働時同等短縮に関する協定」に基づく1日平均の標準労働時間で、運用表で定められた総作業時間を運用表上の所要員で除したもの。なお、50年9月30日までの標準労働時間は7時間である。
(注6) 運用表 動力車乗務員の始業時刻から終業時刻までの乗務行路の順序、作業時間等を表わしたもの
(注7) 旅客車上回り検査 旅客用車両の車体内部の照明、冷暖房、給水設備等について行う検査
(注8) ラッチ 駅職員が乗車券類の改集札を行うために設けられたさく
(注9) 換算車両キロ 10トンを1両とみなした車両数にその走行キロを乗じたもの