会計名及び科目 | 一般会計 (組織)建設本省 (項)都市計画事業費 | |
道路整備特別会計 (項)街路事業費 (項)北海道街路事業費 | ||
部局等の名称 | 建設省 | |
事業の概要 | 都市計画区域において都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的として実施される街路、下水道(都市下水路)の新設、改良及び土地の区画形質の変更等の事業 | |
補助の概要 | 街路、下水道(都市下水路)及び土地区画整理の各事業(以下「都市施設等整備事業」という。)を行う地方公共団体等に対してその費用の一部に充てるため補助する。 | |
本院が調査した事業 | 北海道ほか30都府県管内の街路625事業、下水道(都市下水路)19事業、土地区画整理93事業、計737事業 | |
支出済事業費 | 1兆9302億0129万余円 | |
補助対象事業費 | 1兆6226億6690万余円 | |
国庫補助金交付額 | 1兆0679億6268万余円 |
都道府県、市町村等が建設省の補助を受けて施行している上記737事業の実施状況を調査したところ、事業が休止していて再開の見通しが立っていないものが44事業、数次にわたり延伸を重ねた現在の事業施行期間内においてもなお完了する見通しが立っていないものが98事業見受けられ、これら計142事業に投じられた事業費は、昭和59年度末で1472億9817万余円(国庫補助金交付額878億4152万余円)に上っている。
これらの事業は、目的とする都市施設等の工事に着手していなかったり、一部に未完了となっている箇所があるため全く供用できず事業効果が発現していない施設があったり、また、一部が供用されてはいるもののなお未完了となっている箇所があるため所期の目的どおりの機能が発揮されず事業効果の発現が不十分なままになっている施設があったりしている状況である。
(説明)
建設省では、都市計画法(昭和43年法律第100号)及び関係法令の規定に基づき、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もって国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的として、都市施設等整備事業を実施している地方公共団体等(以下「事業主体」という。)に対し、これらの事業に要する費用の一部に充てるため毎年度多額の国庫補助金を交付しており、各事業主体は、事業地、設計の概要及び確実に施行できる見込みのある事業施行期間等を定めた都市計画事業認可申請書を建設大臣又は都道府県知事に提出し、その認可を受けて事業を実施することとしている。
しかして、北海道ほか30都府県(注1) 及び管内市町村等が着手し、59年度末現在でまだ完了していない都市施設等整備事業3,623事業のうち、事業の施行途中において休止していたり事業施行期間が当初認可を受けた期間に比べて2倍以上経過しているのにまだ完了していなかったりしている737事業(総事業費2兆7211億8446万余円、支出済事業費1兆9302億0129万余円、補助対象事業費1兆6226億6690万余円、国庫補助金交付額1兆0679億6268万余円)について調査したところ、北海道ほか30都府県管内の103事業主体において、事業が休止していて再開の見通しが立っていないものが44事業、数次にわたり延伸を重ねた現在の事業施行期間内においてもなお完了する見通しが立っていないものが98事業、計142事業(総事業費3590億3500万余円、支出済事業費1472億9817万余円、補助対象事業費1345億5608万余円、国庫補助金交付額878億4152万余円)見受けられた。
上記の事態を態様別に掲げると次のとおりである。
1 事業が休止していて再開の見通しが立っていないもの
事業 | 都道府県 | 事業主体数 | 事業数 | 総事業費 | 支出済事業費 | 補助対象事業費 | 国庫補助金交付額 |
街路 |
福島県ほか12都府県(注2) |
17 |
20 |
千円 38,777,635 |
千円 23,307,424 |
千円 18,947,035 |
千円 12,564,456 |
下水道(都市下水路) | 岩手県ほか11県(注3) | 19 | 19 | 12,386,902 | 3,195,690 | 3,086,000 | 1,225,540 |
土地区画整理 | 埼玉県ほか3県(注4) | 5 | 5 | 9,952,802 | 1,587,229 | 1,012,200 | 674,800 |
計 | 23 | 41 | 44 | 61,117,339 | 28,090,344 | 23,045,235 | 14,464,796 |
