科目 | 貸付金 | ||
部局等の名称 | 中小企業事業団(昭和55年10月1日以前は「中小企業振興事業団」) | ||
貸付けの根拠 | 中小企業事業団法(昭和55年法律第53号)等 | ||
貸付けの内容 | (1) | 中小企業者に対し中小企業高度化資金の貸付けを行う都道府県に対する資金の貸付け | |
(2) | 貿易構造その他経済的事情の著しい変化により転廃業等をせざるを得なくなったため不要となった中小企業者の設備を買い上げたうえ破砕する中小企業団体に対する資金の貸付け | ||
貸付先 | (1) | 静岡県ほか4府県 | |
(2) | 日本撚糸工業組合連合会ほか1団体 | ||
貸付金額 | (1) | 791,827,000円 | |
(2) | 186,974,972円 | ||
府県の貸付先 | (1) | 16中小企業者 | |
中小企業団体の設備買上先 | (2) | 2中小企業者 | |
同上貸付金額 | (1) | 1,203,315,000円 | |
買上先に対する貸付金相当額 | (2) | 186,974,972円 | |
計 | 1,390,289,972円 |
上記の16中小企業者及び2中小企業団体に対する1,390,289,972円の貸付けにおいて、332,080,392円の貸付けが不当と認められ、ひいては中小企業事業団の貸付金相当額240,704,836円が貸付けの目的に沿わない結果になっていると認められるものが、別表 のとおりある。
(説明)
中小企業事業団(以下「事業団」という。)では、中小企業者が企業規模の適正化、事業の共同化、工場・店舗等の集団化等を図るための事業の用に供する土地、建物その他の施設の取得等を行う場合に、これに必要な資金として中小企業高度化資金の貸付けを行う都道府県に対して、その財源の一部を貸し付けており、その貸付条件は、貸付利率を無利子から年4.1%、償還期限を16年以内とし、都道府県はこの借入金に自己資金を合わせて中小企業者に貸し付けていて、その貸付条件は、貸付利率を無利子又は年2.7%、償還期限を上記と同様16年以内としていて、極めて低利かつ長期のものとなっている。そして、事業団が都道府県に貸し付ける場合は、あらかじめ都道府県において借入申込者の事業計画に対する診断を実施し、事業団で当該事業計画の内容を審査したうえ妥当と認めたものについて貸し付けることとしている。
また、事業団では、貿易構造その他経済的事情の著しい変化により転廃業等をせざるを得なくなったため不要となった中小企業者の設備を買い上げたうえ破砕する中小企業団体に対し、その設備買上げに必要な資金の一部を直接貸し付けており、その貸付条件は、貸付利率が無利子、償還期限が16年以内となっている。そして、事業団は貸付けに当たり、借入申込者である中小企業団体が作成した借入申込書とその添付書類等を審査したうえ妥当と認めたものについて貸し付けることとしている。
しかして、上記の貸付けについて調査したところ、事業団及び静岡県ほか4府県において、貸付けに当たっての審査を的確に行っていなかったり、貸付け後の管理が適切を欠いたりしていたなどのため、貸付けの対象とはならないものに貸し付けていたり、貸付対象事業費よりも低額で事業が実施されていたりなどしていて、332,080,392円の貸付けが不当と認められ、ひいては事業団の貸付金相当額240,704,836円が貸付けの目的に沿わない結果になっていると認められる。
〔府県に対する資金の貸付け〕 | ||||||||||
府県名 | 府県の貸付先(所在地) | 貸付対象 | 貸付昭和年月(貸付利率) | 償還期限昭和年月 | 貸付金額 | 左のうち不当と認めた貸付金相当額 | 貸付けの目的に沿わない結果になった事業団の貸付金相当額 | 摘要 | ||
同上に対する事業団の貸付金相当額 | ||||||||||
千円 |
千円 |
千円 |
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(工場等集団化事業) | ||||||||||
(101) | 静岡県 | 家具工業団地協同組合(藤枝市) | 共同倉庫 | 58.5 |
73.9 | 58,500 (43,870) |
8,068 | 6,050 | 貸付過大 | |
この貸付けは、共同倉庫1,636.96m2
の設置等に必要な資金73,500,000円(うち貸付対象事業費分65,000,000円)の一部として貸し付けたものであるが、借入者は、この貸付けを受ける前の昭和58年4月に藤枝市から本件貸付対象の建設資金の一部として補助金14,568,000円の交付決定を受け、同年5月、これを受領していた。 したがって、適切な貸付金額は50,432,000円となり、本件貸付金額58,500,000円との差額8,068,000円が過大な貸付けとなっている。 なお、本件の不当貸付金残高7,447,384円(事業団の貸付金相当額5,584,901円)については、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。 |
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(102) | 熊本県 | 協同組合木材工業団地ほか10製材業者等 (球磨郡相良村) |
構築物等 | 60.5 (年2.7%) |
75.4 | 279,670 (219,737) |
29,373 | 21,537 | 低額設置 | |
協同組合木材工業団地(同) | 構築物等 | 60.5 (無利子) |
75.4 | 70,768 (35,384) |
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小計 | 350,438 (255,121) |
29,373 | 21,537 | |||||||
この貸付けは、土地108,874m2
の造成及び側溝、調整池等の設置に必要な資金488,000,000円(事業計画変更後477,000,000円)の一部として貸し付けたもので、借入者は477,000,000円で造成等を行ったとしているが、実際は、値引きにより436,000,000円で実施していた。 したがって、適切な貸付金額は321,064,291円となり、本件貸付金額350,438,000円との差額29,373,709円が過大な貸付けとなっている。 なお、本件の不当貸付金残高29,373,695円(事業団の貸付金相当額21,537,537円)については、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。 |
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(店舗等集団化事業) | ||||||||||
(103) | 福井県 | 協同組合問屋センター(武生市) | 土地 | 50.12 |
