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  • 昭和59年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第8 労働省|
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  • 保険

雇用保険の定年延長奨励金の支給が適正でなかったもの


(106) 雇用保険の定年延長奨励金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定) (項)雇用安定等事業費
部局等の名称 北海道ほか7府県(支給庁)
札幌公共職業安定所ほか16公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方 20事業主
定年延長奨励金の支給額の合計 51,800,000円

 上記の20事業主に定年延長奨励金51,800,000円を支給しているが、支給決定に当たって申請に対する調査確認が十分でなかったため、22,700,000円が不適正に支給されていた。これらについては、本院の注意により、すべて返還の処置が執られた。これを道府県ごとに集計して掲げると別表 のとおりである。
 これは、北海道ほか23都府県(支給決定庁札幌公共職業安定所ほか254公共職業安定所)において1,772事業主に対して支給した2,713,730,000円について本院が調査した結果である。

(説明)

 定年延長奨励金は、雇用保険(前掲の「雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったもの」の説明参照 )で行う事業のうちの雇用改善事業の一環として、定年の引上げによる高年齢者の雇用の延長の促進を図るため、定年の引上げを行った雇用保険適用事業の事業主に対して支給するもので、その支給要件は、事業主が、

ア 労働協約の改定、就業規則の変更等により、従前の定年(以下「旧定年」という。)を56歳以上の年齢に引き上げ、これを新しい定年(以下「新定年」という。)と定めたこと

イ 定年の引上げの際に旧定年の適用を受けており、かつ、12月末日(以下「支給基準日」という。)現在において旧定年を超えるとともに引上げ後の新定年の適用を受けていて、しかも55歳以上65歳未満であるなどの要件を満たす被保険者(以下「対象被保険者」という。)を雇用していること

などとなっており、支給対象期間は、対象被保険者が最初に生じた日からその者が新定年により退職することとなる日までの間、支給額は、対象被保険者1人当たり年額30万円又は40万円となっている。

 そして、その支給の決定は、公共職業安定所が事業主から提出された申請書に記載されている定年の引上げ日、定年の引上げの内容、対象被保険者の氏名、生年月日、雇用年月日等を審査して行い、これに基づいて各都道府県が支給することとなっている。

 しかして、定年延長奨励金の支給決定の適否について検査したところ、前記の255公共職業安定所のうち札幌公共職業安定所ほか16公共職業安定所において、事業主が誠実でなかったなどして、実在しない労働者や支給基準日において旧定年を超えておらず対象被保険者に該当しない労働者を対象被保険者としているものなど申請書の記載内容が事実と相違しているものがあったにもかかわらず、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行ったなどのため、定年延長奨励金を支給した北海道ほか7府県では、本院が調査した148事業主に対する支給額のうち、20事業主分51,800,000円について22,700,000円が不適正に支給されていた。

 (別表)

道府県名 公共職業安定所 本院が調査した事業主数 不適正受給事業主数 左の事業主に支給した定年延長奨励金 左のうち不適正定年延長奨励金
千円 千円
北海道 札幌ほか3 48 4 8,700 2,100
岩手県 盛岡ほか1 11 3 5,500 1,300
福島県 須賀川 4 1 8,400 1,500
神奈川県 川崎 10 1 3,300 600
長野県 伊那 7 1 2,800 1,600
三重県 四日市ほか3 25 6 12,000 7,800
大阪府 大阪西 21 1 4,500 4,500
和歌山県 和歌山ほか2 22 3 6,600 3,300
 計 17箇所 148 20 51,800 22,700