科目 | (款)高速道路建設費 | (項)建設工事費 |
(款)一般有料道路建設費 | (項)建設工事費 | |
部局等の名称 | 新潟、東京第一、大阪、広島、福岡各建設局 | |
工事名 | 北陸自動車道子不知トンネル西(その1)工事ほか11工事 | |
工事の概要 | 高速道路等建設事業の一環としてトンネルを新設するなどの工事 | |
工事費 | 37,182,000,000円 | |
請負人 | 前田建設工業株式会社・株式会社間組北陸自動車道子不知トンネル西(その1)工事共同企業体ほか11共同企業体 | |
契約 | 昭和59年7月〜61年3月指名競争契約又は随意契約 |
上記の各工事において、トンネル工事における掘削費等の積算(積算額148億2731万余円)が適切でなかったため、積算額が約5億3500万円過大になっていた。
このように積算額が過大になっているのは、近年、NATM(注1)
によるトンネル工事が一般的となり、現地の実情に合った掘削等の機械の組合せにより効率的な施工が行われてきているのに、これを積算の基準に反映していなかったことによるもので、施工の実態に即した積算をする要があると認められた。
上記に関し当局に指摘したところ、改善の処置が執られた。
(説明)
日本道路公団(以下「公団」という。)では、高速道路等の建設工事を毎年多数実施しているが、このうち、新潟建設局ほか4建設局が昭和60事業年度に施行しているトンネル等の工事12工事(工事費総額371億8200万円)について検査したところ、次のとおり、トンネル工事における掘削費等の積算について、適切でないと認められる点が見受けられた。
すなわち、上記各工事は、高速道路等建設事業の一環としてトンネル総延長16,813mを新設するなどの工事で、このうち、トンネル工事(避難坑等を除く。)はいずれも発破による上半先進ベンチカツト工法(注2)
でNATMにより施工することとしている。そして、この工事費の積算に当たっては、公団本社制定の土木工事積算要領(以下「積算要領」という。)に基づき算定しているが、このうちトンネル掘削1,287,227.5m3
、コンクリート吹付け工362,443.2m2
、ロックボルト工163,717本の直接工事費及び坑内外の諸設備に係る保守費等の割掛間接工事費(注3)
の積算についてみると、
〔1〕 地山が硬岩の場合における掘削、コンクリート吹付け及びロックボルト打込み作業(以下「掘削作業等 」という。)については、地山が安定しているので、トンネル内における掘削作業等の錯そうを少なくするため、トンネルの上半部に地山のせん孔に使用する2ブームの油圧式クローラジャンボ(以下「油圧式ジャンボ」という。)2台とずり積機及びコンクリート吹付け機各1台等を配置して、まず上半部の掘削作業等を一定区間先行して施工した後、これに使用した各機械を下半部に移動してその掘削作業等を上半部と同様の段取りで施工し、これを反覆する上下半交互併進工法で、
〔2〕 地山が軟岩の場合における掘削作業等については、地山が不安定で掘削後トンネルの上半部と下半部を早期に一体化する必要があるとしてトンネルの上半部と下半部に油圧式ジャンボをそれぞれ1台配置し、ずり積機及びコンクリート吹付け機各1台等は上半部と下半部に併用することとし、上半部の掘削作業等を一定区間先行させながら、上半部と下半部を同時に併行して施工する上下半同時併進工法でそれぞれ施工することとして、12工事で総額148億2731万余円と算定していた。
しかしながら、本件各工事のトンネルは、上半部と下半部の掘削断面積が相違し(上図−1参照) 、一発破当たりの掘削量は上半部が平均79m3 程度であるのに対して、下半部は平均47m3 程度と少なくなっていることから掘削等の機械をそれぞれ使いわけるのが適切であり、また、トンネルの施工単位延長(注4) が比較的長いうえ、NATMが一般的になって、その施工方法に習熟してきていることもあって、上下半部の切羽間隔が長くとれる(上図−2参照)ため掘削作業等の錯そうが避けられることなどから、上下半部の掘削作業等を同時に施工することができるので、地山の岩種に関係なく掘削量の多い上半部には油圧式ジャンボを2台、掘削量の少ない下半部には油圧式ジャンボより小型で下半部の掘削量に応じた2ブームの空圧式クローラジャンボ(以下「空圧式ジャンボ」という。)を1台それぞれ配置して、上下半同時併進工法により施工することとすれば、
〔1〕 硬岩の場合における掘削作業等は上半部及び下半部において、それぞれ作業を中断することなく連続して施工できるので作業の進行が速くなること、
〔2〕 軟岩の場合における掘削作業等は上半部に油圧式ジャンボを2台配置することにより、上半部の進行が速くなり、下半部において上半部の進行に拘束されることによる待ち時間が少なくなることから、効率的な施工となり、いずれも工期を短縮することができ、これにより施工することとして積算したとすれば、工期の短縮に伴う坑内外の諸設備に係る保守費等の割掛間接工事費が相当程度低減できたと認められた。
現に、会計実地検査の際、施工の実態について調査したところ、本件各トンネル(施工単位延長1,500m以上のもの)においては、大部分の工事において、地山の岩種に関係なく上半部に油圧式ジャンボ2台、下半部に空圧式ジャンボ1台を配置するなどした上下半同時併進工法により施工していて、工期の短縮を図っている状況であった。
いま、仮に上記各工事のトンネル掘削費等の積算について施工の実態に即して積算したとすれば、積算額を約5億3500万円低減できたと認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、日本道路公団では、61年10月に積算要領を改正して、トンネル工事における掘削等の機械の組合せを施工の実態に即したものに改め、同年11月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。
(注1) NATM New Austrian Tunnelling Method の略でナトムと呼ばれる。トンネルを掘削した後、コンクリート吹付け、ロックボルトなどを適宜組み合わせ施工することにより、地山の持っている支持力を最大限に生かす工法
(注2) 上半先進ベンチカット工法 トンネルを上半部、下半部の2段に分け、一定区間上半部を施工した後、下半部を施工する工法で、上下半交互併進工法及び上下半同時併進工法がある。
(注3) 割掛間接工事費 トンネル工事の施工に当たり、間接的に必要な坑内外の諸設備に係る保守費等の費用をトンネル掘削等関連のある工種の直接工事費に按分し、計上する工事費
(注4) 施工単位延長 同一の坑内外設備及び機械を用いて施工するトンネルの総延長をいい、契約上は2以上の契約に分割するものもあり、この場合は1契約の施工延長とは一致しない。