これらの事業は、地元住民が騒音等の環境問題を理由として事業に反対していたり、地権者が買収価格や代替地、減歩率等に対する不満又は土地の分断等を理由として事業に反対していたり、関連する他事業との調整等が十分でなかったりなどしているため、事業が休止していて再開の見通しが立っていない状況である。
事業名 | 事業主体 | 事業内容 | 施行期間 |
総事業費 | 支出済事業費 | 補助対象事業費 | 国庫補助金交付額 |
(当初施行期限) | |||||||
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||
<事例1 街路事業> | |||||||
鎌倉都市計画道路事業3・4・2由比ヶ浜関谷線 | 神奈川県 | 延長 1,211m |
44.5〜 63.3 (50.3) |
2,570,000 | 2,437,939 | 2,437,939 | 1,625,293 |
この事業は、鎌倉由比ヶ浜海岸と国道1号とを接続して鎌倉市内の交通量の増加に伴う渋滞を緩和するための幹線街路のうち延長1,211mを整備するもので、58年度末までに延長1,131mを施行したが、本件街路と国道1号とを結ぶ横浜市内の街路事業(延長580m)が騒音、振動等の環境問題、地域分断による生活環境の変化等を理由とする地元住民の反対により、認可申請さえ行われていないこともあって、本件事業は延長80mの施行を残したまま、59年4月から休止していて再開の見通しが立っていない状況である。
<事例2 下水道(都市下水路)事業> | |||||||
村上都市計画下水道事業(村上第3号都市下水路) | 村上市 | 延長1,886.6m | 50.10〜 63.3 (57.3) |
544,500 | 454,500 | 454,500 | 181,800 |
この事業は、村上市の中心部である地域の集水面積54ha内において、雨水による市街地の浸水を防止するため都市下水路延長1,866.6mを函きょ等により新設、改良するもので、56年度末までに中流部及び下流部延長1,667.1mを施行したが、上流部の特に人家が密集し浸水被害が多発する地域の延長219.5mについては、別途に拡幅改良が予定されている街路の路面下に施行することとしているものの、本件事業の実施とこの街路事業の実施との調整が十分でなかったため街路事業は認可の申請もされておらず、本件事業の上流部の施行については57年9月から休止していて再開の見通しさえ立っていない状況である。
<事例3 土地区画整理事業> | |||||||
与野浦和都市計画与野駅西口土地区画整理事業 | 埼玉県 | 面積 8.26ha | 44.3〜 65.3 (51.3) |
2,103,000 | 1,151,323 | 705,900 | 470,600 |
この事業は、与野駅西口周辺地区8.26haを事業地として宅地利用の増進を図るため区画形質の変更及び道路等公共施設の新設を行うもので、事業当初から一部地権者に減歩率、換地及び移転補償額等についての不満があり、反対同盟が結成されるなどしていて、用地買収5,707.96m2 を行っていただけで54年4月から事業を休止していて再開の見通しさえ立っていない状況である。
2 数次にわたり延伸を重ねた現在の事業施行期間内においてもなお完了する見通しが立っていないもの
事業 | 都道府県 | 事業主体数 | 事業数 | 総事業費 | 支出済事業費 | 補助対象事業費 | 国庫補助金交付額 |
街路 |
北海道ほか26都府県(注5) | 59 |
95 |
千円 276,894,664 |
千円 109,996,124 |
千円 104,570,652 |
千円 68,749,926 |
土地区画整理 |
栃木県ほか2府県(注6) | 3 |
3 |
21,023,000 |
9,211,700 |
6,940,200 |
4,626,800 |
計 | 28 | 62 | 98 | 297,917,664 | 119,207,825 | 111,510,852 | 73,376,726 |
これらの事業は、取得を要する用地に関して買収価格又は代替地等についての地権者の同意が得られなかったり、関係者の権利関係についての調整が難航したり、騒音等の環境問題に関する地元住民の理解が得られなかったり、減歩率又は補償額等に対する地権者の不満から一部地区の仮換地の指定ができなかったりなどしているため事業が遅延していて、現在の事業施行期間内においてもなお完了する見通しが立っていない状況である。
事業名 | 事業主体 | 事業内容 | 施行期間 |
総事業費 | 支出済事業費 | 補助対象事業費 | 国庫補助金交付額 |
