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事業の概要
土地改良事業(農用地開発事業、ほ場整備事業等)及び土地区画整理事業において実施する確定測量
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上記1の地籍調査事業は、地籍の明確化を図るため地籍図等を作成し、その成果が広く国土開発等に利活用されることを目的として実施されており、また、2の土地改良事業及び土地区画整理事業において実施される確定測量は、地籍調査に類似する測量であるが、その成果については、国土調査法において、これを地籍調査の成果と同一の効果があるものとして指定し、地籍調査にも活用できる制度が設けられている。
しかして、
1 については、補助事業の実施が適切でなかったり、その効果があがっていなかったりしていると認められる事態が見受けられ、これは、事業主体等に対する補助事業の適正な実施についての指導等が十分でなかったこと、地籍調査の事業計画が適切なものとなっていなかったことなどによると認められ、
2 については、確定測量の目的は達成しているものの、指定を受けていないため地籍調査と同一の効果は発現していないと認められるなどの事態が見受けられ、これは、指定の制度の周知徹底が十分でなかったこと、都道府県等の地籍調査事業の関係部局と土地改良事業等の関係部局間において相互の連絡調整が的確に行われていなかったことなどによると認められる。
したがって、国土庁において、
1 については、地籍調査に係る補助事業の範囲について通達等に明示するなどして周知徹底を図るとともに、事業主体における事業の実施体制に適合した適切な事業計画の策定と的確な工程管理を行うよう指導するなどして、地籍調査事業の適正な遂行と事業効果の早期発現を図る要があり、
2 については、指定の制度の重要性について広くその周知に努め、地籍調査担当部局が土地改良事業等の関係部局との連絡調整を一層密にするよう指導するとともに、関係省庁に対して一層の協力を要請するなどして、確定測量の指定に係る認証申請のなお一層の促進を図り、総合的な地籍の明確化の進展等を期する要がある。
上記に関し、昭和62年12月4日に国土庁長官に対して、1について是正改善の処置を要求し、2について意見を表示したが、その全文は以下のとおりである。
1 地籍調査事業の実施について
貴庁では、国土調査法(昭和26年法律第180号。以下「法」という。)に基づき、国土の開発及び保全並びにその利用の高度化に資するとともに、地籍の明確化を図るために国土の実態を科学的かつ総合的に調査することを目的として、地籍調査事業を実施する市町村等に対し毎年度多額の国庫補助金を交付している(昭和61年度の事業費138億7219万余円、国庫補助金76億2970万余円)。
地籍調査事業は、事業主体である市町村等において、その地域内の一筆の土地ごとに所有者、地番及び地目の調査並びに境界及び地積の測量等を行い、その結果に基づき地籍図原図及び地籍簿案(以下「原図等」という。)を作成し、公告、一般の閲覧及び調査上の誤り等の修正の手続(以下「公告等」という。)を行った上、地籍調査の成果としての地籍図及び地籍簿(以下「成果」という。)とするものである。そして、この成果は主務大臣又は都道府県知事の認証を受けた後、その写しが登記所に送付され、これに基づいて土地登記簿に変更の登記がなされるとともに、市町村においてもその写しが一般の閲覧に供されて、土地の所有と利用の関係を明らかにする基礎資料として広く国土開発等に利活用されることとなるものである。
本件地籍調査事業については、本院が53年に検査した結果、市町村における補助事業の実施が適切を欠いていたり、その効果があがっていなかったりしていると認められる事態が見受けられたので、本院において同年11月に貴庁に対し是正改善の処置を要求したところであり、これに対し貴庁では、54年中に数次にわたり都道府県等に対し通達を発するなどして、事業の円滑かつ適正な実施に努めているところである。
しかして、北海道ほか19県管内の251市町村において、55年度から60年度までの間に実施した地籍調査事業(調査面積4,610.39km2 、事業費16,000,809千円、国庫補助金10,255,598千円)の実施状況について検査したところ、宮城県ほか12県(注) 管内の44市町村において、次のとおり、補助事業の実施が適切でなかったり、その効果があがっていなかったりしていると認められる事態が依然として多数見受けられた(調査面積143.32km2 、事業費628,258千円、国庫補助金415,777千円)。
(1) 事業主体において、原図等を作成したものの公告等を行わないまま、国土調査事業等実績報告書を提出し、調査終了年度経過後検査当時まで1年以上にわたりこれを保管しており、補助事業の実施が適切でないと認められるもの
