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  • 昭和60年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第4 文部省|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

義務教育費国庫負担金の算定の基礎となるへき地手当等に係る級別等の指定の見直しをするよう改善の処置を要求したもの


義務教育費国庫負担金の算定の基礎となるへき地手当等に係る級別等の指定の見直しをするよう改善の処置を要求したもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)文部本省 (項)義務教育費国庫負担金
部局等の名称 北海道、京都、大阪両府、青森、秋田、埼玉、神奈川、長野、岐阜、滋賀、和歌山、島根、愛媛、沖縄各県
国庫負担の根拠 義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)
事業主体 北海道ほか13府県
国庫負担の対象 公立の小学校及び中学校並びに盲学校及び聾(ろう)学校の小学部及び中学部に要する経費のうち教職員給与費等
国庫負担対象額 1,636,701,221千円(昭和59年度)
上記に対する国庫負担金交付額 818,350,610千円(昭和59年度)
国庫負担対象額のうちへき地手当等に係る額 7,369,346千円(昭和59年度)
上記に対する国庫負担金相当額 3,684,673千円(昭和59年度)

 上記の義務教育費国庫負担金の算定の基礎の一つであるへき地手当等は、都道府県が法令で定める基準に従い条例で指定したへき地等学校に勤務する教職員に支給されるもので、その支給率は指定されたへき地等学校の種類又は級別によって異なるが、上記14道府県のへき地等学校2,570校のうち432校について検査したところ、そのうち240校が法令で定める基準より支給率の高い級別等に指定されていた。
 このような事態を生じているのは、へき地等学校の級別等の指定の要素となる交通条件その他の事項が社会的な環境の変化等に応じて変化しているのに、指定の基準を定めた法令において指定の見直しに関する規定が設けられておらず、また、文部省においてもその見直しについて各都道府県に対し適切な指導をしなかったことによると認められる。
 したがって、文部省において、へき地等学校の級別等の指定の各要素の状況の変化に対応して、適時適切に各都道府県が指定の見直しを行うよう所要の措置を講じ、もってへき地手当等に係るへき地等学校の級別等の指定の適正を期する要がある。

 上記に関し、昭和61年12月8日に文部大臣に対して改善の処置を要求したが、その全文は以下のとおりである。

 義務教育費国庫負担金の算定の基礎となるへき地手当等に係る級別等の指定の見直しについて

 貴省では、昭和59年度の公立の義務教育諸学校の教職員給与費等に係る義務教育費国庫負担金として、全国の都道府県に対して総額2兆3072億0749万余円を交付しているが、この中には、へき地手当及びへき地手当に準ずる手当(以下「べき地手当等」という。)に係る分90億8174万余円が含まれている。
 このへき地手当は、各都道府県が、へき地教育振興法(昭和29年法律第143号)の規定に基づき、へき地学校及びこれに準ずる学校(いずれも共同調理場を含む。以下同じ。)に勤務する教職員に対して支給するものである。へき地学校及びこれに準ずる学校は、各都道府県が、交通条件及び自然的、経済的、文化的諸条件に恵まれない山間地、離島その他の地域に所在する公立の小学校及び中学校並びに共同調理場(以下「学校等」という。)につき、へき地教育振興法施行規則(昭和34年文部省令第21号。以下「施行規則」という。)で定める基準に従い条例により指定することとされている。

 そしてこの指定は、当該学校等から最寄りの駅又は停留所、病院、診療所、高等学校等までの距離、当該学校等における電気、飲料水等の供給状況、交通条件、当該学校等に勤務する教員数その他諸々の要素(以下「指定の各要素」という。)ごとに、それぞれの状況に応じて点数を算定し、下表のように、それらの点数の合計点数(共同調理場については、最寄りの小学校又は中学校について算定された点数の合計点数)の区分(A)に応じてへき地学校及びへき地学校に準ずる学校に区分し、かつ、へき地学校については合計点数に応じて級別等の区分(B)に掲げる級別を付して行うこととされている。また、へき地手当の支給率(給料及び扶養手当の月額の合計額に対するへき地手当の月額の比率をいう。)は、このような級別等の区分(B)に応じて、下表の支給率(C)のように定められている。

