会計名及び科目 | (損益勘定) | (項)電信収入 (項)雑収入 (項)給与其他諸費 (項)営業費 (項)保守費 (項)管理共通費 (項)利子及債務取扱諸費 (項)資本勘定へ繰入 |
部局等の名称 | 日本電信電話公社 | |
電報事業の概要 | 電報の受付、送信及び配達に関する事業 | |
電報事業の収入及び支出 | 収入 366億2399万余円 (昭和57年度) 支出 1566億1216万余円 ( 〃 ) |
日本電信電話公社における電報事業の収支は毎年多額の損失を計上しており、昭和57年度では1199億8817万余円の損失を生じている。
この要因は、同公社の直営業務については、人手を要する作業が多いこと、夜間における取扱通数が少ないのに24時間即応体制をとっていること、郵政委託業務については、取扱量に比べ多額の委託費を支払っていることなどによると認められる。
したがって、現状のままで推移すれば、今後の電報事業の収支が改善されず、損失は累増の一途をたどることとなる。
上記に関し、昭和58年11月30日、日本電信電話公社総裁に対して意見を表示したが、その全文は以下のとおりである。
電報事業の運営について
貴公社では、国民一般の通信手段として電報事業の運営を行ってきたが、近年電話の普及、データ通信等近代的通信手段の急速な発展に伴い、電報の通数は、昭和38年度に9460万余通を記録したのち年々減少し、また、事業支出に占める人件費の割合が高く、収支の状況も悪化をたどっていたため、昭和51年度決算検査報告に特に掲記を要すると認めた事項として掲記したところである。
しかしながら、その後も毎年多額の損失を生じ、57年度においては、事業収入366億2399万余円、事業支出1566億1216万余円で差引き1199億8817万余円の損失を生じ、事業収支率(事業支出/事業収入×100)は427.6%となっている。この結果、電報事業の57年度までの損失額の合計は約1兆7110億円となっている。
そして、電報通数は53年度以降年々微増しているものの、57年度でも4330万余通と依然として38年度の半数以下で推移している。また、危篤通知などのいわゆる緊急用電報の占める割合は、51年度41万余通(1.0%)であったものが57年度では8万余通(0.2%)に減少した反面、儀礼的な慶弔電報が51年度では2749万余通(65.6%)であったものが57年度では3269万余通(75.4%)となるなど利用内容は大きく変化している。
しかして、電報事業の運営の実態を調査したところ、次のような事態が見受けられた。
1 直営業務について
貴公社の57年度の事業支出のうち主なものは、運用費583億4772万余円、業務委託費530億2826万余円(うち郵政委託費456億0481万余円)、管理費222億8754万余円、共通費157億8798万余円で、このうち人件費の占める割合は54.5%で貴公社の全事業支出に占める人件費の割合36.1%に比べ著しく高くなっている。
このように人件費の割合が高いのは、電報業務は電話による受付等を行う取扱局(以下「115」取扱局という。)で受け付け、配達局に送信し、配達しているが、この作業の過程はタイプによる電文の作成、あて先符合等の検査、さん孔機によるテープの作成、電文の切取貼付、配達人への交付、配達など多くの人力による作業に頼っていることによるものである。
貴公社では、第3次再編成計画(54年度から57年度まで)を策定し、「115」取扱局については、終日取扱局は電報発信通数が1日平均おおむね250通以上、昼間取扱局は50通以上、配達局については、配達通数が1日平均おおむね30通以上とするなどの選定標準を定め、各取扱通数未満の局の廃止統合、配達局の民間委託局への移行等を図り、57年度末で「115」取扱局は終日取扱局102局、昼間取扱局134局計236局、配達局は終日局61局、夜間委託局353局計414局、民間委託局1,184局となり、電報要員は14,877人となっている。
しかしながら、電報受付業務についてみると、57年度における電報受付通数は全体で4330万余通で、「115」取扱局1局当たり1日平均では502.7通、職員1人当たり1日平均では12.2通にすぎず、57年5月の時間帯別受付状況をみると、夜間(午後9時から翌日午前8時まで)の利用は、5.2%と少ないものとなっている。
なお、電報の受付専用窓口を終日開設している局は、57年度末で東京中央電報局ほか11局あるが、これらのうち同電報局ほか9局の58年4月及び5月から6月までの時間帯別電報窓口受付状況をみると、夜間の受付けは全体の6.4%と少ないものとなっている。
