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  • 昭和59年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第4 農林水産省|
  • 不当事項|
  • 補助金

補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの


(53)-(59) 補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計(組織)農林水産本省 (項)農蚕園芸振興費 (項)水田利用再編対策費 (項)国産大豆等保護対策費 (項)畜産振興費 (項)土地改良事業費
部局等の名称 農林水産本省、東北、関東、東海、近畿、九州各農政局
補助の根拠 大豆なたね交付金暫定措置法(昭和36年法律第201号)、土地改良法(昭和24年法律第195号)等
事業主体 県1、市1、農業協同組合1、その他4、計7事業主体
補助事業 自給飼料生産向上特別対策事業等7事業
上記に対する国庫補助金交付額の合計 61,810,897円

 上記の7補助事業において、補助の対象とは認められないものがあったり、補助の目的を達していないものがあったりなどしていて、国庫補助金33,830,873円が不当と認められる。これを県別に掲げると別表 のとおりである。

(説明)
 農林水産省所管の補助事業は、地方公共団体等が事業主体となって実施するもので、同省ではこれらの事業主体に対して事業に要する費用について直接又は間接に補助金を交付している。
 しかして、これらの補助事業の実施及び経理について検査したところ、前記の7事業主体が実施した地域農業生産総合振興事業、大豆交付金の交付等の7事業において補助の対象とは認められないものがあったり、補助の目的を達していないものがあったりなどしていた。
 いま、これらについて不当の態様別に示すと次のとおりである。

補助の対象とは認められないもの
1事業 不当と認めた国庫補助金 9,599,100円
工事の設計が適切でないもの
2事業 不当と認めた国庫補助金 7,402,284円
補助の目的を達していないもの
3事業 不当と認めた国庫補助金 15,081,000円
補助の目的外に使用しているもの
1事業 不当と認めた国庫補助金 1,748,489円

(別表)

県名 事業 事業主体
(所在地)
事業費  左に対する国庫補助金 不当と認めた事業費 不当と認めた国庫補助金 摘要
千円 千円 千円 千円
(53)  青森県 自給飼料生産向上特別対策事業
(乾草収納庫の設置等)
阿部野飼料生産利用組合(青森市) 13,323 6,661 3,497 1,748 目的外使用
 この事業は、昭和53年度補助事業として、飼料の自給力の向上を図るため、共同利用の施設等として、乾草収納庫1棟延べ272m2 及びトラクタ1台、運搬車1台等を事業費13,323,000円で設置・導入したものである。
 しかし、上記組合では、58年10月に乾草収納庫の一部155m2 を個人に貸し付け、借受者はこれを住居に改造して使用している。
(54)  同 57年産大豆交付金の交付 川内農業協同組合(三戸郡五戸町) 13,287 13,287 9,599 9,599 補助の対象外
 この事業は、57年産大豆交付金として、国内産の大豆の生産の確保と農家所得の安定を図るため、昭和58年度に、生産者が上記組合に売渡しの委託をした57年産大豆969俵(1俵60kg)について生産者の手取額が農林水産大臣の定めた基準価格と同額となるよう、同組合に対し基準価格と標準販売価格との差額相当分として1俵当たり13,713円計13,287,897円を交付したものである。
 しかし、実際は、上記のうちの700俵は、同組合が雑穀商から買い取った大豆を生産者53名から売渡しの委託を受けたようにしていたもので、交付の対象とはならないものであり、これに係る交付金9,599,100円は交付の要がなかったものである。
(55)  埼玉県 水田利用再編対策推進事業(コンバインの導入) 北地区稲麦作集団(比企郡吉見町) 6,000 3,000 6,000 3,000 補助目的の不達成
 この事業は、昭和59年度補助事業として、主として転作作物を耕作する営農集団の育成と転作に係る麦作作業の受託及び機械の共同利用を推進するため、コンバイン1台を事業費6,000,000円で導入したものである。
 しかし、実際は、上記集団を構成する3名の農業者のうち1名が購入資金の事業主体負担分を負担し、当初から上記の機械を専用していて、共同利用のために導入した補助の目的を達していない。
(56)  三重県 津市向井地区土地改良総合整備(地域改善)事業 津市 12,580 8,386 3,875 2,583 工事の設計不適切及び施工不良
 この工事は、津市向井地区団体営土地改良総合整備(地域改善)事業の一環として、昭和58年度に津市分部地内の農道延長747mに舗装工、路床改良工、側溝補強コンクリート工等を施工したもので、施行に先立って行った路床土のCBR調査(注) の結果等に基づき、舗装工2,611m2 については、下層路盤を切込砕石で厚さ14cm、上層路盤を粒度調整砕石で厚さ6cm、表層をアスファルトコンクリートで厚さ4cm施工すること、さらに、路床土の強さが十分であると判定した延長192m、670m2 の区間を除く延長555m、1,941m2 の路床土については、深さ30cmにわたって生石灰を混合して路床改良を施工することと設計し、また、道路片側に既設のU字型側溝が設置されていた延長394m(路床改良工施工区間224m、不施工区間170m)について側溝の車道側に深さ52cmから82cm、上幅10cm又は15cmの側溝補強コンクリートを施工することと設計し、それぞれ設計どおり施工したとしていた。

