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  • 昭和57年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第11 日本鉄道建設公団|
  • 特に掲記を要すると認めた事項

成田新幹線の建設工事として施行した空港駅施設等について


成田新幹線の建設工事として施行した空港駅施設等について

科目 (款)建設費
(款)管理費
(款)業務外支出
(項)新幹線建設費
(項)管理費ほか
(項)借入金等利子ほか
部局等の名称 日本鉄道建設公団
建設工事の概要 成田空港駅施設及びトンネル等の工事
投資額 543億5028万円(ほかに建設利息等285億2564万円)

 上記部局が施行している成田新幹線(延長65km)の建設工事は、昭和57年度末までに、建設費543億5028万余円を投入し、主として、成田空港駅施設及び同空港から土屋までの延長8.7kmの区間のトンネル、高架橋等の路盤工事を施行して、そのほとんどを完成したが、土屋・東京駅間の建設工事及び用地取得については、地元住民の反対等によって今後の建設の目途が立たず、また、これに代わる各種の鉄道ルート案についても、関連事業者等の利害関係の調整などの諸問題があって最終的な方針が確立していない。このため、空港駅施設等が長期間にわたり遊休化するおそれがあるばかりでなく、建設利息等が今後更に累増することになる。

(説明)

 日本鉄道建設公団(以下「公団」という。)が建設中の成田新幹線は、東京都心と新東京国際空港(以下「成田空港」という。)間を高速で旅客の輸送を図る目的をもって計画されたもので、昭和46年1月に運輸大臣が基本計画を決定し、これに基づいて公団に工事実施計画を認可し、公団は49年2月に着工したものである。

 この工事実施計画によれば、そのルートは東京駅を起点として地下鉄東西線に沿って葛西を経て西船橋で国鉄総武線と交差し、船橋市北部を経由し、千葉県等で建設中の千葉ニュータウン地区内を東進して成田空港に至るもので、線路延長65kmを建設することになっていて、当初は工事予定額を2050億円としていたが、その後、地価の高騰と物価騰勢により、52年3月にこれを3810億円と変更するとともに工事完成予定時期も当初51年度としていたが、建設計画当初からの地元住民の強い反対等により工事が著しく遅延してきたため、その後57年度に変更し、更に58年度に延期しているものである。

 しかして、その建設工事の進ちょく状況についてみると、(1)工事については、57年度末までに建設費485億2108万余円で空港駅施設並びに空港トンネル延長2.1km及び高架橋等延長6.6kmの路盤工事等を実施し、(2)用地については、52年9月までに58億2919万余円で要取得面積136万余m2 のうち22万余m2 (うち土屋・空港間20万余m2 )を買収したのみで、その後買収を中止している。

 上記のように、49年2月に着工して以来、工事完成予定としていた57年度末までに建設費(用地費を含む。)543億5028万余円のほか、建設利息213億9569万余円等を含め、総額828億7592万余円で、空港駅施設及び土屋から空港駅間の路盤工事等をほぼ100%施行したものの、東京駅から土屋間については地元住民の反対運動が強く、関係市町の同意も得られないことなどのため工事進ちょく率はゼロに等しい状況となっていて、成田新幹線としては、施行半ばで事実上凍結したままの状態となっており、着工以来9年余を経過しているのに完成の目途が全く立たない状況である。

 一方、成田新幹線に代わるものとして成田空港と都心とを結び成田空港・土屋間の施設を利用できる新高速鉄道に関するいくつかの構想が検討されてきたが、日本国有鉄道、地方公共団体、関連事業者、地元住民等の各種調整等について困難な問題があり、方策の決定が容易でない状況である。

 しかしながら、成田新幹線については、49年に着工以来57年度末までに国からの出資金等39億8264万余円、補助金78億0728万余円、資金運用部資金からの借入金341億5400万円、政府保証債131億円及び特別債238億3200万円を財源として、総額828億7592万余円が充当されており、上記のような事態のまま推移すると多額の資金を投入して建設した空港駅施設や、土屋から空港駅間の路盤施設が長期間にわたって遊休化するおそれがあるうえ、借入金等に対する多額の支払利息(57年度分48億0152万余円)及び未稼動施設の維持修理費(57年度分5774万余円)が累増されることになるものと認められる。