そして、57年度末においても受付通数が上記計画における局の廃止統合の標準をかなり下回っているのになお存続している局が、終日取扱局については上越電報電話局(以下電報電話局については「報話局」という。)ほか8局、昼間取扱局については十日町報話局ほか32局計42局見受けられる状況である。
一方、電報配達業務についてみると、57年度における電報配達通数は、全体で4310万余通であるが、このうち公社の配達局の配達通数は2632万余通であり、配達局1局当たり1日平均では166.7通、職員1人当たり1日平均では13.2通にすぎず、57年5月の時間帯別配達状況をみると、夜間に配達されたものはわずか1.1%で、深夜(午後10時から翌日午前5時まで)の配達は0.3%と極めて少ないものとなっている。
そして、57年度末においても配達通数が上記計画における局の廃止統合の標準を下回っているのになお存続している局が、糸魚川報話局ほか10局見受けられる状況である。
2 郵政委託業務について
貴公社は、昭和27年以降「公衆電気通信業務の委託に関する郵政省及び日本電信電話公社間基本協定」等に基づき郵政省に対し、電報の受付、伝送、配達に関する事務を委託してきており、同委託業務の運営について55年度から59年度までの委託業務の改善に関する5箇年計画により、電報配達業務の廃止、縮小等の合理化を実施してきた。しかして、57年度末において受付を委託している郵便局は、終日取扱局12局、夜間集中取扱局(注) 3,442局、昼間取扱局14,698局計18,152局となっており、また配達を委託している郵便局は3,456局となっていて、貴公社は、郵政省との協定等により、委託業務の運営等に要する経費について、郵政事業特別会計の決算に基づいて算定された取扱費単価等によって委託費を支払っているが、57年度の電報関係委託費支出額は456億0481万余円となっている。
しかしながら、この額は電報事業全体の収入366億2399万余円を上回り、同事業支出1566億1216万余円の29.1%を占め、郵便局の電報取扱通数が、受付で全体の9.6%、配達で全体の11.6%であるのに比べて極めて多額なものとなっている。
しかして、郵便局における受付業務についてみると、協定により公社電報取扱局に隣接する郵便局等を除くすべての郵便局に受付を委託することとなっているため、新設郵便局が増加することに伴い年々取扱郵便局が増加してきているが、電報の受付通数は、加入電話の普及、郵便為替のオンライン化により年々減少し、51年度708万余通であったものが、57年度では417万余通となっていて、全取扱郵便局の1局当たり1日平均受付通数は1通未満となっており、年間受付200通以下の郵便局が67.2%を占めている。なお、57年度末現在、終日取扱局12局のうち、10局の58年5月及び6月の時間帯別受付状況をみると、夜間の受付はわずか0.2%となっている。
一方、郵便局における配達業務についてみると、電報配達通数は、57年度501万余通で、郵便局1局当たり1日平均では3.9通となっていて、貴公社の民間委託局1局当たり1日平均の委託配達通数17.1通と比べても著しく少ないものとなっており、東京地方電気通信部ほか6電気通信部管内の郵便局26局における58年5月及び6月の時間帯別配達状況をみると、夜間に配達されたものはわずか4.9%となっている。なお、夜間の配達については、東京地方電気通信部ほか17電気通信部等管内の夜間集中局953局についてみると、すべて配達を民間に再委託している。
このような事態を生じたのは、電報の利用内容も大きく変化しているにもかかわらず、直営業務の運用の合理化、要員配置の適正化、郵政委託の在り方等についての検討が十分行われていなかったことによるものと認められる。
ついては、直営業務については、長年電報業務に従事してきた中高年齢層職員の適性、通勤事情等を考慮する要があるなど、職種及び配置の転換が困難な事情があること、郵政委託業務については、郵便局が長年にわたって電報業務を行ってきた経緯があること、1人未満の端数の定員配置になっているため、整数単位の減員が困難であることなどの事情があるとしても現状のままで推移すれば、今後も電報事業の収支が改善されず、損失は、累増の一途をたどることとなるものと認められる。
よって、会計検査院法第36条の規定により、上記の意見を表示する。
(注) 夜間集中取扱局 夜間等における電報の受付、送信事務を公社局(「115」取扱局)へ集約している郵便局