事業主体 | 調査面積 | 事業費 | 左に対する国庫補助金 |
37 | km2
121.33 |
千円 509,623 |
千円 336,875 |
(2) 事業主体において、成果を作成したものの、県知事に対する認証請求を行わないまま、検査当時まで1年以上にわたりこれを保管しており、補助事業の効果があがっていないと認められるもの
事業主体 | 調査面積 | 事業費 | 左に対する国庫補助金 |
9 | km2
16.26 |
千円 85,965 |
千円 57,126 |
(3) 事業主体において、成果の認証を受けたものの、その写しを登記所に送付しないまま、検査当時まで6箇月以上にわたりこれを保管しており、補助事業の効果があがっていないと認められるもの
事業主体 | 調査面積 | 事業費 | 左に対する国庫補助金 |
4 | km2
5.73 |
千円 32,670 |
千円 21,775 |
このような事態を生じているのは、貴庁において、本院の処置要求を受け前記の処置を講じたものの、事業主体等に対する周知徹底及び指導が十分でなかったこともあって、なお、
ア 地籍調査により作成された原図等については、作成後速やかに公告等を行って地籍調査の成果とし、補助事業を完了させなければならないのに、事業主体において、このことに関する理解が十分でなかったこと、
イ 公告等が終了した成果については、速やかに認証を受け、その写しに基づき登記の変更等が行われなければ地籍調査の効果は発現しないと認められるのに、事業主体において、この点についての認識が十分でなく、認証の請求及び登記所への送付がなおざりにされていること、
ウ 地籍調査の事業量が事業主体の実施体制に適合したものとなっていなかったり、原図等の公告等、成果の認証請求及び登記所への送付よりも、新規採択地区の測量の実施を優先させたりするなど地籍調査の事業計画が適切なものとなっていなかったこと、
エ 地籍調査に従事する職員が、その事務の内容を熟知していなかったことなどによるものと認められる。
ついては、地籍調査事業は今後も長期にわたり継続して実施され、貴庁において、引き続き多額の国庫補助金を投入することになるのであるから、
ア 地籍調査に係る補助事業は、原図等の公告等の完了までを対象としていることを今後通達等に明示するなどして、事業主体に対し周知徹底を図るとともに、事業主体における公告等の遂行状況の確認を十分行うよう、都道府県に対し指導すること、
イ 地籍調査事業の効果をあげるため、成果の認証請求、登記所への送付が遅滞なく行われるよう、地籍調査の趣旨について事業主体に対し周知徹底を図ること、
ウ 事業主体における事業の実施体制に適合した適切な事業計画の策定と的確な工程管理を行うよう、事業主体に対し指導すること、
エ 地籍調査に従事する職員の養成を図るため、今後更にその研修内容を充実させるよう指導を強化すること
などの処置を講じ、もって地籍調査事業の適正な遂行と事業効果の早期発現を図る要があると認められる。
よって、会計検査院法第34条の規定により、上記の処置を要求する。
2 土地改良事業及び土地区画整理事業に係る確定測量の成果の活用について
土地改良事業、土地区画整理事業(以下「土地改良事業等」という。)等においては、地籍調査に類似する調査測量として、一筆の土地ごとの地形及び面積を確定するために確定測量を実施している。当該事業の施行者が、この確定測量を国土地理院の設置した基準点等に基づいて実施し、これにより作成した地図及び簿冊(以下「確定測量の成果」という。)について法第19条第5項の規定に基づき地籍調査の成果としての認証を申請し、内閣総理大臣又は主務大臣が、この確定測量の成果が地籍調査の成果と同等以上の精度又は正確さを有すると認めたときには、これと同一の効果があるものとして指定できる制度(以下「指定の制度」という。)が設けられている。そして、この指定を受けた場合には、事業の施行者は、登記所に指定があった旨を通知することとされている。
上記に関し、地籍調査業務を所管している貴庁からの協力要請を受けて、換地を伴う土地改良事業については、その所管省庁である農林水産省において、56年1月に、事業地区の面積が一定規模以上の場合などにおいては、原則として換地処分公告までに極力、確定測量の成果の認証申請を行うこととする旨の「国土調査法第19条第5項の成果の認証に準ずる指定の申請に係る事務取扱い等について」(昭和56年農林水産省構造改善局長通達55構改B第1847号。以下「56年農水省通達」という。)を、また、土地区画整理事業については、その所管省庁である建設省において、55年8月に、確定測量の成果は登記手続と併行して指定を受けるよう努めるものとする旨の「土地区画整理事業の測量成果の国土調査法第19条第5項の指定等について」(昭和55年建設省都市局区画整理課長通知建都区発第38号。以下「55年建設省通知」という。)を、さらに、62年4月には、55年建設省通知を改正して、土地区画整理事業の確定測量の成果は、換地処分に伴う登記手続と併行し、原則として法第19条第5項の指定を受けるものとする旨の「土地区画整理事業の測量成果の国土調査法第19条第5項の指定等について」(昭和62年建設省都市局区画整理課長通知建設省都区発第24号。以下「62年建設省通知」という。)を、それぞれ都道府県知事等あてに発し、確定測量の成果の指定促進に努めているところである。
