会計名及び科目 | 国有林野事業特別会計(治山勘定) | (項)治山事業費 |
(項)北海道治山事業費 | ||
部局等の名称 | 林野庁、北海道、青森、秋田、前橋、長野、高知各営林局、旭川、北見、帯広、函館、名古屋各営林支局 | |
事業主体 | 営林局6、営林支局5、道県11、計22事業主体 | |
工事名 | 直轄事業 於札内川治山工事ほか94工事 | |
補助事業 | 郡の沢復旧治山工事ほか191工事 | |
工事の概要 | 荒廃山地を復旧し又は山地の荒廃を防止するなどのため治山施設を設置する工事 | |
工事費 | 直轄事業 4,100,064,837円 | |
補助事業 6,666,842,000円 | ||
(国庫補助金相当額 4,040,438,000円) | ||
請負人 | 直轄事業 株式会社森脇組ほか86会社等 | |
補助事業 丹羽建設株式会社ほか164会社等 | ||
契約 | 昭和60年3月〜12月 指名競争契約又は随意契約 |
上記の各工事において、谷止工等の工事費の積算(積算額直轄事業分22億0282万余円、補助事業分37億1473万余円)が適切でなかったため、積算額が直轄事業分で約6610万円、補助事業分で約1億1720万円(国庫補助金相当額約7100万円)過大になっていた。
このように積算額が過大になっているのは、治山工事の多くは現場条件や作業形態が一般の土本工事の場合と変わらないものとなってきているのに、これを積算の基準に反映していなかったことによるもので、基準を作業の実態に即した適切なものに改める要があると認められた。
上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。
(説明)
林野庁では、森林法(昭和26年法律第249号)等に基づき国の直轄事業又は地方公共団体が行う国庫補助事業として治山事業を毎年多数実施しているが、このうち、昭和60年度において北海道営林局ほか10営林局(支局を含む。以下同じ。)が施行している95工事(工事費総額41億0006万余円)及び北海道ほか10県(注)
が施行している192工事(工事費総額66億6684万余円(国庫補助金相当額40億4043万余円))について検査したところ、次のとおり、谷止工等の工事費の積算について、適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記各工事は、主として渓流荒廃地において渓床の安定、渓岸の侵食防止等のため谷止、えん堤、護岸等を設置する渓間工事であって、この工事費の積算に当たっては、直轄、補助事業とも林野庁が定めた治山事業設計標準歩掛(以下「標準歩掛」という。)により算定しているが、労務費の積算上、コンクリート打設、型枠の組立・解体等に係る労務職種については、土木一般世話役、特殊作業員、型枠工等の職種のほかに山林砂防工(労務単価9,800円から14,500円)を適用して直接工事費を直轄事業分で22億0282万余円、補助事業分で37億1473万余円と算定していた。
しかして、この山林砂防工は、治山工事が主として山間遠隔地の急傾斜地及び狭あいな谷間において施工されることが多く、これらの現場における作業内容が人力による崩壊地の法切り、土石の掘削・運搬、構造物の築造及び資材等の積込み・運搬等を行うものであるため、一般の土木工事における普通作業員(労務単価8,000円から10,500円)に比べて相当程度の技能及び高度の肉体的条件が必要であるとして設けた職種である。
しかしながら、治山工事における工事施工の作業条件等が近年変化してきており、山林砂防工を適用している上記各工事の施工の実態についてみると、そのほとんどは、
ア 現場の傾斜が緩く、比較的広い作業空間を有するものとなっていること、
イ 現場周辺には市町村道、林道等が整備され、あるいは現場まで作業員、資材及び建設機械等を搬入するための仮設道等を設けていること、
ウ 現場における作業は、機械施工が主体となっており、コンクリート打設をみても、トラックミキサ、コンクリートポンプ車等により施工されていて人力作業は補助的なものとなっていること
などその現場条件、作業形態が一般の土木工事と差異のない状況となっていて、このような現場における谷止工等の積算に当たっては、労務職種として普通作業員を適用するのが適切であり、山林砂防工を適用することとしている現行の標準歩掛は施工の実態に適合していないものと認められた。
現に、林野庁においては、これと同様な条件の現場において施工している林道工事については普通作業員を適用することとしている状況である。
したがって、上記各工事の谷止工等について、施工の実態に合わせて工事費を積算したとすれば、積算額を直轄事業分で約6610万円、補助事業分で約1億1720万円(国庫補助金相当額約7100万円)低減できたと認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、林野庁では、61年10月に、谷止工等渓間工事に適用する労務職種を施工の実態に合わせた適正なものに改め、各営林局及び地方公共団体あて通達を発し、同年11月以降積算する工事から適用することとする処置を講じた。
(注) 北海道ほか10県 北海道、岩手、福島、群馬、石川、福井、長野、静岡、高知、熊本、鹿児島各県