 しかし、上記のうち路床改良工を施工しなかった延長192m、670m2 について路床土の強さが十分であると判定したのは、路床土のCBR調査の際極端に高い値についての処理が適切でなかった結果であって、この区間についても路床改良工を施工する必要があったと認められ、また、側溝補強コンクリートの施工に当たって床掘りした路床土及び下層路盤の埋戻しの締め固めが十分でなく、このように設計及び施工が適切でなかったため、路床改良工を施工しなかった670m2 及び路床改良工を施工した区間のうち延長167mの側溝寄りの片側290m2 計960m2 は舗装が沈下し、表層のアスファルトコンクリートにき裂が連続的に多数生じ、なかには表層の全厚にきっ甲状のき裂が生じている箇所もある状況である。

(注)  CBR調査 道路舗装の設計の際行う路床土の強さについての調査で、この結果が舗装の構成や厚さの決定の基礎として使われる。

(57)  滋賀県 甲賀郡水口町甲賀地区広域農道整備 滋賀県 28,300 18,395 7,413 4,819 工事の設計不適切
 この工事は、甲賀地区の広域営農団地の基幹となる農道総延長14,768mの新設工事の一環として、昭和58年度に水口町山上地内に道路延長235mを新設するため、盛土、ボックスカルバート(以下「カルバート」という。)、コンクリートブロック練り積み擁壁等を施工したものである。しかして、この工事のうち谷状の地帯を横断する延長70mの区間についてみると、盛土高は最高7.5mで、この盛土の下を横断する耕作道、水路兼用のカルバート延長24mは、割栗石を厚さ20cm敷き均し、その上に捨コンクリートを厚さ10cm打設した上に、内空の幅3m、高さ3mで長さ1mの鉄筋コンクリート構造の工場製品(以下「セグメント」という。)24基を四隅にPC鋼より線(径12.4mm)を通し連結して据え付ける設計により施工していた。
 しかし、本件の延長70m区間の低位部は泥土がたい積した水田跡地であって、このような地形の箇所に上記のような多量の盛土や大型の構造物の設置をする場合には、事前に地盤についての土質調査を行い、その結果に基づいて適切な設計をすべきであるのに、格別の調査を行うことなく、良好な地盤の箇所に設置する場合と同様の上記のような設計としたため、しゅん功後間もなく、盛土の一部にすべり破壊が生じ、また、カルバートは下流側から15基のセグメント(延長15m)が滑動及び不等沈下を生じていて、なかにはセグメントを連結しているPC鋼より線が破断しセグメント間に最大23.8cmの空隙(げき)が生じており、さらに、カルバートの下流側坑口両側に接続して施工したコンクリートブロック練り積み擁壁(延べ21.3m2 )も滑動して、カルバートの側壁との間に最大24.7cmの空隙(げき)が生じている状況である。
(58)  鹿児島県 地域農業生産総合振興事業(コンバイン等の導入) 松山麦生産組合(川辺郡知覧町) 16,423 8,211 16,423 8,211 補助目的の不達成
 この事業は、昭和57年度補助事業として、麦作の振興を図り、畑の有効利用を促進するとともに農家経営の安定に資するため、共同利用の機械として、コンバイン3台及び施肥播(は)種機3台を事業費16,423,000円で導入したものである。
 しかし、実際は、上記組合を構成する7名の農業者のうち3名が購入資金の事業主体負担分を負担し、当初からそれぞれ上記の機械を専用していて、共同利用のために導入した補助の目的を達していない。
(59)  同 地域農業生産総合振興事業(コンバイン等の導入) 中部麦生産組合(川辺郡知覧町) 7,741 3,870 7,741 8,870 補助目的の不達成
 この事業は、昭和57年度補助事業として、麦作の振興を図り、田、畑の有効利用を促進するとともに農家経営の安定に資するため、共同利用の機械として、コンバイン3台及び施肥播(は)種機3台等を事業費7,741,000円で導入したものである。
 しかし、実際は、上記組合を構成する7名の農業者のうち3名が購入資金の事業主体負担分を負担し、当初からそれぞれ上記の機械を専用していて、共同利用のために導入した補助の目的を達していない。
97,654 61,810 54,550 33,830