(当初施行期限) | |||||||
(延伸回数) | |||||||
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||
<事例1 街路事業> | |||||||
千葉市都市計画道路事業3・3・24塩田町誉田町線 | 千葉市 | 延長1,825.3m | 49.8〜 61.3 (54.3) (2回) |
7,110,350 | 1,894,467 | 1,816,305 | 1,210,870 |
この事業は、千葉東南部団地と国道16号とを接続して市街地周辺の開発を図るための幹線街路のうち延長1,825.3mを拡幅改良するもので、取得を要する用地に関して、買収価格等や代替地に対する不満から地権者の同意が得られず交渉が難航するなどして買収48,300m2 及び補償89件のうち、25,744.6m2 及び56件を行ったにすぎず、事業が著しく遅延していて、現在の事業施行期間内においてもなお完了する見通しが立っていない状況である。
<事例2 街路事業> | |||||||
守口都市計画道路事業3・4・9馬場菊水線 | 守口市 | 延長529m | 45.9〜 63.3 (50.3) (5回) |
2,228,343 | 1,429,845 | 915,150 | 610,100 |
この事業は、府道大阪内環状線と国道163号とを接続して市街地の交通の円滑化を図るための幹線街路のうち延長529mを拡幅改良するもので、取得を要する用地に関して、補償対象となる中央市場内に借地人、借家人等が多く、これらの権利関係の調整に日時を要して交渉が難航しているため、既に建設された街路延長195mについては供用しているものの、事業が著しく遅延していて、現在の事業施行期間内においてもなお完了する見通しが立っていない状況である。
<事例3 土地区画整理事業> | |||||||
京都都市計画上鳥羽南部地区土地区画整理事業 | 京都市 | 面積149ha | 47.3〜 64.3 (52.3) (4回) |
10,680,000 | 4,699,567 | 2,797,200 | 1,864,800 |
この事業は、京都市上鳥羽南部地区149haを事業地として宅地利用の増進を図るため区画形質の変更及び道路等公共施設の新設を行うもので、地権者から減歩率、換地についての不満が強まり、これらの意見調整に日時を要したり、道路予定地の物件移転の交渉が難航したりして施行面積のうち66.7haを施行したものの事業が著しく遅延していて、現在の事業施行期間内においてもなお完了する見通しが立っていない状況である。
このような事態を生じているのは、地元住民等が騒音等により環境が悪化することを懸念して事業に反対してその協力が得られないこと、取得を要する用地に関して買収価格等について地権者等の同意が得られないこと、また、事業主体において前記の事態を解決するための努力や関連する他事業との間における計画等の調整が十分でないこと、さらに、建設省においてもこれらの事態を解決するため事業主体と協力して啓蒙活動等の施策を講じてはいるもののなお十分な効果の発現が図られていないことなどによると認められる。
しかして、都市施設等整備事業は、整備計画に従って緊急かつ重点的に実施することを要請されているが、前記のような事態がこのまま推移すると、事業が長期化することにより物価上昇等から事業費が増こうするばかりでなく、投下した多額の事業費がその所期の効果を発現しない状態が継続することとなり、その意図する交通需要への対応、雨水による市街地の浸水の防止及び土地利用の促進が阻害されて、都市の健全な発展と秩序ある整備が達成されないことになると認められる。
(注1) 北海道ほか30都府県 北海道、東京都、京都、大阪両府、岩手、宮城、秋田、山形、福島、栃木、埼玉、千葉、神奈川、新潟、石川、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、香川、高知、福岡、佐賀、熊本各県
(注2) 福島県ほか12都府県 東京都、京都、大阪両府、福島、埼玉、千葉、神奈川、山梨、愛知、兵庫、和歌山、香川、福岡各県
(注3) 岩手県ほか11県 岩手、秋田、福島、埼玉、千葉、新潟、長野、奈良、島根、高知、福岡、佐賀各県
(注4) 埼玉県ほか3県 埼玉、長野、広島、熊本各県
(注5) 北海道ほか26都府県 北海道、東京都、京都、大阪両府、岩手、宮城、山形、福島、埼玉、千葉、神奈川、新潟、石川、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、香川、高知、福岡、熊本各県
(注6) 栃木県ほか2府県 京都府、栃木、静岡両県