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  • 昭和59年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第12 社会福祉・医療事業団(医療金融公庫からの承継分を含む。)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

福祉貸付資金の交付時期を適正なものに改善させたもの


福祉貸付資金の交付時期を適正なものに改善させたもの

科目 (一般勘定)貸付金
部局等の名称 社会福祉・医療事業団(昭和60年1月1日前は社会福祉事業振興会)
貸付けの根拠 社会福祉・医療事業団法(昭和59年法律第75号)
貸付金の種類 設置・整備資金
貸付けの内容 社会福祉法人等に対する社会福祉事業施設の設置及び整備に必要な資金の貸付け
貸付件数及び金額 昭和58年度 299件 17,457,200,000円
昭和59年度 136件 7,955,800,000円
435件 25,413,000,000円

 上記の貸付けにおいて、貸付金の交付時期が早すぎたため貸付金が交付された後、借入者が実際に支払を必要とするまでの期間(以下「余裕期間」という。)が30日以上に及んでいるものが昭和58年度分約125億0070万円、59年度分約47億4960万円、計約172億5030万円に上っていた。
 このように貸付金の交付時期が早すぎて余裕期間が長期に及んでいるのは、社会福祉・医療事業団において資金の所要時期等を的確に把握することなく貸付金の交付をしていたことによるもので、速やかに貸付金の交付に関する手続等の整備を行うことにより、借入者の資金所要時期等を的確に把握する措置を講じて長期に及ぶ余裕期間の発生の防止に努める要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)
 社会福祉・医療事業団(昭和60年1月1日前は社会福祉事業振興会。以下「事業団」という。)では、社会福祉事業施設を設置又は経営する社会福祉法人等に対し、社会福祉事業施設の設置、整備又は経営に必要な資金を長期かつ低利に融通しており、その貸付額は58年度543件280億円、59年度459件273億円に上っている。そして、この貸付金の原資は主として資金運用部からの借入金(58年度258億円、59年度262億円)であり、その借入金利(58年4月から59年1月まで年7.3%、59年2月以降年7.1%)と貸付金利(原則として年4.6%、ただし最長2年の無利子期間)との差額分は国の一般会計から補助金として交付されているもので、その額は58年度92億7530万余円、59年度89億1650万余円に上っている。

 事業団では、この貸付けを行うに当たっては、社会福祉法人等の借入申込書類について、事業計画の内容が社会福祉の増進という目的に照らして適当であるかなどについて審査して貸付けを内定し、貸付内定者から提出させた工事請負等の契約書、事業実施計画書等の関係書類について必要な審査を行ったうえ貸付契約を締結することとしている。そして、その貸付金の交付は、上記の関係書類に基づいて、借入者が資金を必要とする時期及びその金額を勘案し、これにより借入者の指定する金融機関の預金口座へ振り込むこととしている。

 しかして、今回前記58、59両年度の貸付金のうち、60年9月30日までに事業完了報告書が提出された58年度分543件280億円、59年度分246件123億2570万円、計789件403億2570万円について貸付金の交付状況を調査したところ、貸付金の交付時期が早すぎたため貸付金が金融機関の借入者名義の預金口座に振り込まれた後、30日以上余裕期間のあったものが次表のとおり58年度約125億0070万円(これに係る貸付契約は299件174億5720万円)、59年度約47億4960万円(これに係る貸付契約は136件79億5580万円)の多額に上っていた。そして、これに係る貸付金利と資金運用部からの借入金利との差額分として交付された国庫補助金は58年度貸付分約1億4140万円、59年度貸付分約5070万円の多額に上っている。

余裕期間 58年度 59年度

千円 千円
30日〜59日 4,396,510 2,125,224
60日〜89日 3,695,434 1,189,458
90日〜119日 1,800,273 879,725
120日〜149日 1,189,459 229,124
150日以上 1,419,102 326,080
12,500,780 4,749,613

 この貸付金は、社会福祉事業施設の設置等の事業の実施に伴う社会福祉法人等の負担の軽減を図るために、資金運用部からの借入金等の公的資金を原資とし、国の一般会計から補助を受けて長期かつ低利の融資を行うものであるから、適正かつ効率的に使用されなければならないものであって、前記のように、貸付金が借入者に交付された後、余裕期間が長期に及んでいてこの間貸付けの目的とした事業費に充てられていないのは、適切とは認められない。

 このような事態を生じたのは、事業団では、資金の交付に当たっては、貸付業務処理基準により借入者が必要とする時期及び金額を勘案して行うこととされているのに、同基準その他の規定において借入者から事業費支払先の発行した請求書を徴して貸付金の所要時期等を確認して交付することとする具体的な手続が定められていないため、貸付契約締結に先立ち提出させた工事請負等の契約書、事業実施計画書等に記載されている予定着工時期、完了時期等に基づいて借入者の事業費の支払時期を推測し実際の資金所要時期等を把握しないまま貸付金を交付していたことによると認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、事業団では、60年10月に「福祉貸付資金交付の取扱い」に関する達を制定し、貸付金の交付に当たっては、事業費支払先の請求書を添付した借入者からの交付請求書に基づいて借入者の実際の資金所要時期等を的確に把握し、これに応じた貸付金の交付を行うこととし、同年11月から実施する処置を講じた。