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  • 昭和60年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第5 厚生省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

国立結核療養所において支給する俸給の調整額を勤務実態に整合するよう改善させたもの


(2) 国立結核療養所において支給する俸給の調整額を勤務実態に整合するよう改善させたもの

会計名及び科目 国立病院特別会計(療養所勘定) (項)療養所経営費
部局等の名称 国立療養所岩木病院ほか17病院
俸給の調整額の概要 国立結核療養所において、職務の複雑、困難若しくは責任の度又は勤労の強度等勤労条件が特殊な官職を占める職員に対して支給されるもので、職員基本給に含まれている。
俸給の調整額の支給額 昭和59年度 505,666,944円
昭和60年度 542,108,181円

 上記の各部局では、職員に対し俸給の調整額を支給しているが、そのうち医師及び看護職員についてみると、一般患者を担当する者に結核患者を担当する者と同等の扱いにより調整額を支給していて、その調整額は昭和59年度で3億1626万余円、60年度で3億5211万余円に上っている。
 このような事態は、国立結核療養所については、結核患者を担当する医師等の職務の困難性等から俸給の調整が認められたものであるが、近年結核患者が減少して一般患者が増加しているにもかかわらず従前の取扱いを続けてきたことによるもので、職員の勤務実態に即した俸給の調整が行われるよう処置を講ずる要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

 厚生省で126の国立結核療養所(以下「療養所」という。)に勤務する職員に対して支給している職員基本給のなかには、一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)等の規定による調整額(以下「調整額」という。)が含まれている。
 この調整額は、職務の複雑、困難若しくは責任の度又は勤労の強度その他の勤労条件が著しく特殊な官職を占める職員の俸給を調整するもので、俸給月額の3%相当額と職務の等級に応じた定額との合計額に、職務の特殊性、難易度等によって定められている調整数(1から5)を乗じて得た額とされており、療養所に勤務する医師及び看護職員(以下「医師等」という。)については、全員が支給の対象となっている。そして、これら医師等に適用される調整数は、担当する患者の種別ごとに定められており、患者の種別は、重症心身障害児、進行性筋い縮症児、せき髄麻ひ患者及びその他の患者で、「その他の患者」の担当者については医師2、看護職員3の調整数となっていて、結核患者、一般患者のいずれを担当していても、「その他の患者」を担当する医師等として同じ調整数が適用されている。

 しかして、国立療養所岩木病院ほか17病院(注) において、「その他の患者」の調整数を適用する医師等の勤務実態及び調整額の支給状況を昭和59、60両年度について検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
 すなわち、各療養所においては、「その他の患者」として結核患者のほかに慢性難治疾患等の一般患者を多数扱っているが、この一般患者を担当する医師等の勤務実態をみると、医師は主として結核病棟以外の病棟でそれぞれ担当する一般患者の診療に従事し、看護職員は年度を通じて結核病棟と区分された一般病棟に勤務している状況であって、結核患者を担当している医師等と勤務条件において明確に区分されているのに、同じ調整数を適用して調整額を支給していた。

 しかしながら、「その他の患者」の担当の医師等に適用されている調整数は、療養所が結核を専門とし、一般患者をほとんど扱っていなかった当時に決められたもので、結核は感染しやすい疾病であって、結核患者を担当する医師等は職務に伴う感染の危険が相当高く、感染予防のために細心の注意を要するなど職務の困難性及び精神的、肉体的苦痛があるとして設けられていることからみて、俸給の調整に当たり、一般患者を担当する医師等を結核患者を担当する医師等と同じに取り扱うことは適切でないと認められた。
 いま、上記療養所の一般患者のうちに慢性難治疾患の患者も含まれていることを考慮して、仮に調整数を医師1、看護職員2として調整額を試算すると、実際に支給された調整額との間に59年度約1億1000万円、60年度約1億2000万円の開差を生じることとなる。
 なお、上記18以外の療養所においても、一般患者の入院状況からみて上記と同様の事態を生じているものと認められる。

 このような事態を生じているのは、療養所では、40年頃まで専ら結核患者を扱っていたものの、近年、結核に対する治療方法の進歩、予防対策の進展などにより、結核患者が著しく減少して一般患者が増加している状況であるのに、この事態に対応することなく従前の取扱いを続けてきたことなどによるものと認められる。

 上記についての本院の指摘に基づき、厚生省では、療養所における医師等の勤務実態を調査のろえ、関係当局と協議を行い、療養所における調整額について医師等の勤務実態に応じて従来の療養所単位の適用から病棟単位の適用に改めることとし、関係当局の規則改正を受けて62年度から実施することとする処置を講じた。

 (注)  国立療養所岩木病院ほか17病院  国立療養所岩木病院、同釜石病院、同西多賀病院、同下志津病院、同東長野病院、同北陸病院、同天竜病院、同三重病院、同宇多野病院、同近畿中央病院、同刀根山病院、同広島病院、同原病院、同西鳥取病院、同徳島病院、同高松病院、同愛媛病院、同東佐賀病院