ページトップ
  • 昭和57年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第3 日本電信電話公社|
  • 不当事項|
  • 工事

事務庁舎新築工事の鉄骨工事の設計に当たり、鋼板の選定が適切でなかったため、設計額が過大となり、契約額が高価となったもの


(160) 事務庁舎新築工事の鉄骨工事の設計に当たり、鋼板の選定が適切でなかったため、設計額が過大となり、契約額が高価となったもの

科目 (建設勘定) (項)局舎建設費
部局等の名称 中国電気通信局
工事名 袋町電電ビル新築第2期工事
工事の概要 広島都市管理部等の事務庁舎(地上6階、地下1階、鉄骨鉄筋コンクリート造り、建築延面積14,261m2 )を建設する工事
契約額 1,930,000,000円
請負人 袋町電電ビル新築第2期工事共同企業体
契約 昭和58年3月 指名競争契約
支払 昭和58年4月 (前払金 772,000,000円)

 この工事は、事務庁舎の鉄骨工事の設計に当たり、鋼板の選定が適切でなかったため、設計額が過大となり、契約額が約2330万円高価となったと認められる。

(説明)

 この工事のうち、鉄骨工事の設計に当たり、鋼板の材種については、溶接の少ない箇所には、引張り強さ(注1) 41kgf/mm2 の一般構造用圧延鋼材(注2) (以下「SS41」という。)を、溶接の多い箇所には、溶接構造用圧延鋼材(注3) (以下「SM41」という。)を使用することとし、その直接工事費は、使用する鋼板総重量704.4t に1t当たり単価88,800円から91,000円を乗じ、鋼板材料費を70,116,365円と算定し、これにH型鋼等の材料費、工場加工組立費、現場建方費、運搬費等を加えて総額255,627,000円と積算している。

 しかして、上記2種の鋼板を選定したのは、施工管理上、材種の混用を避け、極力同種のものを用いることとしたことによるものである。

 しかしながら、本件工事の設計基準となる本社が制定した「施設局舎構造設計指針」(以下「設計指針」という。)によれば、鉄骨鉄筋コンクリート造りの鉄骨工事の設計に当たっては、SS41、SM41又は引張り強さ50kgf/mm2 の溶接構造用圧延鋼材(以下「SM50」という。)を標準的な材料とし、経済性、施工性等を考慮して選定することとしている。そして、このうちSM50 はSS41及びSM41 に比べ1t当たり単価はやや高価ではあるが、引張り強さが大きいので大きな応力の発生する箇所に使用すると厚さの薄い鋼板で足りるから鋼板所要量が少なくてすみ、鋼板の使用割合によっては鋼板材料費及び工場加工組立費を低減できることとなり、しかも施工管理上、これらの材種を混用しても使用区分を明確にしてその取扱いを配慮すれば、特段の支障が認められないものである。

 したがって、本件工事の設計においては、大きな応力の発生する柱及び梁のフランジ部の鋼板所要量427.3t 鋼板材料費42,547,073円、工場加工組立費相当額71,439,000円については、SS41及びSM41 に替えてSM50を使用することとすれば、鋼板所要量は332.2t、鋼板材料費は37,020,368円、工場加工組立費相当額は59,468,000円で足りることとなり、設計額の低減を図ることができたと認められるので、設計指針に基づき経済的な設計とすべきであったと認められる。

 現に、公社が昭和57年度中に施行している局舎について調査したところ、設計指針に基づき、本件と同規模の事務庁舎にあっては、柱及び梁のフランジ部の鋼板にSM50を用いた設計を行っている状況である。

 いま、仮に柱及び梁のフランジ部の鋼板をSS41及びSM41に替えてSM50を用いることとして設計したとすれば、鉄骨工事の直接工事費は235,818,000円で足り、これに諸経費等を考慮して再計算すると、修正計算額は1,906,676,000円となるので、結局本件契約額1,930,000,000円はこれに比べ約2330万円高価となったと認められる。

(注1) 引張り強さ 鋼材が耐える最大荷重(kg)を鋼材の断面積(mm2 )で除した値
(注2) 一般構造用圧延鋼材 JIS−G−3101に規定されており、建築物、橋、船舶、車両その他の構造物に用いる一般構造用の鋼材
(注3) 溶接構造用圧延鋼材 JIS−G−3106に規定されており、建築物、橋、船舶、石油貯槽その他の構造物に用いる溶接性の優れた鋼材

 (参考図)

(参考図)