ページトップ
  • 昭和59年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第8 阪神高速道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

借家人に対する補債額の算定方法を適切なものに改善させたもの


借家人に対する補債額の算定方法を適切なものに改善させたもの

科目 (款)業務費 (項)高速道路建設費 (項)高速道路改築費
部局等の名称 大阪第一、第二、第三各建設部及び大阪管理部
契約名  立退補償契約 90件
補償の概要 高速道路等の建設に伴い支障となる建物の借家人に対して、新たに建物を賃借するために要する一時金、家賃差額等の費用を補償するもの
補償額 265,746,100円
契約の相手方 株式会社日本メンテナンスサービスほか3会社及び小瀬某ほか84名
契約年月 昭和57年4月〜59年12月

 上記の各補償において、借家人に対する一時金及び家賃差額に係る補償額の算定方法が適切でなかったため、補償額が約5800万円過大になっていた。
 このように補償額が過大になっているのは、補償額の算定方法が、補償対象物件の所在地域における一時金の取引慣行や家賃の実態に即したものとなっていないことによるもので、取引慣行等に即した補償額の算定を行う要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)
 阪神高速道路公団(以下「公団」という。)では、高速道路等の建設に伴う立退補償を毎年多数実施しているが、このうち、前記各部が昭和57年度から59年度までの間に契約し、支払っている借家人に対する立退補償90件(補償対象104物件、総額2億6574万余円)について検査したところ、次のとおり、立退きによって新たに建物を賃借するに当たり、契約締結時に支払う一時金の費用(以下「一時金」という。)及び従前の建物と新たに賃借する建物との家賃の差額(以下「家賃差額」という。)に係る補償額の算定方法が適切でないと認められる点が見受けられた。

 すなわち、上記の各補償は、高速道路等の建設に伴い支障となる住宅、店舗・事務所、工場・倉庫の借家人に対し、「阪神高速道路公団の事業用地の取得に伴う損失補償規程」(昭和38年規程第1号)第24条の規定に基づき定められた「阪神高速道路公団の事業用地の取得に伴う損失補償規程の実施要領」(昭和38年理事長決裁。以下「実施要領」という。)及び実施要領の運用についての本社から各建設部等への指示に従って、一時金については、土地及び建物価格に一定率を乗ずる算定方法により計149,793,197円と算定し、また、家賃差額については、土地及び建物価格に一定率を乗じて求めた月額家賃と現在家賃との差額に基づき算定する方法により計59,582,424円と算定し、その他の経費として算定した計56,377,600円とを合わせて、契約額を合計265,746,100円として補償したものである。

 しかしながら、近年、賃貸取引の増大や不動産仲介市場の充実によって、上記の各補償対象物件が所在する地域において、一時金の取引慣行の把握や賃貸事例の収集が可能になってきており、

ア 一時金の場合、前記の実施要領及びその運用についての本社指示に基づき算定された補償額を月数に換算したものと取引慣行に基づく補償額の月数とを比較したところ、例えば、公団が補償した21件(23物件)が所在する大阪市南部地域においては、店舗・事務所(8物件)について公団算定の平均33箇月に対し取引慣行が21箇月程度、住宅(6物件)について平均26箇月に対し13箇月程度、工場・倉庫(9物件)について平均21箇月に対し9箇月程度となっているなど、上記90件の補償すべてについて公団算定の一時金は当該地域における取引慣行に比べて著しく高額になっていて、約8800万円過大になっていると認められた。

イ 家賃差額の場合、補償額の算定の基となった公団算定の家賃と賃貸事例から比較算定して求めた家賃とを比較すると、相当の開差を生じており、その結果、公団算定の家賃差額は、賃貸事例を基とした家賃差額に比べて上記90件の補償のうち14件が高額、残り76件が低額になっていて、総額では約3000万円過小になっていると認められた。

 したがって、本件各補償について、当該地域の取引慣行に即した一時金の月数や賃貸事例を比較算定して求めた家賃を基にして一時金及び家賃差額の補償額を計算したとすれば、本件借家人に係る立退補償額は約5800万円低減できたと認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、阪神高速道路公団では、一時金の取引慣行及び家賃の実態について調査を行い、60年11月に実施要領の運用に関する通達を定め、借家人に対する一時金及び家賃差額に係る補償額の算定方法を取引慣行等に即した適切なものとする処置を講じた。