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  • 昭和59年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第1 日本国有鉄道|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

車両燃料等の補給作業費の積算について作業の実態に即したものにするよう改善させたもの


(2) 車両燃料等の補給作業費の積算について作業の実態に即したものにするよう改善させたもの

科目 (損益勘定) (項)営業費
部局等の名称 北海道総局ほか1総局及び釧路鉄道管理局ほか25鉄道管理局
契約名 燃料取扱作業請負契約37件
作業の概要

総局及び鉄道管理局管内の機関区、運転区等における気動車、ディーゼル機関車等に対する燃料取扱作業として、車両燃料等の補給作業及びこれに関連する附帯作業を行うもの

契約の相手方 北海道車両整備株式会社ほか28会社
契約 昭和59年4月〜60年3月 随意契約(単価契約)

支払額

1,422,212,750円

 上記の各契約において、車両燃料等の補給作業の作業費の積算(積算額8億6922万余円)が作業の実態に即していなかったため、積算額が約1億3900万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっているのは、本社運転局制定の積算標準において、車両燃料等の補給作業を行うため現場詰所と作業現場との往復に要する時分等の算定の取扱いが明確に規定されていないことによるもので、積算標準を適切なものに改める要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

 日本国有鉄道では、北海道総局ほか1総局及び釧路鉄道管理局ほか25鉄道管理局(注1) において、機関区、運転区等(以下「機関区等」という。)における気動車、ディーゼル機関車等(以下「車両」という。)に対する車両燃料の補給(以下「給油」という。)、機関の冷却水等の補給(以下「給水」という。)、ブレーキ用等の砂の補給(以下「給砂」という。)の各作業(以下「補給作業」という。)を請け負わせており、これら補給作業に係る車両1両当たり単価の予定価格については、本社運転局制定の「燃料取扱作業予定価格積算標準」(昭和59年運計第431号。以下「積算標準」という。)に基づき、年間の労務費、物件費等の経費を見積り年間の作業予定車両数でこれを除して算定することとなっている。このうち、労務費は所要人工に1人工当たり労務費を乗じて算出することとしており、所要人工については、機関区等ごとに、車種別及び補給作業別に1両当たり補給作業時分を算出し、これに作業員が現場詰所から作業現場への往復に要する時分(以下「往復時分」という。)、補給作業を終了した車両から次に補給作業を行う車両への移動に要する時分等の時分を加えるなどして求めた1両当たり作業時分に、上記の年間作業予定車両数を乗じて年間総作業時分を算出し、これを1日平均実働作業時分で除して算定することとしている。

 しかして、昭和59年度中に請負により実施している前記の燃料取扱作業37件(支払額14億2221万余円)について検査したところ、補給作業に係る車両1両当たり単価の予定価格の積算において、所要人工の算定用いた作業時分のうちの往復時分等について、次のとおり適切でないと認められる事態が見受けられた。

(1) 1両の給油、給水、給砂の各作業ごとに往復時分を見込んでいるもの

 青函船舶鉄道管理局ほか2鉄道管理局(注2) では、作業員が車両に給油、給水の作業又は給油、給水、給砂の作業を行なう場合には、図1のように、1両の給油、給水、給砂の各作業ごとに現場詰所と作業現場との間を往復することとして、それぞれの作業ごとに1往復時分を見込んでいる。

車両燃料等の補給作業費の積算について作業の実態に即したものにするよう改善させたものの図1

(2) 給油、給水の各作業を連続して行うこととして、1両ごとに往復時分を見込むなどしているもの

 釧路鉄道管理局ほか14鉄道管理局(注3) では、1両だけの車両に給油、給水、給砂の各作業を行う場合には、図2−1のように、給油、給水を連続し、給砂は単独で行うこととして、給油・給水作業に1往復時分、給砂作業に1往復時分を見込んでおり、また、1列車の編成となっている2両以上の車両に給油、給水の作業を行う場合には、図2−2のように、1両ごとに給油、給水を連続して行うこととして、1両ごとの給油・給水作業に1往復時分を見込んでいる。

車両燃料等の補給作業費の積算について作業の実態に即したものにするよう改善させたものの図2

(3) 給油、給水、給砂の各作業を連続して行うこととして、1両だけの車両の場合は1両ごとに、1列車の編成となっている場合は1列車ごとに往復時分を見込んでいるもの

 北海道総局ほか1総局及び旭川鉄道管理局ほか7鉄道管理局(注4) では、1両だけの車両又は1列車の編成となっている2両以上の車両に給油、給水、給砂の作業を行う場合には、図3のように、1両ごと又は1列車ごとに給油、給水、給砂の各作業を連続して行うこととして、1両ごと又は1列車ごとに1往復時分を見込んでいる。

車両燃料等の補給作業費の積算について作業の実態に即したものにするよう改善させたものの図3

 しかしながら、給油、給水、給砂の各作業に使用する給油、給水装置及び給砂用砂の貯砂場は作業現場近くに設置されており、また、補給作業は車両が機関区等に入区してから出区するまでの間(検査等に要する時分を除く。以下「作業可能時分」という。)に行われているが、上記2総局及び26鉄道管理局における給油、給水、給砂の各作業を連続して行うこととした場合の車両ごと又は列車ごとの補給作業時分はほとんどの場合作業可能時分に比べて相当に短くなっていて、いずれの機関区等においても同一時間帯に複数の車両及び列車について補給作業が可能な状態となっている場合が大部分であると認められるから、このような場合には、図4のように、これらの車両及び列車を組み合わせ連続して補給作業を行うこととすべきであると認められる。

車両燃料等の補給作業費の積算について作業の実態に即したものにするよう改善させたものの図4

 したがって、往復時分等の算定に当たっては、往復時分を給油、給水、給砂の各作業ごとに見込んだり、1両又は1列車ごとに見込んだりするのではなく、機関区等の構内で連続して行うことが可能な車両及び列車について効率的に補給作業を行うこととして算定すベきであると認められる。
 いま、仮に前記の37件について、上記により往復時分等を求めて所要人工を算定したとすれば、車両1両当たりの単価は低減し、給油、給水、給砂の各作業に係る積算額8億6922万余円を約1億3900万円低減できたと認められる。

 このような事態を生じたのは、積算標準において、往復時分等の算定の取扱いが明確に規定されていなかったことによると認められる。

 上記についての本院の指摘に基づき、日本国有鉄道では、60年10月に積算標準の一部を改正して、往復時分等の算定の取扱いを作業の実態に即した合理的なものにするとともに、「燃料取扱作業予定価格積算標準の一部改正について」の通達を発し、60年度の契約単価の確定時から適用することとする処置を講じた。

 (注1)  北海道総局ほか1総局及び釧路鉄道管理局ほか25鉄道管理局 北海道、九州両総局及び釧路、旭川、青函船舶、盛岡、秋田、仙台、新潟、高崎、水戸、千葉、東京北、東京南、東京西、長野、静岡、名古屋、金沢、大阪、天王寺、福知山、米子、岡山、広島、大分、熊本鹿児島各鉄道管理局

 (注2)  青函船舶鉄道管理局ほか2鉄道管理局 青函船舶、秋田、天王寺各鉄道管理局

 (注3)  釧路鉄道管理局ほか14鉄道管理局 釧路、盛岡、水戸、千葉、東京北、東京南、東京西、長野、静岡、名古屋、金沢、福知山、広島、大分、鹿児島各鉄道管理局

 (注4)  北海道総局ほか1総局及び旭川鉄道管理局ほか7鉄道管理局 北海道、九州両総局及び旭川、仙台、新潟、高崎、大阪、米子、岡山、熊本各鉄道管理局