ページトップ
  • 昭和59年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第4 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

自主流通米の概算買入代金に係る受益相当分を生産者に納付させるよう改善させたもの


(2) 自主流通米の概算買入代金に係る受益相当分を生産者に納付させるよう改善させたもの

会計名 食糧管理特別会計 (国内米管理勘定)
部局等の名称 食糧庁
対象金額 自主流通米の販売に伴う概算買入代金の返納額 161,994,437,463円(昭和59年度)

上記の部局では、国内米の買入れ契約に伴い生産者に支払った概算買入代金(以下「概算金」という。)のうち自主流通米に係る分を返納させる際、生産者に受益相当分約16億円を負担させる措置を講じていなかったので、これを是正させる要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)
 食糧庁では、毎年生産者から売渡申込みを受けた米穀について、その売買契約を7月初旬から8月初旬までに締結し、そのうち「政府に売り渡すべき米穀に関する政令」(昭和30年政令第134号)に基づき農林水産省告示において定められる売買条件に従って買入代金の概算払(60kg当たり3,000円)の申請があったもの(昭和59年度7,465千余t)について、生産者に概算金を支払っている(59年度総額3732億5349万余円)。そして、この概算金の制度は、30年に米穀の供出割当制を事前売渡申込制に変えた際、適正な集荷を確保するための誘導策として導入され、実施されてきたもので、それに要する資金については、食糧証券(注) の発行によって調達しており、これに係る支払利子は毎年多額に上っている。

 しかして、概算金の支払及び精算状況について検査したところ、次のとおり適切でない事態が見受けられた。
 すなわち、生産者に支払われた概算金は、集荷時において、政府買入米に係る分についてはその買入代金に充当し、自主流通米に係る分については生産者から返納させることとしており、自主流通米に係る返納金は59年度において1619億9443万余円となっているが、これに係る生産者の受益相当分については、自主流通制度の円滑な運営に配慮する要があることや、個々に生産者の受益相当分を計算し納付させることは事務上煩さになることなどから、納付させていない状況であった。
 しかしながら、

ア 国内米の自主流通制度は発足以来十数年を経過し、自主流通米の流通量も年々増加して毎年安定した集荷が行われており、制度として定着してきていること、

イ 物品購入契約等において、概算払や前金払を行う事例は国が締結する契約において多数見受けられるが、その場合、概算払や前金払の相手方の受益相当分を契約価格に反映させる調整を行う例が多く見受けられ、政府買入米についても同様の処置が執られていること

などから自主流通米に係る概算金についても合理的な方法を策定して生産者に受益相当分を納付させる要があると認められた。

 いま、仮に受益相当分を生産者から納付させることとすると、その納付額は食糧庁の計算によっても59年度分で約16億円となる。

 上記についての本院の指摘に基づき、食糧庁では、60年5月に、60年産米の売買条件を定める際、自主流通米として販売することが確実になった都度、生産者から受益相当分として、8月31日以前に販売した分については60kg当たり20円を、9月1日以降に販売した分については60kg当たり30円を、それぞれ納付させることに改め、さらに、同年10月に納付事務取扱手続についての通達を発して、60年産米の集荷から受益相当分の納付を実施することとする処置を講じた。

 (注)  食糧証券 国内産米麦等の買入代金の支払に当たり、資金が不足する場合に発行される償還期間60日程度の政府短期証券