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  • 昭和61年度|
  • 第2章 所管別又は団体別の検査結果|
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  • 租税

租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの


(2) 租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの

会計名及び科目 一般会計 国税収納金整理資金 (款)歳入組入資金受入
 (項)各税受入金
部局等の名称 麹町税務署ほか189税務署
納税義務者又は源泉徴収義務者 487人

 上記の190税務署において、納税義務者等487人から租税を徴収するに当たり、課税資料の収集、活用が的確でなかったため収入金等を把握していなかったことなどにより、徴収額が不足していたものが457事項1,087,433,533円、徴収額が過大になっていたものが30事項51,088,752円あった。これらについては、本院の注意により、すべて徴収決定又は支払決定の処置が執られた。これを各国税局等ごとに集計して掲げると別表 のとおりである。

(説明)
 昭和61年度国税収納金整理資金の各税受入金は、徴収決定済額43兆4721億余円で、このうち源泉所得税、申告所得税及び法人税の3税で計31兆2594億余円となっていて、全体の71.9%を占めている。

 しかして、本院がこれら3税の課税内容に重点をおいて検査したところ、前記の190税務署において、課税資料の収集、活用が的確でなかったため収入金等を把握していなかったり、法令適用の検討が十分でなかったため税額計算等を誤っていたり、納税者が申告書等において所得金額、税額計算等を誤っているのにこれを見過ごすなどしていたりして、徴収額に過不足を生じているものが487事項あった。

 これを税目別にみると、源泉所得税に関するもの37事項、申告所得税に関するもの266事項、法人税に関するもの161事項、相続税に関するもの18事項及び有価証券取引税に関するもの5事項となっており、これらのうち、源泉所得税、申告所得税及び法人税に関するものについてその主な態様を示すと次のとおりである。

1 源泉所得税に関するもの

 配当に関するもの(13事項)、退職手当に関するもの(13事項)及び給与等に関するもの(7事項)について
 配当、退職手当、給与等(給料、賃金、賞与等をいう。以下同じ。)及び報酬については、支払者が源泉徴収義務者となって、支払の際に所定の方法により各受給者に対する税額を計算してこれを徴収し、原則として徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならないこととなっている。また、未払となっている配当等については、支払の確定した日から1年を経過した日において支払があったものとみなし、源泉徴収義務者はこれに対する税額を徴収してその翌月10日までにこれを国に納付しなければならないこととなっている。そして、これらの場合に源泉徴収義務者が法定納期限までに納付しなかったときは、納税の告知をしなければならないこととなっている。

 しかし、上記の計33事項については、源泉徴収義務者が法定納期限経過後長期にわたって源泉所得税を納付しなかったり、税額の計算を誤ったりしているのに、申告所得税や法人税の申告に当たって提出された決算書等の調査が十分でなかったため納税の告知をしていなかった。

 源泉所得税に関する徴収不足の一例を給与等について示すと次のとおりである。

<事例>

 某徴収義務者は、昭和60年7月から61年8月までの間に支払った給与等505,499,674円及び60年5月から61年7月までの間に支払った報酬1,960,000円、計507,459,674円に対する源泉所得税を納付していなかった。

 しかし、同人の青色申告決算書等によれば、上記期間中に給与等及び報酬が支払われていることが明らかであるのに、支払金額及びこれに対する税額を調査していなかったため、上記支払金額に対する源泉所得税額52,043,974円について納税の告知をしていなかった。

2 申告所得税に関するもの

(1) 資産所得の合算に関するもの(84事項)について

 生計を一にする一定範囲の親族の資産所得(利子所得、配当所得及び不動産所得)については、これを主たる所得者(注) の所得に合算しこの合計額が所定の金額(58年分までは1000万円、59年分からは1500万円)を超えるときには、この合計額に対する税額を計算した後、その税額を各人の所得に応じてあん分し、それぞれの税額を計算することとなっている。

 しかし、上記の84事項については、生計を一にする配偶者に資産所得があるのに、法令適用の検討が十分でなかったことや申告書の資産所得に関する記載事項等を見過ごしたことのため、これを主たる所得者の所得に合算することなく税額を計算するなどしていた。

(注)  主たる所得者 生計を一にする一定範囲の親族のうち、総所得金額から資産所得の金額を差し引いた金額が最も大きい者をいい、資産所得だけの場合は資産所得の金額が最も大きい者をいう。

(2) 配当所得に関するもの(21事項)及び雑所得に関するもの(44事項)について

 配当については、源泉分離選択課税(注) の適用を受けた配当を除いて、その支払を受ける者に配当所得として課税することとなっており、また、貸付金の利子で事業所得に該当しないものなどについては雑所得として課税することとなっている。

 しかし、上記の計65事項については、配当、貸付金の利子等による所得があるのに、課税資料の収集、活用が的確でなかったためこれらの所得に課税しないなどしていた。

(注)  源泉分離選択課税 配当について、その支払を受ける者が法人の発行済株式の総数又は出資金額の100分の5以上を有する場合又は法人から支払を受ける配当の金額が1回25万円(年間50万円)以上の場合を除いて、他の所得と分離し100分の35の税率による課税を選択することをいう。

(3) 譲渡所得に関するもの(41事項)について

 資産の譲渡益については譲渡所得として課税することとなっている。この譲渡所得のうち土地建物等の譲渡に係る所得については、他の所得と区分して課税することとなっていて、土地建物等の所有期間に応じて長期譲渡所得と短期譲渡所得(注) とに分けてそれぞれ特別な税額計算の方法を執ることとなっており、また、短期譲渡所得は長期譲渡所得より高率で課税することとなっている。

