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  • 昭和60年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第11 建設省|
  • 不当事項|
  • 補助金

補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの


(75)−(79) 補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)建設本省 (項)都市計画事業費
(項)北海道都市計画事業費
道路整備特別会計 (項)道路事業費
(項)沖縄道路事業費
部局等の名称 北海道ほか4都県
補助の根拠 下水道法(昭和33年法律第79号)、道路法(昭和27年法律第180号)等
事業主体 県2、市2、町1、計5事業主体
補助事業 室蘭市公共下水道鷲別(日の出)下水中継ポンプ場用地取得等5事業
上記に対する国庫補助金交付額の合計 192,090,662円

 上記の5補助事業において、工事の設計又は工事費の積算が適切でなかったり、補助金を過大に受給していたりしていて、国庫補助金14,562,393円(一般会計の分8,085,520円、道路整備特別会計の分6,476,873円)が不当と認められる。これを都道県別に掲げると別表 のとおりである。

(説明)

 建設省所管の補助事業は、地方公共団体等が事業主体となって実施するもので、同省では、これらの事業主体に対して事業に要する費用について補助金を交付している。
 しかして、これらの補助事業の実施及び経理について検査したところ、前記の5事業主体が実施した下水道事業、道路事業の5事業において、工事の設計又は工事費の積算が適切でなかったり、補助金を過大に受給していたりしていた。
 いま、これらについて不当の態様別に示すと次のとおりである。

工事の設計又は工事費の積算が適切でないもの
4事業 不当と認めた国庫補助金 7,935,473円
補助金を過大に受給しているもの
1事業 不当と認めた国庫補助金 6,626,920円

(別表)

都道県名 事業 事業主体 事業費 左に対する国庫補助金 不当と認めた事業費 不当と認めた国庫補助金 摘要
千円 千円 千円 千円
(75) 北海道 室蘭市公共下水道鷲別(日の出)下水中継ポンプ場用地取得 室蘭市 28,499
(うち国庫補助対象額28,317)
16,990 11,044 6,626 補助金の過大受給
 この事業は、室蘭市公共下水道事業の一環として、昭和55年度に鷲別(日の出)下水中継ポンプ場用地856.68m2 を室蘭市土地開発公社(以下「開発公社」という。)から取得したもので、室蘭市では、その取得に当たって、開発公社が当該用地を54年3月に1m2 当たり27,000円、計23,130,360円で借入金により取得していたとし、同価格に借入金に係る支払利子相当額として3,767,661円、開発公社の事務費として事務費率を2.75%として算出した739,695円を加え用地価格を総額27,637,716円と算定し、これに補助事業に係る事務費を加えて事業費28,499,347円とし、これについて国庫補助金16,990,662円の交付を受けていた。
 しかし、実際は、本件用地は、同市が54年3月、一般会計の財源確保のため、将来公共事業を実施する場合には買い戻すことを予定して株式会社室蘭振興公社(以下「振興公社」という。)に1m2 当たり17,000円、計20,189,370円で売却した土地1,187.61m2 の一部であり、同市ではその後、公共下水道事業の実施に伴い、本件用地が必要となったため、開発公社にその取得を依頼し、開発公社では55年12月、上記1,187.61m2 を、振興公社が同市から取得した際の単価1m2 当たり17,000円、計20,189,370円に、取得資金とした借入金に係る支払利子相当額3,258,351円、手数料率1.5%(振興公社において同市が買い戻すことを条件に取得した用地を同市に売り渡す場合に適用する手数料率)を適用して算出した振興公社の事務費351,715円を加えた総額23,799,436円で取得しているものであった。
 しかして、同市が55年12月に取得した本件用地は、同市が買い戻すことを予定して振興公社に売却していたもので、補助金交付申請時(55年11月)には振興公社の所有であったのであるから、その取得に当たっては、開発公社を介在させることなく、また、開発公社が振興公社から取得した際の価格算定方式により算出される価格により取得すべきであったと認められる。
 いま、本件用地を振興公社から直接取得することとして用地価格を修正計算すると、その基礎となる価格1m2 当たり17,000円、計14,563,560円、支払利子相当額1,936,280円、振興公社の事務費247,497円、総額16,747,337円となり、これに補助事業に係る事務費相当額を加えると事業費は17,272,903円となり、これに対する国庫補助金相当額は10,363,742円となるので、結局、国庫補助金6,626,920円を過大に受給していた。
(76) 千葉県 山武郡成東町一般国道126号道路災害防除 千葉県 63,100 31,550 6,234 3,117 工事の設計過大及び積算過大

