ページトップ
  • 昭和60年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第13 日本電信電話株式会社|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

カラー電話機等のレンタル方式による提供についてその見直しを図るよう意見を表示したもの


カラー電話機等のレンタル方式による提供についてその見直しを図るよう意見を表示したもの

科目 営業費用
部局等の名称 日本電信電話株式会社
商品の概要 利用者にレンタル方式により提供しているカラー電話機、プッシュホン、ホームテレホンD、ビジネスホン24E、ビジネスホン50E及びミニファクス
上記商品の解約数 271万個(昭和60年度)
上記に係る創設費の未回収額(推計額) 269億円

 日本電信電話株式会社において利用者にレンタル方式により提供しているカラー電話機等が、昭和60年4月の民営移行以後、電話機等の端末機器の設置について利用者による選択が自由になったことなどから、耐用年数の経過前に多数解約されており、その大部分は商品として再度提供できる見込みがないなどとして処分されていて、物品費、取付費等からなる創設費の未回収額が多額に上っている。
 これは、カラー電話機等についての利用者の好みが多様化し、カラー電話機等から新商品への取替えが多いことにもよるが、同会社においてもこのような事態に対する対応が十分でなかったことによると認められる。
 したがって、耐用年数より短い期間で解約されることの多いカラー電話機等のレンタル方式による提供について見直しを図るなどの施策を講じる要がある。

 上記に関し、昭和61年12月5日に日本電信電話株式会社代表取締役社長に対して意見を表示したが、その全文は以下のとおりである。

カラー電話機等のレンタル方式による提供について

 貴会社では、電気通信事業法(昭和59年法律第86号)の規定に基づき電話サービス契約約款を定め、これにより電話サービスを提供しているが、加入電話による電話サービスをより効果的に提供できるようにするため、従来からの黒電話機に加えて、外観や機能がより優れているカラー電話機、プッシュホン、ホームテレホン、ビジネスホン及びミニファクスの端末機器(以下「カラー電話機等」という。)を利用者の希望に応じて売切り又はレンタルのいずれかの方式により提供している。
 このうちレンタル方式は、貴会社において黒電話機及びカラー電話機等を直接利用者に賃貸するもので、昭和60年4月1日の民営移行前は、公衆電気通信法(昭和28年法律第97号、60年4月1日廃止)の規定に基づく加入電話等利用規程において採用されていた唯一の提供方法であった。しかし、60年4月、電気通信事業法の施行に伴い、黒電話機及びカラー電話機等の設置について、利用者が貴会社のものであっても製造販売業者のものであっても自由に選択できるようになったことなどから競争が激化し、その結果、従来、貴会社がレンタル方式により提供してきたカラー電話機等の解約が増加し、60年度における解約数は、59年度末現在の施設数2428万個に対し428万個となっている状況である。そして、解約により戻されたカラー電話機等の大部分は、最近の利用者の好みに合わないことから商品として再度提供できる見込みがないなどとして処分されている。

 そして、カラー電話機等については、減価償却資産とされていることから、その償却についてはレンタル方式で提供している間は、毎年度その取得価額及び耐用年数を基に算定される減価償却費が費用として計上され、また、処分された場合には、取得価額から減価償却累計数を控除した正味固定資産価額が固定資産除却費として計上されることになっており、解約により戻され処分されたカラー電話機等に係る固定資産除却費は多額に上っている。
 また、カラー電話機等のレンタル料金(月額)については、物品費、取付費等からなる創設費は8年から10年の耐用年数の期間で回収することとし、この創設費及び耐用年数を基にして減価償却費、支払利子等の年経費を計算し、これを12箇月で除して月額の経費を算定するなどして決定しているが、耐用年数の経過前に解約され、創設費のうちレンタル開始から解約までの期間(以下「経過年数」という。)に回収される額が要回収額を下回ることになった場合の未回収額はレンタル方式(一部の高額商品に導入されている2段階料金制のレンタル方式を除く。)では徴収することはできないこととなっている。
 しかして、従来からレンタル方式により提供してきたカラー電話機等の解約数が58年度231万個、59年度328万個、60年度428万個と急激に増加しているので、その解約状況について本院で調査したところ、次のような事態が見受けられた。