合計点数の区分(A) 級別等の区分(B) へき地手当の支給率(C)
200点以上 へき地学校 5級 25%
160点以上199点以下 4級 20%
120点以上159点以下 3級 16%
80点以上119点以下 2級 12%
40点以上79点以下 1級 8%
35点以上39点以下

へき地学校に準ずる学校

4%

 また、へき地手当に準ずる手当も、同法の規定に基づき、〔1〕 教職員がその在勤地を異にする異動又はその勤務する学校等の移転に伴って住居を移転した場合において、当該異動先の学校等又は移転した学校等がへき地学校若しくはこれに準ずる学校又は前記の合計点数が35点には満たないが30点以上の学校等で各都道府県が条例で指定したもの(以下「特別地域の学校」という。)に該当するときに、当該教職員に対して、一定の期間4%又は2%の支給率で支給するもの、及び〔2〕 新たにへき地学校、へき地学校に準ずる学校又は特別地域の学校(以下「へき地等学校」という。)に該当することとなった学校等に勤務する教職員のうち、上記〔1〕 の教職員との権衡上必要があると認められる一定範囲の者に対して、上記〔1〕 に準じて支給するものである。
 そして、都道府県がこのへき地手当等に要する経費については、義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)の規定に基づき、都道府県が小中学校その他の公立の義務教育諸学校に要するその他の経費等とともに、一定の方法で算出される額を国が負担することとされている。

 したがって、各都道府県においてへき地等学校の種類又は級別の指定(以下「級別等の指定」という。)が適正に行われているか否かは、へき地手当等に係る義務教育費国庫負担金の額に直接に影響を及ぼすこととなる。
 しかして、59年度における全国のへき地等学校(共同調理場を除く。)6,598校のうち、北海道ほか13府県(注) のへき地等学校2,570校の一部432校に係る級別等の指定の状況について本院で調査したところ、これらの学校がへき地等学校に指定された47年又は48年当時に比べ、交通条件や電気、飲料水等の供給状況が著しく改善されたり、近くに高等学校が新設されたりなどしていて、現在では指定の各要素の状況が大幅に変化しているため、その現況に基づいて点数を計算し直してみると、上記14道府県の276校について、次のようにその合計点数が現に指定されている級別等の区分と合致していない事態が認められた。

(1) 合計点数が低下するため、へき地等学校に該当しなくなるもの 119校
(2) 合計点数が低下するため、へき地学校の級別が低下し、又はへき地学校からこれに準ずる学校に種類が変わるもの 95校
(3) 合計点数が低下するため、へき地学校又はこれに準ずる学校から特別地域の学校に種類が変わるもの 26校
(4) 合計点数が上昇するため、へき地学校の級別が上昇し、又は特別地域の学校からへき地学校又はこれに準ずる学校に種類が変わるもの 36校

 いま、仮に施行規則に定める基準に従い、指定の各要素の現況に基づき計算し直した合計点数に応じて、上記276校につき級別等の指定をし直したとすれば、59年度における上記14道府県のへき地手当等に係る国庫負担対象額73億6934万余円は70億3286万余円となり、これに係る国庫負担金相当額36億8467万余円は35億1643万余円となり、1億6824万余円の開差を生ずることとなる。
 このような事態を生じているのは、指定の各要素は社会的な環境の変化等に応じて変化するものであるのに、施行規則に級別等の指定の見直しに関する規定が設けられておらず、また、貴省においてもその見直しについて指導をしていなかったため、上記道府県において見直しを行わなかったことによるものと認められる。
 ついては、へき地手当等は、今後も引き続き国がその一部を負担していくものであり、その額も多額に上っているのであるから、上記の事態にかんがみ、貴省において、各都道府県が指定の各要素の状況の変化に対応して適時適切に級別等の指定の見直しを行うよう所要の措置を講じ、もってへき地手当等に係る級別等の指定の適正を期する要があると認められる。
 よって、会計検査院法第36条の規定により、上記の処置を要求する。

 (注)  北海道ほか13府県 北海道、京都、大阪両府、青森、秋田、埼玉、神奈川、長野、岐阜、滋賀、和歌山、島根、愛媛、沖縄各県