ページトップ
  • 昭和59年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第2 日本電信電話公社|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

委託公衆電話について効率的な設置及び適切な管理を行って収支改善を図るよう改善の処置を要求したもの


委託公衆電話について効率的な設置及び適切な管理を行って収支改善を図るよう改善の処置を要求したもの

科目 (損益勘定) (項)電話収入 (項)雑収入 (項)給与其他諸費
(項)営業費 (項)保守費 (項)管理共通費
(項)利子及債務取扱諸費 (項)資本勘定へ繰入
部局等の名称 日本電信電話公社
委託公衆電話の概要 収益を上げることを目的として設置している第二種公衆電話で部外者に管理を委託しているもの
委託公衆電話の設置数 667,992個(昭和59年11月現在)
委託公衆電話に係る収入及び支出(推計額) 収入 861億9320万余円 ( 昭和59年度 )
支出 1315億9146万余円 ( )

 第二種公衆電話は、収益を上げることを目的として設置されているものであるが、その大部分を占める委託公衆電話のうちには損益分岐点を下回っているものが多く、大幅な支出超過となっていて、これが公衆電話事業全体の収支を悪化させる要因となっている。
 この要因は一般加入電話の著しい普及及び終日利用が可能なボックス形公衆電話等の増設などにより委託公衆電話の利用が相対的に低下してきていることによると認められるが、その設置及び管理が適切でないため利用度の低いものが多数見受けられる。
 したがって、委託公衆電話の効率的な設置及び適切な管理を行って、収支の改善を図る要があると認められる。

 上記に関し、昭和60年11月28日に日本電信電話株式会社(60年4月1日に日本電信電話公社の一切の権利義務を承継。)社長に対して改善の処置を要求したが、その全文は以下のとおりである。

 委託公衆電話の設置及び管理について

 貴会社では、不特定多数の者に戸外における通信手段としての利用に供するため多数の公衆電話を設置しており、昭和59年度末現在の施設数は934,926個、同年度中の公衆電話料金収入は1615億0533万余円となっている。この公衆電話は街頭用公衆電話と店頭用公衆電話とに大別され、街頭用公衆電話としては、ボックス形公衆電話(黄電話及び青電話)、卓上形公衆電話(黄電話及び青電話)及びカード公衆電話があり、また、店頭用公衆電話としては100円赤電話及び10円赤電話がある。

 これらの公衆電話の設置については、それぞれ立地条件、利用条件等を勘案して設置することとしており、社会生活上の安全性及び戸外における最低限の連絡手段を確保することを目的とした第一種公衆電話と、利用度を高めてより多くの収益を上げることを目的とした第二種公衆電話とに区分して設置することとしている。このうち、第一種公衆電話は、公共的見地から市街地にあっては500m四方、その他の地域にあっては1km四方の範囲内に1個は設置することとし、また、第二種公衆電話は、多くの人の利便に供して収益を上げるよう、機種別に試算した1個当たりの損益分岐点(注) を標準として利用度に応じて設置することとしており、これら公衆電話の設置施設数は59年11月現在で、第一種公衆電話137,181個、第二種公衆電話783,922個となっている。また、公衆電話の管理については、第一種及び第二種の公衆電話のうちボックス形公衆電話及びカード公衆電話は貴会社自らが管理を行い、第一種及び第二種の公衆電話のうち街頭用の卓上形公衆電話及び店頭用公衆電話は部外者に管理を委託してその委託手数料を支払っている。これらのうち、第二種公衆電話で部外者に管理を委託しているもの(以下「委託公衆電話」という。)の施設数は、59年11月現在で667,992個となっている。

 しかして、委託公衆電話の設置及び管理の実態について調査したところ、次のような事態が見受けられた。
 すなわち、貴会社では、毎年5料金月及び11料金月の2回にわたり公衆電話の利用状況を全国的に取りまとめているが、この調査結果により委託公衆電話の利用状況をみると、損益分岐点を下回っている施設数が59年5料金月で555,861個(委託公衆電話施設数の83.1%)、59年11料金月で554,371個(同82.9%)にも上っており、なかには、収入が委託公衆電話の受託者に支払う委託手数料(委託基本手数料(卓上形電話は900円、店頭用電話は1,000円)と度数手数料(通話料の15%)の合計額)の額にも満たないものが多数含まれている。そして、本院において、前記の調査結果に基づいて収入額を、機種別損益分岐点の額を基準として支出額をそれぞれ試算したところ、59年度は収入額が861億9320万余円であるのに対し、支出額は1315億9146万余円で差引き453億9826万余円の支出超過となっていて、その収支率は152.6%となっている状況であった。
 このような事態となっているのは、過去の一般加入電話の普及が低かった時期においてこれを補完するためタバコ店、雑貸店等の店頭、農村集落の中心部に公衆電話を積極的に増設してきたが、近年一般加入電話が著しく普及していること、貴会社において利用者へのサービス向上を図るため終日利用が可能なボックス形公衆電話等の設置を促進してきたことなどによって委託公衆電話の利用が相対的に低下したことによると認められる。
 そして、利用度が低い委託公衆電話の設置及び管理状況についてみると、

〔1〕 ボックス形公衆電話等を設置するに当たって周辺の委託公衆電話との調整を十分行わなかったため利用が低下しているもの

〔2〕 低利用となっていた委託公衆電話の利用増を図るための設置替え又は機種替えに当たって検討が十分でなかったため依然として低利用となっているもの

〔3〕 休業等受託者の都合により長期間利用されないままとなっているのにこれを確認していないもの

〔4〕 飲食店、喫茶店等で屋内に設置していて一般利用者が利用し難いものとなっているもの

〔5〕 一般加入電話に加入していない受託者が公衆電話を自らの居宅内等で専用に供しているなどのため一般利用者が利用できないものなどが見受けられる。

 上記のように、収益を上げるため設置している第二種公衆電話のうち委託公衆電話について、前記のとおり損益分岐点を下回っているものが多数に上り大幅な支出超過となり、ひいては公衆電話事業全体の収支を悪化させる要因となっていて、早急に適切な対応策を講じないまま推移すると今後も収支の均衡を図ることができない事態が継続すると認められる。
 ついては、今後、委託公衆電話の設置及び管理については、その設置状況、利用状況等を的確に把握して調査検討を十分に行うとともに受託者の管理が適切でないものについてはその管理について指導を十分に行うなど個別の管理を強化し、収益性の向上に必要な具体的対策を講ずるほか、特に、1箇月当たりの収入額が1,000円以下で委託手数料相当分にも満たないものについては早急に見直しを行うなどし、もって、委託公衆電話の効率的な設置及び適切な管理を行って、収支改善を図る要があると認められる。
 よって、会計検査院法第36条の規定により、上記の処置を要求する。

 (注)  機種別の損益分岐点 公衆電話1個当たりの経費の平均支出額を機種別に試算したもの

(単位:千円)

機種 街頭用 店頭用
ボックス形 卓上形 100円
赤電話
10円
赤電話
黄電話 青電話 黄電話 青電話
金額/月 30 20 25 15 25 10

 (55年度決算により試算されたもの)