科目 | (款)業務費 (項)高速道路建設費 (項)受託関連街路建設費 |
部局等の名称 | 第二、第三両建設部、神奈川建設局及び東京保全部 |
契約名 | 移転補償契約 16件 |
補償の概要 | 高速道路等の建設に伴い支障となる建物の借家人に対して、新たに建物を賃借するために要する一時金、家賃差額等の費用を補償するもの |
補償額 | 196,596,767円 |
契約の相手方 | 三洋水路測量株式会社ほか4会社及び松田某ほか10名 |
契約年月 | 昭和57年6月〜60年2月 |
上記の各補償において、借家人に対する一時金及び家賃差額に係る補償額の算定方法が適切でなかったため、補償額が約5200万円過大になっていた。
このように補償額が過大になっているのは、補償額の算定方法が、補償対象物件の所在地域における一時金の取引慣行や家賃の実態に即したものとなっていないことによるもので、取引慣行等に即した補償額の算定を行う要があると認められた。
上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。
(説明)
首都高速道路公団(以下「公団」という。)では、高速道路等の建設に伴う移転補償を毎年多数実施しているが、このうち、前記各部局が昭和57年度から59年度までの間に契約し、支払っている借家人に対する移転補償16件(補償対象23物件、総額1億9659万余円)について検査したところ、次のとおり、立退きによって新たに建物を賃借するに当たり、契約締結時に支払う一時金の費用(以下「一時金」という。)及び従前の建物と新たに賃借する建物との家賃の差額(以下「家賃差額」という。)に係る補償額の算定方法が適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記の各補償は、高速道路等の建設に伴い支障となる住宅(木造の共同住宅等を除く。)、店舗・事務所、工場、倉庫の借家人に対し、「首都高速道路公団の事業の施行に伴う損失補償基準を定める規程」(昭和38年規程第8号)第26条の規定に基づき定められた「首都高速道路公団の事業の施行に伴う損失補償基準細則」(昭和51年首公用第401号。以下「細則」という。)及び「首都高速道路公団の事業の施行に伴う損失補償基準細則の運用」(昭和51年首公用第402号。以下「細則の運用」という。)に従って、一時金については、土地及び建物価格に一定率を乗ずる算定方法により計96,024,648円と算定し、また、家賃差額については、土地及び建物価格に一定率を乗じて求めた月額家賃と現在家賃との差額に基づき算定する方法により計20,219,760円と算定し、その他の経費として算定した計80,352,359円とを合わせて、合計196,596,767円を補償したものである。
しかしながら、近年、賃貸取引の増大や不動産仲介市場の充実によって、上記の各補償対象物件が所在する地域においては、一時金の取引慣行の把握や賃貸事例の収集が可能になってきており、
ア ー時金の場合、前記の細則及び細則の運用に基づき算定された補償額を月数に換算したものと取引慣行に基づく補償額の月数とを比較したところ、例えば、公団が補償した7件(12物件)が所在する東京都区部の北東地域においては、店舗・事務所(4物件)について公団算定の平均41箇月に対し取引慣行が24箇月程度、住宅(6物件)について平均21箇月に対し4箇月程度、倉庫(2物件)について平均24箇月に対し7箇月程度となっているなど、上記16件の補償すべてについて公団算定の一時金は当該地域における取引慣行に比べて著しく高額になっていて、約6400万円過大になっていると認められた。
イ 家賃差額の場合、補償額の算定の基となった公団算定の家賃と賃貸事例から比較算定して求めた家賃とを比較すると、相当の開差を生じており、その結果、公団算定の家賃差額は、賃貸事例を基とした家賃差額に比べて上記16件の補償のうち2件が高額、12件が低額になっていて、総額では約1200万円過小になっていると認められた。
したがって、本件各補償について、当該地域の取引慣行に即した一時金の月数や賃貸事例を比較算定して求めた家賃を基にして一時金及び家賃差額の補償額を計算したとすれば、本件借家人に係る移転補償額は約5200万円低減できたと認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、首都高速道路公団では、一時金の取引慣行及び家賃の実態について調査を行い、60年8月に細則及び細則の運用を改め、借家人に対する一時金及び家賃差額に係る補償額の算定方法を取引慣行等に即した適切なものとする処置を講じた。