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  • 昭和60年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第1節 所管別の検査結果|
  • 第12 自治省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

田園都市中核施設整備事業の効果があがるよう改善させたもの


田園都市中核施設整備事業の効果があがるよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)自治本省 (項)自治本省
部局等の名称 自治省
事業主体 帯広市ほか15市町及び2一部事務組合
事業名 田園都市中核施設整備事業
事業の概要 新広域市町村圏計画(注1) に基づき地域社会の総合的整備を推進するため、教育、文化、スポーツ等のための複合施設である田園都市中核施設の整備計画を策定する事業及びその整備計画に基づき施設を整備する事業
交付金額の合計 田園都市中核施設整備計画策定費補助金 285,402,000円
(昭和55年度〜58年度)
田園都市構想推進事業助成交付金 2,738,750,000円
(昭和56年度〜60年度)

 上記の田園都市中核施設整備事業(以下「中核施設整備事業」という。)は、田園都市中核施設(以下「中核施設」という。)の整備を行うことにより広域市町村圏及び大都市周辺地域広域行政圏(以下「広域市町村圏等」という。)の既存施設等との連携を図るなどして、圏域全体にわたる広域サービスシステムの形成を目的とするものであるが、中核施設の中には、施設所在の市町だけで施設の建設費、管理運営費等を負担しているものがあったり、中核施設の管理運営が適切に行われていないものがあったり、圏域住民を対象とした広域的な利用が図られていないものがあったりしていて、18中核施設整備事業(策定費補助金285,402千円、助成交付金2,738,750千円)において広域サービスシステムの形成上適切を欠く事態となっていた。
 このような事態を生じているのは、中核施設整備事業の趣旨を市町村が十分理解していないことにもよるが、自治省において中核施設を設置した後の実態把握が十分でなく、設置主体及び圏域の市町村に対して適切な指導、助言を行っていないことなどによるものと認められ、上記事態の是正を図るとともに、中核施設整備事業の総点検を行い実態を十分把握したうえ、道府県を通じて設置主体及び圏域の市町村に対する指導の徹底を図り、事業の効果の確保を図る要があると認められた。

 上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。

(説明)

 自治省では、中核施設の整備を行う地方公共団体に対し、新広域市町村圏計画策定費補助金交付要綱(昭和55年自治振第48号)に基づき、昭和55年度から中核施設の設計及びその管理運営計画(以下「整備計画」という。)の策定に要する経費の一部について新広域市町村圏計画策定費補助金(56年度からは田園都市中核施設整備計画策定費補助金。以下「策定費補助金」という。)を整備計画の策定年度に交付し、また、田園都市構想推進事業助成交付金交付要綱(昭和56年自治振第42号)に基づき、56年度から整備計画により中核施設を整備する事業について田園都市構想推進事業助成交付金(以下「助成交付金」という。)を整備計画の策定年度の翌年度から数年間に分割して交付することとしている。
 この中核施設整備事業は、広域市町村圏等において、54年度から56年度にかけて策定されている新広域市町村圏計画に基づき地域社会の総合的整備を推進するため、圏域における住民サービスの拠点となる教育・文化施設、スポーツ・レクリエーション施設、産業振興施設等を複合した中核施設(ハードウェア)を整備するとともに、施設の管理運営等の方法(ソフトウェア)も重視し、教育、文化等の各分野においてハードウェア、ソフトウェアが組み合わされた総合的なサービスシステムの形成を図るものである。

 そして、整備計画の策定に当たっては、各種サービス機能の構成、施設の配置、内容等について圏域の地方公共団体が協議のうえ、その圏域住民のニーズや各種公共施設の整備状況を勘案して決定することになっている。また、中核施設整備事業の選定に当たっては、前記の新広域市町村圏計画策定費補助金交付要綱等において、中核施設の規模、施設に係る複合的サービスシステムの機能及び効率性等を勘案し、圏域の共同事業としての性格をもつものを採択することとしている。
 中核施設整備事業は、55年度から63年度までの間に、十勝広域市町村圏ほか45広域市町村圏等において46中核施設を整備することになっていて、自治省では、中核施設の設置主体である帯広市ほか38市町及び7一部事務組合に対し、60年度末現在、策定費補助金724,827千円、助成交付金4,863,100千円(交付限度額10,730,000千円)を交付している。

