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上記の各部局において、造成された宅地を長期間にわたり保有しているため、投下した事業費がその効果を発現していないものが166,181m2
あり、これに係る造成原価は73億3587万余円、在庫利息は36億8887万円の多額に上っている。
このような事態を生じているのは、住宅・都市整備公団において、保有している未処分地についての認識が十分でなく、その処分について適切な対策が講じられていなかったことなどによると認められる。
したがって、公団において未処分地についての適切な対策を講じ、各支社等に対する指導を強化するなどして未処分地の速やかな処分を図り、投下した多額の事業費がその効果を発現するよう措置を講じる要があると認められた。
上記に関し、昭和60年12月3日に住宅・都市整備公団総裁に対して是正改善の処置を要求したが、その全文は以下のとおりである。
貴公団では、住宅事情の改善を特に必要とする大都市地域等において宅地の大規模な供給を行うことなどを目的に土地区画整理事業及び新住宅市街地開発事業を実施しており、貴公団がこれらの事業により昭和59年度末までに供給した造成宅地は5776万余m2 に上っている。
そして、貴公団では、造成宅地について、土地区画整理事業の場合、住宅・都市整備公団法(昭和56年法律第48号)等の規定に基づき、あらかじめ造成宅地の存する地方公共団体等の意見を聴取のうえ、住宅用地、教育施設用地、公共施設用地等の用途に区分して、全体処分計画及び年間処分計画を作成し、一般分譲等の方法によって処分を行っており、また、新住宅市街地開発事業の場合、新住宅市街地開発法(昭和38年法律第134号。以下「新住法」という。)の規定に基づき、公共施設の管理者等に協議のうえ、集合住宅用地、独立住宅用地、業務施設用地等の用途に区分してそれぞれの処分方法、処分価額等を定めた処分計画を作成し、一般分譲等の方法によって処分を行っている。
しかして、事業が完了した地区における造成宅地の状況を本院が調査したところ、5年以上(59年度末現在)の長期にわたり保有していて、募集方法及び用途の変更を検討するなどすれば処分の促進が図れると認められるもの(以下「未処分地」という。)が、戸頭地区ほか20地区において、166,181m2 見受けられ、これに係る造成原価は73億3587万余円、在庫利息(注1) は36億8887万円の多額に上っているほか、管理経費も59年度分だけで7242万余円となっている。
しかし、多額の事業費を投下した造成宅地を長期にわたり保有しているこれらの事態は、良質で低廉な宅地を供給するという貴公団の目的が達成されないばかりか、在庫利息及び管理経費が累増することとなり、適切とは認められない。
上記の事態を態様別に示すと次のとおりである。
(1) 公共事業関連の代替用地として長期間保有しているもの
地区数 |
(注2)
10地区 |
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面積 | 18,087m2 | ||
造成原価 | 3億7626万余円 | ||
在庫利息 | 2億5432万円 | ||
管理経費 | 1788万余円 | (59年度分。以下同じ。) |
上記の未処分地は、地方公共団体から公共事業関連の代替用地として要請を受けているもののその必要画地数や処分時期が明確でなかったなどのため、処分に至らずそのまま保有しているもの、又は一般公募後に未契約となった宅地、買戻した宅地等を適切な募集方法を検討することもなく公共事業関連の代替用地として保有しているものである。
(2) 旧地権者に対する特別分譲用地であるため他用途に処分できないとしてそのまま保有しているもの
地区数 |
(注3)
3地区 |
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面積 | 27,213m2 | ||
造成原価 | 18億3246万余円 | ||
在庫利息 | 8億4932万円 | ||
管理経費 | 774万余円 |
上記の未処分地は、新住法等の規定に基づき、用地買収に応じた者に特別分譲することを予定しているものであるが、特別分譲を要請する者と価額等の譲渡条件について協議が整わないなどにより、用途の変更ができないまま保有しているものである。
(3) 個人分譲宅地としては不適当な画地であるなどとしてそのまま保有しているもの
地区数 |
(注4)
1地区 |
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面積 | 57,192m2 | ||
造成原価 | 17億9612万余円 | ||
在庫利息 | 9億4506万円 | ||
管理経費 | 2930万余円 |
上記の未処分地は、現場条件からみて個人分譲宅地としては不適当な画地であるのにその用途の検討を十分に行わないまま保有しているもの、又は一画地の面積が個人分譲宅地としては大きい(386m2 から468m2 )ため譲渡価額が高額となり、一般公募には不適当であるとして公募から除外したまま保有しているものである。
(4) そのほか施設用地等で現行の用途のままでは処分が困難なものをそのまま保有しているもの
地区数 |
(注5)
12地区 |
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面積 | 63,688m2 | ||
造成原価 | 33億3102万余円 | ||
在庫利息 | 16億4016万円 | ||
管理経費 | 1749万余円 |
上記の未処分地は、店舗、幼稚園等の用地として計画されたが、同種の施設がすでに近隣に設置されていることにより経営が困難となることが予想されるなど、施設の立地条件等の変化により用途の変更を余儀なくされているのに、需要調査が十分でなかったり、地方公共団体等との協議に日時を要したりして、用途が定まらないまま保有しているものである。
上記のような事態を生じているのは、地方公共団体から公共事業関連の代替用地について要請を受けた場合に、文書等によりその必要画地数、処分予定時期等を明確にしていなかったり、特別分譲が予定されるものについてあらかじめ旧地権者との譲渡条件が明確にされていなかったり、各地区の現場条件や地区周辺の状況等についての調査検討が十分でなかったりしていることにもよるが、基本的には、貴公団において、保有している未処分地についての認識が十分でなく、その処分について適切な対策が講じられていなかったことによると認められる。
ついては、貴公団では、上記の事態についての本院の指摘に基づき、60年10月末までに洋光台地区ほか1地区で6,351m2 の未処分地を処分し又は譲渡決定しているものの、なお戸頭地区ほか20地区において計159,829m2 を未処分のまま保有している状況であるから、本社において未処分地についての適切な対策を講じ各支社等に対する指導を強化するなどして未処分地の速やかな処分を図り、もって投下した多額の事業費がその効果を発現するよう措置を講じる要があると認められる。
よって、会計検査院法第34条の規定により、上記の処置を要求する。
(注1) 在庫利息 造成原価に60年3月末現在の借入金残高の平均年利率及び事業完了後から60年3月末までの期間を乗じ試算したもの
(注2) 10地区 戸頭(茨城県)、北小金、新検見川、東寺山、沼南台(以上千葉県)、鶴川、板橋(以上東京都)、洋光台、鳶尾、鴨志田(以上神奈川県)
(注3) 3地区 北坂戸、冨士見(以上埼玉県)、千葉北部(千葉県)
(注4) 1地区 落合(兵庫県)
(注5) 12地区 戸頭(茨城県)、平沼、冨士見(以上埼玉県)、千葉北部(千葉県)、鴨志田(神奈川県)、大山田(三重県)、八幡(京都府)、金剛(大阪府)、大久保東、落合、新多聞(以上兵庫県)、東郷(福岡県)