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  • 昭和60年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第3 農林漁業金融公庫|
  • 不当事項|
  • 貸付金

総合施設資金等の貸付けが不当と認められるもの


 (93)-(98) 総合施設資金等の貸付けが不当と認められるもの

科目 貸付金
部局等の名称 青森、盛岡、東海、近畿各支店
受託金融機関 農林中央金庫ほか1金融機関
貸付けの根拠 農林漁業金融公庫法(昭和27年法律第355号)
貸付金の種類 総合施設資金、林業経営改善資金、漁船資金、主務大臣指定施設資金
貸付けの内容 農林漁業者に対する総合施設資金等の貸付け
貸付件数 6件
貸付金の合計額 71,550,000円

 上記の貸付けは、貸付けの目的に沿わない結果になっていて、貸付金32,004,737円が不当と認められる。これを貸付先別に掲げると別表 のとおりである。

(説明)

 農林漁業金融公庫(以下「公庫」という。)では、農林漁業者に対して、農林漁業の生産力の維持増進に必要な長期かつ低利の資金で、一般の金融機関から融通を受けることが困難な資金を直接又は金融機関に委託して貸し付けている。
 このうち、公庫が直接貸付けを行う場合は、公庫が借入申込書類を審査して、所定の条件を満たしていると認めたものについて貸し付け、完成状況、事業費の支払状況等によって貸付金の使途などを確認することとしており、また、金融機関に委託して貸付けを行う場合は、受託金融機関が借入申込書類の審査を行い、一部の資金については公庫が貸付決定を行うこととしているが、そのほかは受託金融機関が公庫の直接貸付けの場合に準じて上記の貸付け等の事務を行うこととしている。
 しかして、上記の貸付け6件についてみると、借入者から事実と相違した内容の借入申込みや報告がなされているにもかかわらず、これに対する審査及び確認が適切でなかったなどのため、貸付対象とならない事業に対して貸し付けていたり、貸付金額が過大に算定されていたりなどしていて貸付けが不当と認められるものが32,004,737円見受けられた。

(別表)

支店名
(受託金融機関名)
貸付先
(所在地)
貸付対象 貸付昭和年月
(貸付利率)
貸付対象事業費 左に対する貸付金額 貸付金額のうち不当と認めた額 摘要
千円 千円 千円
(総合施設資金)
(93) 東海支店 農業者
(鈴鹿市在住)
ガラス温室の新築 60.6
(年5%)
28,578 25,700 7,642 低額実施
(三重県信用農業協同組合連合会)
 この貸付けは、観賞植物(鉢物)栽培用のガラス温室5棟延べ1,344.6m2 の新築に必要な資金28,578,570円の一部として25,700,000円を貸しけたもので、借入者は貸付対象事業費どおりの額で実施したとしていたが、実際は、これより低額な20,064,330円で実施しており、これにより適正な貸付金額を計算すると18,057,897円となるので、本件貸付金額との差額7,642,103円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金額については、本院の注意により、昭和61年2月に繰上償還の措置が執られた。
(林業経営改善資金)
(94) 青森支店 森林組合 森林の取得 58.12
(年3.5%)
6,500 4,000 4,000 貸付対象外
(農林中央金庫) 転貸先
林業者
転貸先所在地青森県東津軽郡平内町
 この貸付けは、転借者による森林2.11ha(林齢15年の人工林1.40ha及び造林のための土地0.71ha)の取得に必要な資金6,500,000円の一部として4,000,000円を貸し付けたもので、この森林の取得が林齢15年以下の人工林及び造林のための土地の取得に該当するとしていたが、実際は、この森林2.11haは全面積が林齢20年以上の人工林であるので、本件事業は貸付けの対象にならない。
 なお、本件の不当貸付金額については、本院の注意により、昭和61年11月に繰上償還の措置が執られた。
(95) 青森支店 森林組合 森林の取得 58.12
(年3.5%)
7,500 6,000 4,809 貸付対象外
(農林中央金庫) 転貸先
林業者
転貸先所在地青森県東津軽郡平内町
 この貸付けは、転借者による森林3.01ha(林齢14年の人工林2.28ha及び造林のための土地0.73ha)の取得に必要な資金7,500,000円の一部として6,000,000円を貸し付けたもので、このうち人工林2.28ha の取得については林齢15年以下の人工林の取得に該当するとしていたが、実際は、この人工林2.28haは林齢25年以上の人工林及び天然林であるため貸付けの対象にならないものであり、これにより適正な貸付金額を計算すると1,190,574円となるので、本件貸付金額との差額4,809,426円が過大な貸付けとなっている。
 なお、本件の不当貸付金額については、本院の注意により、昭和61年11月に繰上償還の措置が執られた。
(96) 東海支店 森林組合 森林の取得 56.7
(年3.5%)
10,000 8,000 8,000 貸付対象外
(農林中央金庫) 転貸先
林業者
転貸先所在地三重県南牟婁郡御浜町
 この貸付けは、転借者による森林3.40ha(すべて林齢15年の人工林)の取得に必要な資金10,000,000円の一部として8,000,000円を貸し付けたもので、この森林の取得が林業構造改善事業の実施地域内に居住する者による同一地域内の森林の取得に該当するとしていたが、転借者は当該地域外に居住しているので、本件事業は貸付けの対象にならない。
 なお、本件の不当貸付金額については、本院の注意により、昭和61年10月に繰上償還の措置が執られた。
(漁船資金)
(97) 盛岡支店 漁業者
(大船渡市)
漁船用機器の設置 60.4
(年7.35%)
22,350 17,850 3,850 低額実施及び事業の一部不実施
 この貸付けは、さんま棒受網漁等に使用するフィッシュポンプ、カラースキャニングソナー、リモートディスプレイ、ラジオブイ専用方向探知機、ビデオプロッター各一式の設置に必要な資金22,350,000円の一部として17,850,000円を貸し付けたもので、借入者は貸付対象事業費どおりの額で実施したとしていたが、実際は、このうちカラースキャニングソナー、リモートディスプレイ各一式の設置(貸付対象事業費16,150,000円)については13,000,000円で実施しており、また、ラジオブイ専用方向探知機、ビデオプロッター各一式の設置(貸付対象事業費1,700,000円)については実施しておらず、この結果、適正な貸付対象事業費は17,500,000円となり、これにより貸付金額を計算すると14,000,000円となるので、本件貸付金額との差額3,850,000円が過大な貸付けとなっている。
 なお、昭和61年6月末現在の不当貸付金残高は1,942,432円で、これについては、本院の注意により、同年9月に繰上償還の措置が執られた。
(主務大臣指定施設資金)
(98) 近畿支店 漁業者 まぐろはえなわ用漁具一式の購入 58.11
(年7.3%)
13,100 10,000 3,703 低額実施
(和歌山県東牟婁郡那智勝浦町在住)
 この貸付けは、まぐろはえなわ用漁具一式の購入に必要な資金13,100,000円の一部として10,000,000円を貸し付けたもので、借入者は貸付対象事業費どおりの額で購入したとしていたが、実際は、これより低額な7,870,990円で購入しており、これにより適正な貸付金額を計算すると6,296,792円となるので、本件貸付金額との差額3,703,208円が過大な貸付けとなっている。
 なお、昭和60年10月末現在の不当貸付金残高は1,333,156円で、これについては、本院の注意により、61年2月及び3月に繰上償還の措置が執られた。
88,028 71,550 32,004