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  • 昭和59年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第4 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

農業近代化資金利子補給補助金の交付を適切に行うよう改善させたもの


(1) 農業近代化資金利子補給補助金の交付を適切に行うよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農林漁業金融費
部局等の名称 農林水産本省、東北、関東、北陸、近畿、九州各農政局
交付対象 北海道ほか10府県(注1)
補助金の概要 都道府県が農業協同組合等に対して行っている農業近代化資金利子補給事業に対する利子補給補助金
対象金額 昭和58年度 5,825,264,861円
昭和59年度 5,620,610,706円
11,445,875,567円

 上記の部局では、農業者等が農業協同組合等から農業近代化資金の融資を受けた場合に負担する金利の一部を利子補給している都道府県に対し利子補給補助金を交付しているが、利子補給対象の取扱いが適切でなかったため、利子補給補助金2億4273万余円の交付が不適切となっていた。
 このような事態を生じたのは、農業を営む任意団体と営まない任意団体とで利子補給率が異なっているのに、その対象範囲が明確でなかったことなどによるもので、取扱いを明確に示す要があると認められた。
 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)
 農林水産省では、農業近代化資金助成法(昭和36年法律第202号。以下「助成法」という。)に基づき、農業協同組合等の融資機関が農業を営む者、農業協同組合、農事組合法人(注2) 、任意団体等(以下「農業者等」という。)に対して資本装備の高度化及び経営の近代化に資するため貸し付ける農業近代化資金について、その融通を円滑にするため、都道府県が当該融資機関との契約により利子補給を行うのに要する経費の2分の1相当額を農業近代化資金利子補給補助金として都道府県に交付しており、その交付額は、昭和58年度で162億3786万余円、59年度で159億6839万余円に上っている。上記の農業近代化資金を融資機関が貸し付けるに当たっては、農業者等からの借入申込みに基づき都道府県に利子補給申請を行ってその承認を受けた後貸付けを実行することとなっている。そして、利子補給補助金の対象となっている資金種目は建構築物造成資金ほか6種類(注3) で、これらの資金は、農業を営む者と、農業協同組合に代表されるように農業を営むことを目的としていないもの(以下「農業を営まない者」という。)とに区別して貸し付けられていて、それぞれの利子補給率は、原則として、農業を営む者については3%、農業を営まない者については2%となっており、前者に対する利子補給率を高くしているのは自己の危険負担のもとに農業を営むものであることから、その利子負担を特に軽減することが適当であるという理由によるものである。

 しかして、北海道ほか14府県(注4) における任意団体を対象として58、59両年度に交付された利子補給金のうち4億,4021万余円及び4億1375万余円について利子補給の実施状況を検査したところ、利子補給対象の取扱いが適切とは認められない事態が見受けられた。

 すなわち、農業者等のうち、農業を営む者の範囲については、助成法第2条、農業近代化資金助成法施行令(昭和36年政令第346号。以下「施行令」という。)第3条及び農業近代化資金融通措置要綱(昭和48年5月12日48農経A第577号。以下「措置要綱」という。)によれば、農業者個人のほか、農業を営む農事組合法人、合名会社、合資会社、有限会社、その他農業者の組織する法人格を有しない団体で農民3人以上によって構成され、特定の構成員の加入、脱退と関係なく、一体として経済活動の単位となっているもの(以下「農業を営む任意団体」という。)とされており、また、農業を営まない者の範囲については、助成法第2条、施行令第1条及び措置要綱によれば、農業協同組合のほか、農業は営まないが農業に係る共同利用施設の設置又は農作業の共同化に関する事業等を行う農事組合法人や、法人格を有しない団体で農業者がその主たる構成員となっており、かつ、代表者、代表権の範囲等について農林水産大臣の定める基準に従った規約を有しているもの(以下「農業を営まない任意団体」という。)等とされている。

 このように、法人格を有しない任意団体は、農業を営む者と農業を営まない者とに区別されているが、農業を営む任意団体に関する要件のうち「一体として経済活動の単位となっているもの」についての取扱いが明確に示されていないことなどのため、農民3人以上で構成される団体等をすべて「農業を営む任意団体」であるとして、農業を営まない者と認められる団体に対して農業を営む者としての利子補給率を適用していたものが、北海道ほか10府県で7,353件見受けられた。しかしながら、農業を営む者に対して利子補給率を高くしているのは、前記のような理由によるものであるから、自己の危険負担のもとに組織として農業を営む団体でない限り農業を営まない者として取り扱うべきであって、上記のように農民3人以上で構成されているなどしていればこれをすべて農業を営む団体であるとして取り扱って農業を営む者である場合の利子補給率を適用して利子補給を行っているのは適切とは認められない。

 いま、仮にこれらについて農業を営まない者の場合の利子補給率を適用したとすれば、利子補給補助金を58年度で1億2453万余円、59年度で1億1820万余円、計2億4273万余円節減できたと認められた。
 このような事態を生じたのは、任意団体の取扱いが、農業近代化資金融通制度創設当時は農業を営む任意団体だけに借入資格を与えていたのを、55年に農業を営まない任意団体にも、すべての資金の借入資格を与えることとするなど制度が変遷してきたにもかかわらず、農林水産省において、農業を営む任意団体と農業を営まない任意団体との取扱範囲を明確に定めていなかったこと、道府県等に対する指導・監督が十分でなかったことなどによると認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省では、60年11月に「農業近代化資金の融通の適正化について」の通達を発するなどして、農業を営む者に該当する任意団体の範囲を明確に示してその適正な取扱いを図る処置を講じた。

 (注1)  北海道ほか10府県 北海道、大阪府、青森、岩手、秋田、福井、山梨、和歌山、佐賀、長崎、大分各県

 (注2)  農事組合法人 農業の生産行程における農民の協同組織体として農業協同組合法(昭和22年法律第132号)に基づき設立される法人であり、同法第72条の8第1項第1号で定める農業を営まない農事組合法人と同条同項第2号で定める農業を営む農事組合法人がある。

 (注3)  建構築物造成資金ほか6種類 建構築物造成資金、農機具等取得資金、果樹等植栽育成資金、家畜購入育成資金、小土地改良資金、農村環境整備資金及び大臣特認資金

 (注4)  北海道ほか14府県 北海道、大阪府、青森、岩手、宮城、秋田、埼玉、新潟、福井、山梨、和歌山、佐賀、長崎、大分、鹿児島各県