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  • 昭和59年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第1 日本国有鉄道|
  • 特に掲記を要すると認めた事項

東北新幹線建設に伴い取得した都市施設用地について


東北新幹線建設に伴い取得した都市施設用地について

科目 (工事勘定) (項)新幹線建設費 (項)建設関連利子
部局等の名称 東京第二、東京第三両工事局
取得した物件の概要 東北新幹線の沿線の4市内で取得した都市施設用地約275,000m2
(昭和59年度末)
取得費用 約554億4600万円

 上記部局では、東北新幹線の建設に伴い、本線用地及び工事用道路用地のほかに沿線の大宮、与野、浦和及び戸田の各市の要望に基づき、各市が将来、道路、公園等として利用したいとしている用地(以下「都市施設用地」という。)を取得しているが、取得費用の負担について各市との協議が進展しないため、多額の費用を投じて取得した都市施設用地は、利用されないばかりでなく、その取得費用の未回収の状態が継続することになり、しかも、建設利息の負担も累増している。

(説明)

 日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)では、東北新幹線(以下「新幹線」という。)建設用地取得の際、新幹線及び埼京線の本線用地並びに工事用道路用地(以下「本線用地等」という。)のほか、大宮市並びに与野、浦和及び戸田の3市(以下「県南3市」といい、大宮市を合わせ「関係4市」という。)の要望により、都市施設用地を本線沿いの工事用道路用地の外側に沿って取得していて、昭和59年度末におけるその取得面積及び取得費用は、大宮市内では約27,400m2 約22億2300万円、また、県南3市内では約247,500m2 約532億2200万円、計約275,000m2 約554億4600万円となっている。
 しかして、これらの都市施設用地を取得するに至った経緯についてみると、

(1) 大宮市においては、46年10月に国鉄が大宮市内の新幹線建設について高架構造方式とする建設計画を発表したところ、新幹線通過に伴う騒音等の公害発生及び地域分断を理由とする地元住民の反対運動が起こり、国鉄は、大宮市及び地元住民と協議を重ねた結果、50年12月、大宮市から、新幹線に沿って将来都市施設の設定を計画しているので、工事用道路用地の外側に幅16mの用地を国鉄が本線用地等と併せて取得されたい、また、その取得に要する費用負担については別途協議とされたいとの要望があったこと、

(2) 県南3市においては、当初の新幹線建設計画の埼玉県南部ルートが地下構造方式から、48年3月に高架構造方式に変更される案が提示されたのを受けて、公害発生等を理由とする地元住民の強い反対運動が起こり、国鉄は、県南3市及び地元住民と協議を重ねた結果、55年9月、埼玉県及び県南3市から、新幹線及び埼京線に沿って将来、道路、公園等の都市施設の設定を計画しているので、工事用道路用地の外側に幅20mの用地を国鉄が本線用地等と併せて取得されたい、また、その取得に要する費用負担については別途協議とされたいとの要望があったことによるものである。

 この要望に対して、国鉄は、新幹線建設に伴う協議を重ねてきた経緯及び建設工事の円滑な進ちょく等を配慮して、大宮市については50年12月、県南3市については56年3月、それぞれ本線用地等と同時に都市施設用地を取得することを了承し、その取得に要する費用負担については、将来、関係4市と有償譲渡の協議を行うこととして、国鉄の費用で先行取得することとしたものである。

 国鉄では、都市施設用地の費用負担についての協議を関係4市に申し入れてきたが、大宮市については、58年3月、同市の将来計画を勘案し、都市施設用地の取扱いについて協議したいとの回答があっただけで、具体的な進展はない状況である。また、県南3市については、協議が進展しなかったため、57年3月に埼玉県を通じて協議した結果、58年1月に同県から、従来の交渉要望等の経緯を踏まえ、県南3市と協議を進められたいとの通知があったので、58年1月から59年5月にかけて、県南3市に対し、都市施設用地は有償で譲渡することとして、その取得に要した費用の負担については協議のうえ別途処理したいとの通知をしたところ、59年6月から12月にかけて、県南3市から、都市施設用地の取扱いについて引き続き協議したい旨の回答があっただけで、具体的な進展が全くみられない状況である。

 しかして、国鉄は、その後、埼京線が60年9月に開業の予定となったことから、同年7月に県南3市内8駅の暫定駅前広場の整備に係る都市施設用地の一部約8,200m2 (都市施設用地全体の3%に相当)について、全体から切り離して有償譲渡することとする協定を締結(価格は61年3月までに決定することとなっている。)しているものの、大部分の都市施設用地約266,800m2 については、その後においても何ら実質的な協議を行うことができない状況のままとなっている。

 このような事態となったのは、国鉄において、新幹線上野開業を目途にした建設工事の進ちょく状況から用地の取得が工事工程上の急務であったため、費用負担については別途協議とするとの関係4市の要望を受け入れ、費用負担についての明確な取決めをしないまま、都市施設用地を先行取得することとし、その後も、関係4市との間に工事施行に伴う各種の設計協議等の問題が絡んでいることもあって、この用地問題について強く交渉を進めることができなかったこと、及び国鉄が有償譲渡についての協議に応ずるよう再三にわたって申し入れてきたにもかかわらず、関係4市がこれに応じなかったことによると認められる。

 上記のような状況がこのまま推移すると、取得した都市施設用地が長期間にわたり利用されないばかりでなく、投下資金約554億4600万円が未回収の状態が継続することとなり、しかも、その建設利息も約122億1400万円(うち59年度分約41億6700万円)と多額に上っていることに加えて、更に今後も引き続き毎年負担することになる。