 すなわち、東京ほか10総支社管内の48電報電話局等(注1) において61年7月中に解約されたカラー電話機等(ミニファクスを除く。)20,765個及び東京ほか6総支社管内の15電報電話局等(注2) において59、60両年度に解約されたミニファクス487個の経過年数についてにみると、商品別の平均で1.6年から7.3年となっていて、いずれもレンタル料金の算定基礎とされている耐用年数の8年から10年を下回っている状況であり、なかでも、カラー電話機、プッシュホン、ホームテレホンD、ビジネスホン24E、ビジネスホン50E及びミニファクスの各商品については、経過年数が耐用年数とされている期間の半ばにも達していない状況であった。
 そして、この調査結果により、本院において、60年度中に解約された上記6商品の全数271万個について創設費の回収額等を試算したところ、要回収額は約418億円であるのに対して回収済額は約148億円で差引き未回収額は約269億円に上っていた。

 このような事態を生じたのは、前記のようにカラー電話機等の設置について利用者による選択が自由になったことに加え、近年、利用者の好みが多様化するなかで新商品を好む傾向が強くなっていることなどから、カラー電話機等から新商品への取替えが多いことにもよるが、貴会社においてもこのような事態に対する対応が十分でなかったことによると認められる。
 ついては、カラー電話機等から新商品に移行する傾向は今後も継続すると認められ、カラー電話機等が耐用年数の経過前に解約される事態も跡を絶たないと予想されるところから、これに対する適切な対応策を講じないまま推移すると、創設費の未回収額が毎年多額に発生することとなって、貴会社の経営上好ましくない事態を招くことになるので、前記のように、耐用年数より短い期間で解約されることの多いカラー電話機等のレンタル方式による提供について見直しを図るなどの施策を講じる要があると認められる。

 よって、会計検査院法第36条の規定により、上記の意見を表示する。

(注1)  東京ほか10総支社管内48電報電話局等
東京総支社 東京新宿支社ほか2支社 四谷電話局ほか4電報電話局等
関東総支社 神奈川支社ほか4支社 平塚電報電話局ほか4電報電話局
信越総支社 長野支社ほか1支社 塩尻電報電話局ほか3電報電話局
東海総支社 愛知支社ほか3支社 安城電報電話局ほか3電報電話局
北陸総支社 石川支社ほか1支社 金沢電話局ほか3電報電話局
関西総支社 大阪北支社ほか3支社 吹田電報電話局ほか4電報電話局等
中国総支社 山口支社ほか3支社 防府電報電話局ほか3電報電話局
四国総支社 愛媛支社ほか3支社 今治電報電話局ほか3電報電話局
九州総支社 熊本支社ほか3支社 八代電報電話局ほか3電報電話局等
東北総支社 宮城支社ほか3支社 仙台榴ヶ岡電話局ほか3電報電話局
北海道総支社 道央支社ほか4支社 千歳電報電話局ほか4電報電話局
(注2)  東京ほか6総支社管内15電報電話局等
東京総支社 東京台東支社ほか1支社 荒川電報電話局ほか1電話局
関東総支社 神奈川支社 藤沢電報電話局
信越総支社 長野支社ほか1支社 小諸電報電話局ほか1電報電話局
東海総支社 三重支社ほか1支社 津電報電話局ほか1電報電話局
四国総支社 愛媛支社ほか1支社 松山電話局ほか1電報電話局
九州総支社 熊本支社ほか2支社 熊本電話局ほか3電報電話局
北海道総支社 札幌支社ほか1支社 札幌白石電報電話局ほか1電報電話局