 この工事は、一般国道126号の成東町津辺地内において既設の石積擁壁にき裂が生じ危険が見込まれたので、これを防除するため、昭和59年度に同擁壁を取り壊して新たに鋼矢板による土留擁壁延長49m等を施工したものである。このうち、
(1) 鋼矢板及び継手の設計についてみると、〔1〕 使用する鋼矢板(120枚)については、これに作用する地震時の最大曲げモーメントが31t・m/mであることから、このような場合に対応できしかも最も経済的なIVA型(幅40cm、高さ18.5cm、厚さ16.1mm)とすること、〔2〕 本件工事の施工箇所が狭あいであることなどから、2枚の鋼矢板(矢板長5mと7m又は5.5mと7m)を継ぎ足して施工すること、〔3〕 その継手部は、鋼矢板と同等以上の強度を有する鋼板で加工した添接板(長さ1m、幅21cm、厚さ22mm)を鋼矢板の両側に配置し、ボルト(径24mmのもの24本)で縦方向に2列に締め付けることとしていた。
 しかし、継手部における鋼矢板の強度は、孔明け加工することにより欠損部分が生ずるため、ボルトの縦列数及びその径に従って低下するのであるから、これを接合する添接板については、孔明け加工後の鋼矢板の強度(本来強度の84%)と同等の強度を有するものにより、また、ボルトについては、同様に孔明け加工後の鋼矢板の強度に相応する本数(16本)により設計すれば足りると認められた。(2) 工事費の積算についてみると、〔1〕 鋼矢板を打ち込むための削孔に用いるアースオーガ機の運転経費等の積算に当たり、打込み所要時分中同機が稼働し続けるものとして運転時間を算定したり、〔2〕 圧入に用いる圧入機の機械損料の積算に当たり、建設省が制定した「建設機械等損料算定表」によることなく、見積りを徴して割高な時間当たり損料を用いて算定したり、〔3〕 アースオーガ機及びトラッククレーンの機械損料の積算に当たり、現場に適合しない大型機械により施工することとして算定したり、〔4〕 現場管理費

(参考図)補助事業の実施及び経理が不当と認められるものの図1

の積算に当たり、二次製品である鋼板等を工場加工していて既に工場管理費が見込まれている継手部の添接板等を二次製品扱いせずに現場管理費を算定したりしていて適切でないと認められた。
 いま、上記(1)、(2)により、設計過大分及び積算過大分を修正のうえ工事費を計算すると、総額56,865,053円となり、本件工事費はこれに比べて約6,234,000円が不経済になっていると認められる。
(77) 東京都 東村山市公共下水道青葉処理分区管きょ築造 東村山市 75,450
(うち国庫補助対象額40,000)
24,000 2,431 1,458 工事費の積算過大
 この工事は、東村山市公共下水道事業の一環として、昭和59年度に東村山市恩多町地内の公道路面下に管きょ延長236.75m等を新設したもので、このうち、管きょ延長220.40mについては内径250mmの小口径推進管をオーガ掘削推進工法により布設することとし、施工に当たっては、推進総延長220.40mを現場条件等を勘案して推進延長26.48mから39.89mの6推進区間(1推進区間は発進用立坑から到達用立坑までの区間である。)に区分して推進することとしていた。そして、推進工に使用する機械器具のうち、掘削したずりを後方に搬出するための標準スクリュー及び標準ケーシングの損料の積算に当たっては、東京都が制定した「下水道事業設計積算運用」によることとし、上記の推進総延長を基に、標準スクリュー及び標準ケーシングの使用本数をそれぞれ110本と算出し、これらに1本1日当たり損料を乗じて得た額を1日当たりの推進量で除して得た推進1m当たり損料を標準スクリュー6,495円、標準ケーシング7,769円と算出し、これらを推進総延長に乗じて標準スクリュー1,431,498円、標準ケーシング1,712,287円、計3,143,785円と算定していた。
 しかし、本件工事のように、推進総延長を複数の推進区間に区分して施工する場合の標準スクリュー等の損料は、推進区間ごとの推進延長を基に算出した標準スクリュー等の使用本数により推進1m当たり損料を算出して、推進区間ごとに必要な損料を算定するもので、これによれば推進区間ごとの使用本数はそれぞれ14本から20本となり、上記のように、これを大幅に上回る使用本数110本を基に算出した推進1m当たり損料により標準スクリュー等の損料を算定していたのは適切でない。したがって、推進区間ごとに算出した標準スクリュー等の使用本数により推進1m当たり損料を算出すると、標準スクリューが826円から1,180円、標準ケーシングが988円から1,412円となり、これらにより推進区間ごとの損料を算出して合計すると適正な損料は標準スクリュー248,562円、標準ケーシング297,446円、計546,008円となる。このほか、推進機の動力用電力費は、現場条件等から発電機を使用することとして積算すべきであるのに、電力会社から電力の供給を受けることとして積算していたなどのため525,245円が過大となっていた。
 いま、仮に上記により工事費を修正計算すると、積算漏れとなっていた覆工板の開閉作業に必要な経費等890,742円を考慮しても総額37,568,168円となり、本件工事費はこれに比べて約2,431,000円割高になっていると認められる。
(78) 兵庫県 氷上郡氷上町一般国道175号道路改良 兵庫県 94,760 71,070 2,920 2,190 工事費の積算過大
 この工事は、一般国道175号道路改良の一環として、昭和59、60両年度に氷上郡氷上町横田地内に延長528mの道路を新設するため、土工、擁壁工等を施工したもので、施工延長85mの区間の切土20,244m3 はオープンカット工法によることとし、このうち16,789m3 のリッピング・集土、積込み及び捨土運搬の各経費の積算に当たっては、兵庫県が制定した「土木工事実施設計用積算基準及び標準歩掛表(I)」(以下「積算基準」という。)に基づき、地山の状態が積算基準でいう軟岩(I)であることから21t級リッパ装置付ブルドーザでリッピングをした後、同ブルドーザで集土し、これを0.6m3 級バックホウで11t積ダンプトラックに積み込み、1.5km運搬して捨土することとしている。そして、集土及び積込みの1時間当たり作業量については、破砕岩(硬岩を爆破した状態の岩)の場合の作業効率0.35を適用して、集土作業は57.7m3 、積込作業は26.5m3 と算定し、これにより1m3 当たりの単価を、リッピング・集土作業437円、積込作業389円とし、捨土運搬530円を加え計1,356円と算定して、16,789m3 で22,765,884円と積算していた。
 
