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  • 昭和59年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第1 日本国有鉄道|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

電車線路等のがいしの絶縁を強化するシリコーン・コンパウンド塗布工事の施行方法を適切なものに改善させたもの


(4) 電車線路等のがいしの絶縁を強化するシリコーン・コンパウンド塗布工事の施行方法を適切なものに改善させたもの

科目 (損益勘定) (項)保守費 (項)営業費
部局等の名称 新幹線総局東京、静岡、名古屋、大阪各電気所
工事名 東京支所管内一部シリコン・コンパウンド塗替及び塗布工事外12件
工事の概要 電車線路等のがいしに塩分等が付着して絶縁効果が低下することを防止するため、がいしの表面にシリコーン・コンパウンドを塗布する工事
工事費 357,010,680円(このほか支給材料代46,264,550円)
請負人 東光電気工事株式会社ほか4会社
契約 昭和59年4月及び5月 指名競争契約

 上記の各工事において、がいしの絶縁効果が低下することを防止するためのシリコーン・コンパウンド塗布工事の施行方法が適切でなかったため、工事費等が約6140万円不経済になっていた。
 このような事態を生じたのは、シリコーン・コンパウンドの塗布範囲及び塗布周期についての標準が明確に定められていなかったり、経済的な塗布方法についての検討が十分でなかったりしていることなどによるもので、標準を明確に定めるなどして施行方法を適切なものに改める要があると認められた。
 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

 日本国有鉄道新幹線総局(以下「総局」という。)では、東海道新幹線の電車線路及び変電所に設置された電気絶縁用のがいしに塩分又はじんあい等が付着して絶縁効果が低下することを防止するため、その表面に、シリコーン・コンパウンド(以下「シリコン」という。)を塗布する工事を毎年多数施行している。

 上記のシリコン塗布工事は、東海道新幹線開業当時、海岸沿線の電車線路のがいしに塩分等が付着して絶縁効果が低下するおそれがあることから、総局では、試験用のがいしを設置して塩分及びじんあい等の付着による汚損の状況を調査し、その結果により、シリコンの塗布範囲、塗布周期及び塗布方法について標準を定め、各電気所を指導してきている。

 この標準によれば、塗布範囲については、がいしの個数を増加するなどして絶縁を強化する工事が行われた区間については海岸から1.5km以内、絶縁を強化する工事が行われていない区間については海岸から3km以内とし、また、塗布周期については、絶縁を強化する工事が行われていない区間について海岸から1.5km以内は1年に1回、1.5kmから3kmまでは2年に1回とすることを原則としているが、河川の周辺で風の通り道となって塩分が付着したり、工業地帯等でじんあい等によって汚損したりするなどの特別の事情がある区間の塗布範囲及び塗布周期については、各電気所の判断にゆだねることとしている。

 しかして、総局管内の東京、静岡、名古屋、大阪各電気所で、昭和59年度中に施行したシリコン塗布工事等13工事、工事費計357,010,680円及び支給材料代計46,264,550円について、その施行状況を検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

 すなわち、電車線路のシリコン塗布工事等6工事(工事費267,625,400円、支給材料代30,569,044円)において、絶縁を強化する工事が行われた区間で海岸から1.5km以上、同工事が行われていない区間で海岸から3km以上離れて設置されているがいし29,774個を特別の事情がある区間にあるがいしとして、1年に1回(15,366個)又は2年に1回(14,408個)塗布工事を施工していたが、シリコンの汚損及び劣化状況を総局と立会いのうえ検討したところ、このうち、1年に1回塗布しているがいしについては、うち1,244個は塗布の要がなく、うち4,979個は2年に1回塗布すれば足りると認められ、また、2年に1回塗布しているがいしについては、うち278個は塗布の要がなく、うち6,304個は3年に1回塗布すれば足りると認められた。

 また、このほかに、変電所のシリコン塗布工事等7工事(工事費89,385,280円、支給材料代15,695,506円)において変電所28箇所におけるがいしの塗布(計6,008m2 )については、前記標準により、手塗りで塗布することとしているが、変電所のがいしは、施行箇所ごとにまとまっていて、しかも、大きいものが多いことから、上記塗布面積のうち、現場の状況から機械施工が困難な2箇所(計106m2 )を除く、26箇所の計5,902m2 については、塗布機械により施工することが可能であると認められた。

 したがって、上記の各工事の施行に当たり、電車線路については、塗布範囲及び塗布周期を特別の事情がある区間のシリコン汚損等の状況からみて適切なものとし、変電所については、能率のよい塗布機械により施工することとしたとすれば、本件工事費等は電車線路で工事費約3170万円、支給材料代約370万円、変電所で工事費約2100万円、支給材料代約490万円、合計約6140万円が節減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、新幹線総局では、60年10月に、シリコン塗布工事の施行方法について適切な標準を定めた「シリコーン・コンパウンドの塗布方法等について」を各電気所等あてに発するとともに、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。