 しかし、上記の41事項については、譲渡所得があるのに課税資料の収集、活用が的確でなかったため課税しなかったり、申告書等において譲渡経費の額を誤るなどしているのに法令適用の検討が十分でなかったことやこれを見過ごしたことのため、譲渡所得金額を過小のままとしていたり、長期譲渡所得、短期譲渡所得についての税額計算の方法を誤ったりなどしていた。

(注)  長期譲渡所得と短期譲渡所得 長期譲渡所得とは、所有期間が譲渡した年の1月1日において10年を超えている土地建物等の譲渡に係る所得をいい、短期譲渡所得とは、同じく10年以下の土地建物等の譲渡に係る所得をいう。

(4) 給与所得に関するもの(33事項)について

 給与等から生ずる所得については、その年中の給与等の収入金額から所定の給与所得控除額を差し引いた残額を給与所得の金額として課税することとなっている。

 しかし、上記の33事項については、実質的に給与等とみなされる収入金額があるのに課税資料の収集、活用が的確でなかったためこれを給与等の収入金額に合算して課税しなかったり、申告書において給与所得控除額の計算を誤っているのにこれを見過ごしたため給与所得金額を過小のままとしていたりなどしていた。

 申告所得税に関する徴収不足の一例を(2)の配当所得について示すと次のとおりである。

<事例>

 某納税者は、所得税の申告に当たり、昭和60年分については給与所得を27,190,000円、61年分については配当所得を25,600,000円及び給与所得を24,245,000円、計49,845,000円としていた。

 しかし、某会社の59年4月から61年3月までの2事業年度分の決算書等によれば、同会社は配当について60年5月27日、61年5月28日に支払の確定をしていて、同人には、その支払の確定の日に60年分及び61年分としてそれぞれ32,000,000円の配当があったこととなるのに、同会社の配当に関する資料を確認して正当な配当所得を合算しなかったため、申告所得税額60年分11,329,200円、61年分2,410,700円、計13,739,900円が徴収不足となっていた。

3 法人税に関するもの

(1) 同族会社の留保金額に関するもの(26事項)について

 同族会社(注) については、通常の法人税を課するほか、利益を社内に留保した金額が所定の金額を超える場合、その超える部分の金額(以下「課税留保金額」という。)に対し特別税率による法人税を課することとなっている。

 しかし、上記の26事項については、同族会社で課税留保金額があるのに法令適用の検討が十分でなかったことや申告書の同族会社に関する記載事項を見過ごしたことのため、特別税率による法人税を課さないなどしていた。

(注)  同族会社 特別税率が適用される同族会社とは、株主等(株主等に同族会社でない法人がある場合はその法人を除く。)の3人以下並びにこれらと特殊の関係にある個人及び法人が有する株式の総数又は出資金額の合計額が、その会社の発行済株式の総数又は出資金額の100分の50以上となる会社をいう。

(2) 退職給与引当金に関するもの(21事項)について

 退職給与規程を定めている法人がその使用人の退職により支給する退職給与に充てるため、退職給与引当金勘定に繰り入れた金額については、期末退職給与の要支給額(注) から前期末退職給与の要支給額を控除した金額(又は給与総額の100分の6相当額)と、期末退職給与の要支給額の100分の40相当額から期末における前期から繰り越された退職給与引当金勘定の金額を控除した金額とのうち、いずれか少ない金額を限度額として損金に算入することが認められている。そして、使用人が退職した場合には、退職給与引当金勘定の金額のうち退職者の前期末退職給与の要支給額に相当する金額を取り崩して益金に算入することとなっている。

 しかし、上記の21事項については、申告書において期末又は前期末退職給与の要支給額を誤るなどしているのに、法令適用の検討が十分でなかったことやこれを見過ごしたことのため、限度額を超えた繰入額を損金としていたり、使用人が退職した場合に退職者の前期末退職給与の要支給額に相当する金額を益金としていなかったりなどしていた。

(注)  期末退職給与の要支給額 期末において、在職する使用人の全員が自己の都合で退職するものと仮定した場合に、各使用人について退職給与規程により計算される退職給与の合計額をいう。

(3) 土地の譲渡等に係る譲渡利益に関するもの(16事項)について

法人が短期所有土地(注) を譲渡した場合の譲渡利益金額については、通常の法人税のほか、特別税率による法人税を課することとなっている。

 しかし、上記の16事項については、短期所有土地に係る譲渡利益金額があるのに、法令適用の検討が十分でなかったことや申告書等の土地の譲渡に関する記載事項を見過ごしたことのため特別税率による法人税を課さなかったり、申告書において譲渡経費の額を誤っているのにこれを見過ごしたため、譲渡利益金額を過小のままとしていたりなどしていた。

(注) 短期所有土地 所有期間が譲渡した年の1月1日において10年以下である土地(借地権等を含む。)をいう。

 法人税に関する徴収不足の一例を(3)の土地の譲渡等に係る譲渡利益について示すと次のとおりである。

<事例>

 某会社は、昭和60年1月から12月までの事業年度分の申告に当たり、借地権の譲渡価額361,254,804円からこれに係る費用の額として350,000,000円を控除した金額11,254,804円を譲渡利益金額と算出し、これに対する特別税率による法人税額を2,250,800円としていた。 しかし、同会社の決算書等によれば、上記350,000,000円は、貸倒れによる特別損失であって、当該譲渡のために要した費用とはならないのに、譲渡費用の内容について検討が十分でなかったため、譲渡利益金額に対する税額70,000,000円が徴収不足となっていた。

(別表)

租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったものの図1