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  • 昭和57年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第9 首都高速道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

コンクリート床版補強工事における増桁架設費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


コンクリート床版補強工事における増桁架設費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (款)維持修繕費 (項)高速道路維持修繕費
部局等の名称 首都高速道路公団
工事名 床版補強工事57−1(東京地区)ほか8工事
工事の概要 首都高速道路の高架橋のコンクリート床版を補強するため、床版を支持する既設桁の間に増桁を架設する工事
工事費 2,458,730,000円(当初契約額2,381,000,000円)
請負人 トピー建設株式会社ほか8会社
契約 昭和57年6月〜8月 指名競争契約

 上記の各工事において、増桁(注1) の架設費の積算(積算額3億0032万余円)が適切でなかったため、積算額が約9300万円過大となっていた。
 このように積算額が過大となっているのは、積算基準が制定された昭和53年当時に比べ施工方法等が変わり、作業能率が向上しているのに、これを積算に反映していなかったことによるもので、作業の実態に即した積算をする要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

 首都高速道路公団(以下「公団」という。)では、自動車専用道路の維持修繕工事を毎年多数実施しているが、このうち、上記部局が昭和57年度に契約し施行している床版補強工事9工事(工事費総額24億5873万円)について検査したところ、次のとおり、増桁の架設費の積算が適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記9工事は高架橋の床版を支持する既設の主桁の間に新たに増桁をして、床版の補強を行うもので、その架設費の積算についてみると、公団本所が53年に制定した「工事設計積算基準、維持修繕附属施設土木編」(以下「積算基準」という。)に基づき、増桁のつり上げから縦移動、既設桁への取付けまでの作業を11人編成で行い、架設場所が陸上の場合はトラッククレーンを使用することとして、1日当たり架設重量を3t、また、架設場所が水上の場合は台船上からウインチを使用することとして、1日当たり架設重量を2.5tとし、1t当たり架設単価を71,061円から133,777円、架設重量3,153t分で3億0032万余円と算定していた。

 しかして、上記積算基準における1日当たり架設重量については、増桁1本(約500kg)ごとの架設時間を測定し、これにより1日の施工可能本数を陸上の場合6本(3t)及び水上の場合5本(2.5t)と定めたものである。

 しかしながら、本院において、上記9工事の増桁架設作業の実態を調査したところ、積算基準制定当時は、作業時に支障となる対傾構(注2) を存置したまま増桁のつり上げから取付けまで1本ごとに行っていたのに対し、近年では、対傾構を撤去した後増桁を順次つり上げて一時仮止めし、これらを集中的に取り付けることとしているため、作業が能率的に行われていた。そして、このうち水上での作業の場合、増桁のつり上げをウインチによっているため陸上の場合のトラッククレーンに比べ能率が落ちるとして差異を設けていたが、架設能率に格別の差異は認められなかった。このように増桁の架設方法は積算基準で想定したものより相当改善されており、11人の作業編成での1日当たり架設重量は、1.5倍又は1.8倍となっていた。

 したがって、本件各工事の増桁の架設費について、施工の実態を考慮して積算したとすれば、積算額を約9300万円程度低減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、首都高速道路公団では、58年6月に積算基準の増桁の架設工の歩掛かりを施工の実態に適合したものに改め、同月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

(注1) 増桁 床版を支持する主桁の間に新たに増設する縦桁及びこれを支持する横桁のことで、床版の支持間隔を短縮させることにより、床版を補強するもの
(注2) 対傾構 横方向の力に対して、橋りょう全体の剛性を増すため、主桁間を連結している骨組

(参考図)

(参考図)