65.9 | 451,130 (291,500) |
8,697 | 5,620 | 無断処分 | |
この貸付けは、土地69,980.7m2
の取得に必要な資金694,068,000円の一部として貸し付けたものであるが、借入者は、このうち2,312.26m2
(貸付対象事業費22,932,975円)を昭和58年3月、59年3月及び60年3月の3回に分けて市道用地として無断で売却していた。 したがって、当該土地に係る貸付金相当額(売却時貸付金残高相当額8,697,761円、うち事業団の貸付金残高相当額5,620,101円)は、貸付けの目的を失っている。 なお、本件の不当貸付金残高4,970,183円(事業団の貸付金相当額3,211,509円)については、本院の注意により、61年11月、繰上償還の措置が執られた。 |
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(貨物自動車ターミナル等集団化事業) | ||||||||||
(104) | 熊本県 | 運送業者 (上益城郡益城町) |
保管庫等 | 59.8 |
74.4 | 178,327 (115,226) |
178,327 | 115,226 | 貸付対象外 | |
この貸付けは、保管庫3,863m2
等の設置に必要な資金276,400,000円(うち貸付対象事業費分274,350,000円)の一部として貸し付けたものであるが、借入者は大企業及びその役員から資本金の50%以上の出資を受けていて、貸付対象とならない者であった。 なお、本件の不当貸付金額については、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。 |
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(共同施設事業) | ||||||||||
(105) | 大阪府 | 工場排水処理協同組合(泉北郡忠岡町) | 工場排水処理設備等 | 59.3 |
74.3 | 139,920 (69,960) |
26,560 | 13,280 | 低額設置 | |
この貸付けは、排水処理設備等の設置に必要な資金175,000,000円の一部として貸し付けたもので、借入者は、このうち排水処理槽及び機械設備を165,730,000円で設置したとしているが、実際は、値引きにより132,500,000円で設置していた。 したがって、適切な貸付金額は113,360,000円となり、本件貸付金額139,920,000円との差額26,560,000円が過大な貸付けとなっている。 なお、本件の不当貸付金額については、本院の注意により、昭和61年10月、繰上償還の措置が執られた。 |
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(106) | 香川県 | 食品製造企業組合 (高松市) |
排水処理設備等 | 58.4 |
70.3 | 25,000 (16,150) |
5,827 | 3,764 | 低額設置 | |
この貸付けは、排水処理設備及び事務所の設置に必要な資金40,000,000円の一部として貸し付けたもので、借入者は、このうち排水処理設備を33,800,000円で設置したとしているが、実際は、値引きにより24,500,000円で設置していた。 したがって、適切な貸付金額は19,172,203円となり、本件貸付金額25,000,000円との差額5,827,797円が過大な貸付けとなっている。 なお、本件の不当貸付金残高5,245,018円(事業団の貸付金相当額3,388,281円)については、本院の注意により、昭和61年10月、繰上償還の措置が執られた。 |
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計 | 1,203,315 (791,827) |
256,854 | 165,478 |
〔中小企業団体に対する資金の貸付け〕 | |||||||||
貸付先 | 貸付昭和年月 | 償還期限 昭和年月 |
買上対象者(所在地) | 買上対象事業費 | 左に対する貸付金相当額 | 不当と認めた事業費 | 不当と認めた貸付金相当額 | 摘要 | |
千円 |
千円 |
千円 |
千円 |
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(設備共同廃棄事業) | |||||||||
(107) | 日本撚糸工業組合連合会 | 58.1 | 73.12 | かさ高加工糸製造業者(新潟県栃尾市) | 179,350 | 161,415 | 55,184 | 49,666 | 貸付対象外 |
この貸付けは、仮より機5台1,248錘を179,350,080円で買い上げるのに必要な資金の一部として貸し付けたものであるが、買い上げた仮より機のうち1台384錘は買い上げる以前に中小企業振興事業団の貸付けを受けて設置されたリース設備で、買上げ当時まだそのリース代金が完済されておらず、同事業団の譲渡担保に供されていたもので、買上対象設備とならない設備であるのに、これの買上金額を貸付けの対象としていた。 なお、本件の不当貸付金額については、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。 |
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(108) | 日本綿スフ織物工業組合連合会 | 60.11 | 76.11 | 綿スフ織物業者 (大阪府 岸和田市) |
28,400 | 25,559 | 28,400 | 25,559 | 貸付対象外 |
この貸付けは、自動織機25台を28,400,000円で買い上げるのに必要な資金の一部として貸し付けたものであるが、上記の綿スフ織物業者は昭和53年1月頃から事業を行っておらず、しかも、59年12月には商法(明治32年法律第48号)の規定により解散したるものとみなされ、登記官の職権により会社解散の登記が行われているなど本件買上げ時においては事業者とは認められず、買上対象者とはならない者であるのに、これからの買上金額を貸付けの対象としていた。 なお、本件の不当貸付金額については、本院の注意により、繰上償還の措置を執ることになった。 |
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計 | 207,750 | 186,974 | 83,584 | 75,226 | |||||
貸付金額及び買上先に対する貸付金相当額の合計 | 不当と認めた貸付金相当額 | 貸付けの目的に沿わない結果になった事業団の貸付金相当額 | |||||||
同上に対する事業団の貸付金相当額 | |||||||||
合計 | 千円 1,390,289 (978,801) |
千円 332,080 |
千円 240,704 |