そして、貴庁では、上記56年農水省通達及び55年建設省通知が出されたことに伴い、56年5月に、「換地を伴う土地改良事業及び土地区画整理事業と地籍調査との調整等について」(昭和56年国土庁土地局長通達56国土国第198号。以下「56年国土庁通達」という。)を都道府県知事あてに発し、地籍調査の実施機関及び都道府県の地籍調査関係部局は、換地を伴う土地改良事業及び土地区画整理事業の施行者並びに都道府県及び国の機関の関係部局との間の連絡を密にして土地改良事業等の実施予定及び進ちょく状況等の把握に努めることとしている。
しかしながら、北海道ほか19県において、55年度から61年度までの間に実施した土地改良事業の確定測量3,770工区(確定測量面積167,862.3ha、確定測量費10,170,773千円、国庫補助金相当額等4,830,722千円)及び土地区画整理事業の確定測量128工区(確定測量面積5,694ha、確定測量費3,675,802千円、国庫補助金相当額1,331,412千円)を対象として検査したところ、確定測量の目的は達成してはいるものの前記指定を受けるための認証申請を行っていないため、地籍調査と同一の効果が発現していないと認められるものなどが次のとおり見受けられた。
(1) 国土地理院が設置した基準点等に基づき確定測量を実施しているのに、換地処分公告後においても確定測量の成果の認証申請を行っておらず、地籍調査と同一の効果が発現していないと認められるものが、土地改良事業において588工区(確定測量面積19,780.19ha、確定測量費1,288,242千円、国庫補助金相当額等608,461千円)、土地区画整理事業において36工区(確定測量面積1,370.9ha、確定測量費849,398千円、国庫補助金相当額501,902千円)、それぞれ見受けられた。
(2) 確定測量の成果について、指定を受けたのに、登記所に対する通知が6箇月以上なされておらず、登記所において指定を受けたことの確認ができない状況となっていると認められるものが、土地改良事業において45工区(確定測量面積3,013.5ha、確定測量費172,921千円、国庫補助金相当額78,956千円)、土地区画整理事業において1工区(確定測量面積28.1ha、確定測量費34,200千円、国庫補助金相当額22,800千円)、それぞれ見受けられた。
このような事態を生じているのは、道県及び関係事業主体において、地籍調査の目的及び指定の制度についての認識が十分でなかったこと、56年農水省通達及び55年建設省通知の趣旨が周知徹底されていなかったことなどのほか、貴庁においても、
ア 地籍調査の目的及び指定の制度の周知に努める必要があると認められるのにその努力が十分でなかったこと、
イ 56年国土庁通達の趣旨の周知徹底等が十分でなかったため、地籍調査事業の関係部局と土地改良事業等の関係部局間において相互の連絡調整が的確に行われておらず、また、地籍調査の担当部局において、土地改良事業等における確定測量の実施状況及び確定測量の成果の認証申請状況について十分把握していなかったことなどによるものと認められる。
ついては、貴庁が所管する地籍調査事業の調査面積が、要調査面積285,000km2 に比べ90,364km2 (進ちょく率31.7%)にとどまっている状況であることなどにかんがみ、確定測量の成果が可能な限り地籍調査を実施した場合と同一の効果を発現できるようにするため、貴庁において、
ア 地籍調査の目的及び指定の制度の重要性について、研修、連絡会等の各種機会を利用するなどして広くその周知に努めること、
イ 都道府県等の地籍調査担当部局が土地改良事業等の関係部局との間の連絡調整を一層密にするよう指導するとともに、貴庁及び都道府県等が土地改良事業等についての確定測量の成果の認証申請状況等を的確に把握できる体制を整備すること
などの処置を講ずるとともに、農林水産省及び建設省に対し、56年農水省通達及び62年建設省通知の趣旨及びその内容の周知徹底を図ることについて一層の協力を要請するなどして、指定に係る認証申請のなお一層の促進を図り、もって総合的な地籍の明確化の進展等を期する要があると認められる。
よって、会計検査院法第36条の規定により、上記の意見を表示する。
(注) 宮城県ほか12県 宮城、山形、栃木、埼玉、千葉、新潟、岐阜、愛知、三重、兵庫、奈良、高知、大分各県