 しかして、上記46中核施設整備事業のうち、55年度から60年度までの間に、北海道ほか14府県(注2) の十勝広域市町村圏ほか17広域市町村圏等(構成市町村帯広市ほか182市町村)で実施された18中核施設整備事業(策定費補助金285,402千円、助成交付金2,738,750千円)について、中核施設を拠点とした広域サービスシステムが適正に形成されているかどうかという事業の有効性に着目して調査したところ、次のとおり18中核施設整備事業のすべてにおいて事業の効果に関し問題点を有する事態が見受けられた。

1 中核施設の整備事業は圏域の共同事業であることから、その設置、運営費用の負担については、当該施設の建設について圏域全体の合意が得られており、かつ、中核施設の建設費等の一部又はその管理運営費の一部を設置市町村以外の市町村も負担するなどとされているが、10中核施設においては施設所在の市町だけで建設費、管理運営費等を負担している。

2 中核施設の整備計画では、事業の企画、立案等の機能をもつ管理運営組織を設置することとしているが、12中核施設においてはこれを設置していなかったり、設置しているものの、会議を開催していなかったりなどしていて管理運営組織の設置及び運営が適切に行われていない。

3 中核施設には、個々の市町村レベルでは対応できない高次の教育、文化等のサービスの提供を行うという機能もあるが、住民の活動分野の広域化に対応した圏域住民の交流、発表、啓発等の場として利用するという機能があり、この機能を果たすことを目標に中核施設の整備計画では、文化施設については圏域住民が自ら参加する文化活動発表会、郷土民俗芸能祭等を、科学館・博物館等については圏域の各種研究会等の団体相互間の情報交換、圏域住民を対象とした学習会等を、図書館については圏域住民を対象とした地区公民館への図書の配本等を実施することなどとしているが、16中核施設においては個々の施設の全部又は一部についてこれらの活動は行われておらず、圏域住民を対象とした広域的な利用が図られていない。

 そして、このまま推移すると、中核施設は施設所在市町住民の施設としての利用だけにとどまり、圏域住民の交流、発表、啓発等の場としての利用が図られないことになり、ひいては、中核施設を拠点として広域サービスシステムを形成するという事業の目的が達成されないことになると認められる。
 このような事態を生じているのは、中核施設整備事業の趣旨を市町村が十分理解していないことにもよるが、自治省において中核施設を設置した後の実態把握が十分でなく、また、中核施設の設置主体及び圏域の市町村に対して適切な指導、助言を行っていないことなどによると認められた。

 上記についての本院の指摘に基づき、自治省では、61年11月に、関係道府県に対し「田園都市中核施設の管理運営等の適正化について」の通達を発するなどして、関係市町村に対する中核施設整備事業の趣旨の周知徹底を図り、中核施設の管理運営費め負担の適正化、管理運営組織の設置、運営の適正化及び整備計画に即した広域サービスシステムの実現について指導を強化するとともに、上記事態の是正を図る処置を講じ、また、中核施設整備事業の総点検に着手した。

 (注1)  新広域市町村圏計画 広域ネットワークや広域事務処理システムの整備、教育、文化、スポーツ、レクリェーション等各分野にわたる施設の整備やその運営、地域産業の振興等あらゆる地域課題に対応した総合的な地域づくりのための計画

 (注2)  北海道ほか14府県 北海道、京都府、岩手、茨城、栃木、群馬、富山、長野、静岡、三重、和歌山、岡山、熊本、大分、沖縄各県