ページトップ
  • 昭和59年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第6 首都高速道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

極太径異形棒綱の加工組立費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


(1) 極太径異形棒綱の加工組立費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (款)業務費 (項)高速道路建設費 (項)負担金等受入建設費
部局等の名称 首都高速道路公団
工事名 BT344工区高架橋下部構造新設工事ほか5工事
工事の概要 高速道路建設工事の一環として、高架橋の基礎構造物等を築造する工事
工事費 23,275,000,000円(当初契約額22,955,000,000円)
請負人 鹿島・大成BT344下部建設工事共同企業体ほか2共同企業体及び1会社
契約 昭和57年9月〜59年8月 指名競争契約又は随意契約

 上記の各工事において、極太径異形棒鋼の加工組立費の積算(積算額10億7448万余円)が適切でなかったため、積算額が約9000万円過大になっていた。
 このように積算額が過大になっているのは、極太径異形棒綱の加工組立作業の実態が積算基準に反映されていなかったことによるもので、作業の実態に即した積算をする要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)
 首都高速道路公団(以下「公団」という。)では、高速道路等の建設工事を毎年多数実施しているが、このうち、昭和59事業年度に施行している高架橋基礎等の新設工事6工事(工事費総額232億7500万円)について検査したところ、次のとおり、直径50.8mmの極太径異形棒綱(以下「棒綱D51」という。)の加工組立費の積算について、適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記各工事は、高速道路建設工事の一環として施行しているもので、高架橋の基礎構造物等の築造が主体となっており、いずれも、大規模な鉄筋コンクリート構造物であるため主鉄筋として棒鋼D51を多量に使用する設計となっている。そして、この棒鋼D51の加工組立費の積算に当たっては、公団が54年に制定した工事設計積算基準・土木編(以下「積算基準」という。)の鉄筋加工組立歩掛かり等を適用して、1t当たりの単価(ロス込み材料費95,010円から99,280円を含む。)を146,781円から160,583円と算定し、上記6工事において、総重量6,926tで総額10億7448万余円としていた。

 しかして、積算基準における棒鋼D51の加工組立歩掛かりは、鉄筋の加工作業を現場で行うことを前提として公団が定めた径16mmから32mmの鉄筋(以下「普通径鉄筋」という。)の加工組立歩掛かりを参考に、棒鋼D51は径が太いため単位重量当たりの本数が少ないことから、1t当たりの作業量は低減するとして、普通径鉄筋の歩掛かりの80%程度として定められているものである。

 しかしながら、加工組立の実態を調査したところ、

ア 棒綱D51は大規模構造物の主鉄筋に使用されるものであるため、定尺寸法の製品をそのまま使用することが多く、その加工度合いを設計図についてみると、切断加工が必要となる割合は、約40%(重量比)、曲げ加工箇所数は1t当たり3箇所程度となっており、標準的な高架橋に使用する普通径鉄筋の場合がそれぞれ55%程度及び90箇所程度であるのに対し、著しく低減していること、

イ その加工作業も、重量が10mのもので159kgと極めて重く現場での作業が困難であることなどのため、近年、設備の整っている鉄筋メーカー等の工場において、あらかじめ設計図の寸法に合わせて切断及び曲げ加工を行っており、加工度合いが低いこと

から、棒綱D51の加工費は、切断及び曲げ加工の1箇所当たり単価が普通径鉄筋に比べて高くなっていることを考慮しても1t当たり7,500円(材料ロスを含む。)程度で足り、積算基準により算出される1t当たり22,000円程度に比べて著しく低額となっている状況であった。

 そして、加工済の棒鋼D51を工事現場に搬入した後の組立作業の歩掛かりについては、1t当たり鉄筋工1.3人、普通作業員0.6人程度となっていて、積算基準の歩掛かり1t当たり鉄筋工1.0人、普通作業員0.7人を若干上回るにすぎない状況であった。

 したがって、上記各工事において棒鋼D51の加工組立費について作業の実態を考慮して積算したとすれば、積算額を約9000万円低減できたと認められる。 上記についての本院の指摘に基づき、首都高速道路公団では、60年10月に積算基準の棒鋼D51の加工組立歩掛かり等を適正なものに改め、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。