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  • 昭和60年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第5 厚生省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

世帯更生貸付等補助金の交付を適切に行うよう改善させたもの


(1) 世帯更生貸付等補助金の交付を適切に行うよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生本省 (項)社会福祉諸費
部局等の名称 厚生本省
補助の根拠 予算補助
交付対象 岩手県ほか21都府県
事業主体 社会福祉法人岩手県社会福祉協議会ほか21社会福祉協議会
補助事業 世帯更生資金貸付事業
事業内容 低所得世帯等に対し、資金の貸付けを行うことによりその経済的自立と生活意欲の助長促進を図り、安定した生活を営ませる事業
上記に対する国庫補助金交付額の合計 1,413,734,000円(昭和60年度)

 厚生省では、都道府県が世帯更生資金貸付事業を行う各都道府県の社会福祉協議会に対して貸付財源を補助する場合、都道府県に対し世帯更生貸付等補助金を交付しているが、貸付財源所要額を十分考慮して交付したとすれば、22都府県に対する昭和60年度の国庫補助金を約9億3300万円節減できたと認められる。
 このような事態を生じたのは、都府県からの交付申請に対する審査が十分でなかったことなどによるもので、貸付資金の所要額についての審査を充実するとともに、都府県に対する指導監督を強化するなどして、本件補助金の交付を適切に行う要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

 厚生省では、世帯更生貸付等補助金交付要綱(昭和58年7月1日厚生省社第473号厚生事務次官通知)等に基づき、都道府県が世帯更生資金貸付事業を行う各都道府県の社会福祉協議会(以下「協議会」という。)に対して貸付財源を補助する場合、都道府県に対しその補助額の10分の6相当額(昭和59年度以前は3分の2相当額)の世帯更生貸付等補助金を交付しており、60年度の交付額は26億1700万円となっている。
 この補助金は、低所得世帯等の経済的自立と生活意欲の助長促進を図るための世帯更生資金の貸付財源が不足する場合にこれを補助するもので、協議会は、毎事業年度作成する貸付事業運用計画において、年度中の貸付計画額と翌年度当初3箇月間の貸付計画額との合計額をもって貸付資金所要額とし、この貸付資金所要額に対して貸付財源となる前年度からの繰越金、年間償還元金の予定額等の合計額が不足する場合に、その不足額について都道府県に交付申請を行い、都道府県は、これに対して審査を行ったのち、厚生省に交付申請を行うものである。

 しかして、本年、北海道ほか26都府県(注1) において、58年度から60年度まで3箇年度の本件補助金の経理状況について検査したところ、岩手県ほか21都府県(注2) について、次のとおり適切でない事態が見受けられた。
 すなわち、上記22都府県の協議会では、毎年度補助金の交付申請に当たって、既往年度の貸付実績を十分考慮せず過大な貸付計画を立てたり、前年度からの繰越金を過小に計上したり、償還元金を過小に見込んだり、また、交付申請の変更に当たって年度中の貸付計画額の減額改定を行っている場合でもその減額相当分を翌年度当初3箇月間の貸付計画額に振り替えて増額したりなどして過大に補助金の交付を受けており、その結果多額の繰越金を生じていた。そして、上記各協議会における繰越金の合計額は、58年度末22億1897万余円(同年度平均貸付月額の3.45箇月分)、59年度末29億5275万余円(同4.80箇月分)、60年度末39億6532万余円(同6.57箇月分)と年々累増している状況であった。また、各協議会の貸付実績を貸付財源調達実績と対比してみると、年間貸付額が前年度からの繰越金と償還元金の合計額を下回っているものが58年度8協議会、59年度12協議会、60年度17協議会に上っていた。

 しかして、本件補助金は、毎年6月末までに交付申請を行い、7月以降の貸付財源に充当するものとして交付されることとなっているものであるから、繰越金は4月から6月までの3箇月間の貸付額から当該期間の償還元金を控除した額を保有していれば足りると認められ、ちなみに、上記各協議会における58年度から60年度までの年度当初3箇月間の貸付金から償還元金を控除した貸付資金不足額の実績をみると、いずれも年度平均貸付月額の2箇月分相当額以下となっており、したがって、繰越金はこの2箇月分相当額を保有していれば足りる状況であった。 いま、仮に、これら22協議会について、60年度の貸付実績と上記2箇月分相当額の繰越金との合計額から前年度からの繰越金と60年度の年間償還元金の合計額を控除した額に国庫補助金の補助率を乗じて交付必要額を修正計算すると、交付済みの国庫補助金14億1373万余円は4億8016万余円で足りることとなり、約9億3300万円が節減できたことになる。

 このような事態を生じたのは、(1)都府県において、協議会の貸付事業運用計画に対する審査が十分でなかったこと、(2)厚生省において、都府県に対する指導監督及び交付申請に対する審査が十分でなかったこと、(3)補助金の追加交付を申請したり、年度の後半で交付を受けたりする場合に、交付申請書等に年度貸付計画額及び実際の資金需要の審査に必要な当該年度の貸付実績表等を添付させていないなど関係書類が不備であったことなどによると認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、厚生省では、都道府県に対して、61年11月に通達を発し、協議会からの交付申請の内容を十分審査するよう指導監督を行うこととするとともに、毎年10月末に当該年度の貸付実績表等を提出させるなどして申請内容を十分審査し貸付財源として必要な額を交付することとし、また、61年度の本件補助金の追加交付に当たっては、同年度の貸付状況を調査確認したうえ必要な調整を加えて交付額を決定することとするなどの処置を講じた。

 (注1)  北海道ほか26都府県  北海道、東京都、京都、大阪両府、青森、岩手、秋田、山形、栃木、神奈川、石川、福井、岐阜、愛知、滋賀、奈良、鳥取、島根、岡山、山口、徳島、福岡、佐賀、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県

 (注2)  岩手県ほか21都府県  東京都、京都、大阪両府、岩手、秋田、山形、栃木、石川、福井、岐阜、愛知、滋賀、鳥取、島根、岡山、山口、徳島、福岡、佐賀、大分、宮崎、鹿児島各県