しかし、軟岩(I)をリッパ装置付ブルドーザでリッピングをした後の状態は、れき質土相当になるのが通常であるので、本件工事において破砕岩の作業効率を適用したのは適切でなく、れき質土の場合の作業効率を適用して、集土作業は0.60、積込作業は0.65とすべきであったと認められた。
 したがって、1時間当たりの作業量はそれぞれ98.9m3 及び49.3m3 となるので、これにより1m3 当たりの単価を算定すると、リッピング・集土作業318円、積込作業203円となり、これに捨土運搬530円を加え計1,051円となる。これを基に、前記16,789m3 のうち大型ブレーカーによる床掘が必要となる38m3 を除く16,751m3 分のリッピング・集土、積込み及び捨土運搬費を計算すると17,605,301円となり、5,109,055円が過大となっていた。また、このほか、前記85m区間に施工する張りコンクリート擁壁工費の算定に当たって、ロックアンカーの施工に使用するハンドハンマーの損料等の計算を誤ったため、234,232円が過大に積算されていた。
 いま、仮に上記により工事費を修正計算すると、積算不足となっていた大型ブレーカーによる軟岩(II)604m3 の掘削費1,531,744円、上記38m3 の床掘等の経費1,387,586円、計2,919,330円を考慮しても、総額91,839,200円となり、本件工事費はこれに比べて約2,920,000円割高になっていると認められる。
(79) 沖縄県 国頭郡本部町町道大堂線道路改良 本部町 60,600 48,480 1,461 1,168 工事の設計不適切
 この工事は、町道大堂(うふどう)線の道路改良の一環として、昭和59年度に本部町字古島地内に延長160mの道路を新設するため、盛土、逆T式擁壁、パイプカルバート等を施工したもので、うち盛土により道路下に埋没する既設の素掘り排水路等及び在来道路の既設コンクリート管に代わる排水施設として設置したパイプカルバート延長25mについては、設計書、図面によれば、内径900mmの遠心力鉄筋コンクリート管の普通管一種を土被り最大6.6mの位置に、管底部をコンクリートにより管外周の2分の1で固定するいわゆる180度固定基礎として設計し、これにより施工していた。そして、その設計に当たり、建設省が制定した「土木構造物標準設計1」の「パイプカルバート基礎形式選定図」により基礎形式を選定する際に、設計条件の最大土被り厚を在来道路における既設コンクリート管の土被り厚である2mとするなどしていた。
 しかし、本件工事における改良後の路面までの最大土被り厚は6.6mとなるものなどであるから、上記の設計は条件を誤って適用したと認められたので、本院において、一般的に用いられている「道路土工 擁壁・カルバート・仮設構造物工指針」(社団法人 日本道路協会編)に基づき、土圧等の荷重に対する管体の安全率の計算を行ったところ、目標値とされている1.25に対して最大土被り厚の位置においては0.36となっており、管種を普通管一種として設計するとすれば、管の全周をコンクリートで巻き立てるいわゆる360度固定基礎とする必要があったと認められた。このように、設計条件の検討を十分行わないまま前記のように設計、施工したため本件パイプカルバートは強度が不足し、全延長のうち延長19.4mの管頂部等に既に多数のき裂が生じていて著しく不安定なものとなっている。

補助事業の実施及び経理が不当と認められるものの図2

計     322,409
(うち国庫補助対象額
286,777)
192,090 24,092 14,562