会計名及び科目 | 一般会計 (組織)文部本省 (項)義務教育費国庫負担金 |
部局等の名称 | 文部本省、岩手県ほか9都府県 |
国庫負担の根拠 | 義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号) |
事業主体 | 岩手県ほか9都府県 |
国庫負担の対象 | 公立の小学校及び中学校並びに盲学校及び聾学校の小学部及び中学部に要する経費のうち教職員給与費等 |
国庫負担対象額 | 1,860,433,702千円(昭和60年度) |
上記に対する国庫負担金交付額 | 930,216,851千円(昭和60年度) |
国庫負担対象額のうち共済費に係る額 | 231,252,823千円(昭和60年度) |
上記に対する国庫負担金相当額 | 115,626,411千円(昭和60年度) |
上記の義務教育費国庫負担金の算定の基礎の一つである共済費(長期給付負担金及び追加費用)は、法令の規定に基づき、公立学校共済組合の組合員である公立の義務教育諸学校の教職員について都道府県が負担する経費であるが、北海道ほか22都府県の臨時的に任用される産休等補助教職員に係る共済費に対する国庫負担の状況について検査したところ、(1)地方交付税の交付団体のうち岩手県ほか5県においては、文部省の指導が徹底していなかったなどのため、法令上組合員資格を有しない産休等補助教職員を公立学校共済組合に加入させ、その者に係る共済費を負担してこれを国庫負担対象額に計上しており、また、(2)地方交付税の不交付団体である東京都ほか3府県については、関係法令の趣旨に対する文部省の配慮が十分でなかったことから、公立学校共済組合に加入していない産休等補助教職員についても共済費に係る国庫負担対象額を算定することとなっているなど交付団体に比べて均衡を欠く算定方法となっていた。
したがって、文部省において、(1)については都道府県が共済費について法令に適合した取扱いを行うよう指導するなど所要の措置を講じ、(2)については共済費に係る国庫負担対象額の算定方法を適切なものに整備し、もって共済費に対する国庫負担の適正を期する要がある。
上記に関し、昭和62年11月26日に文部大臣に対して改善の処置を要求したが、その全文は以下のとおりである。
貴省では、義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)の規定に基づき、毎年度、都道府県に対して、公立の小中学校等の義務教育諸学校に要する経費について義務教育費国庫負担金を交付しており、昭和60年度における交付総額は2兆3940億0212万余円となっている。
上記の国庫負担金は、教育の機会均等を確保し教育水準の維持向上を図るために、公立の義務教育諸学校に要する教職員の給与費等の経費について、原則としてその実支出額の2分の1を負担するものとされているが、特別の事情があるときは、政令で定める額を国庫負担額の最高限度とするものとされている。そして、この最高限度については、義務教育費国庫負担法第2条但書の規定に基き教職員給与費等の国庫負担額の最高限度を定める政令(昭和28年政令第106号)の規定により、各都道府県ごとに、経費の種類の区分に応じて所定の方法で算定した額(以下「国庫負担対象額」という。)の合計額の2分の1と定められている。
この国庫負担金には、公立学校共済組合(以下「公立共済」という。)の組合員である公立の義務教育諸学校の教職員に係る共済関係の経費のうち都道府県が負担する長期給付負担金及び追加費用(以下「共済費」という。)に係る分が含まれており、60年度では2857億2361万余円となっている。このうち長期給付負担金は、地方公務員等共済組合法(昭和37年法律第152号)の規定に基づき、公立の義務教育諸学校に勤務する教職員である組合員の退職年金等長期給付の財源の一部に充当するため都道府県が負担するものであり、また、追加費用は、地方公務員等共済組合法の長期給付等に関する施行法(昭和37年法律第153号)の規定に基づき、37年の地方公務員等共済組合法施行日前から勤務していた組合員等の施行日前の期間に係る給付額等について不足する財源を補てんするため都道府県が負担するものである。
この公立共済の組合員の資格を有する者は、地方公務員等共済組合法第2条及び同法施行令(昭和37年政令第352号)第2条の規定等の定めにより、常時勤務に服することを要する地方公務員とされており、さらに、臨時的に任用される者であっても、常時勤務に服することを要する地方公務員について定められている勤務時間以上勤務した日が引き続いて12箇月を超えるに至った者は、12箇月を超えるに至った日以後同様の勤務を行うこととして引き続き任用される期間について組合員資格を有するものとされている。
しかして、今回、60年度における北海道ほか22都府県(注1)
の共済費に対する国庫負担の状況について調査したところ、次のような事態が見受けられた。
(1) 地方交付税の交付団体である都道府県について
地方交付税の交付団体である都道府県(以下「一般県」という。)における共済費に係る国庫負担対象額は、当該年度の共済費の実支出額に教職員の実数に対する国庫負担の限度定数の割合を乗じて得た額と定められている。ただし、女子教職員が出産、育児のために休業する場合に、その職務を補助させるために臨時的に任用する産休補助教職員及び育児休業補助教育職員(以下「産休等補助教職員」という。)の共済費に係る国庫負担対象額は、当該年度の共済費の実支出額と定められている。
しかしながら、岩手県ほか5県(注2) においては、公立共済に加入している産休等補助教職員のうちには、任用期間が引き続き12箇月を超えるに至っていないため法令上組合員資格を有しない者が含まれており、これらの者に係る共済費の実支出額を共済費に係る国庫負担対象額に含めているのは適切とは認められない。
いま、仮に上記により、法令上組合員資格を有しないにもかかわらず公立共済に加入している者に係る分を除外して修正計算すると、60年度における上記6県の共済費に係る国庫負担対象額951億3089万余円は945億5010万余円となり、これに係る国庫負担金相当額475億6544万余円は472億7505万余円となり、2億9039万余円が過大に交付されていたことになる。
このような事態を生じているのは、貴省における指導が徹底していなかったため、県において法令上組合員資格を有しない者を加入させ、その者に係る共済費を負担し、これを実支出額に算入して国庫負担対象額を算定していたこと、貴省において国庫負担金を交付するに当たりこの点についての審査が十分でなかったことなどによるものと認められる。
(2) 地方交付税の不交付団体である都道府県について
地方交付税の不交付団体である都道府県(以下「政令県」という。60年度は、東京都、大阪府、神奈川県、愛知県の4都府県。)における共済費に係る国庫負担対象額は、毎年度当該都道府県ごとに政令で定めた額及び文部大臣が大蔵大臣と協議して定めた額にそれぞれ当該年度の5月1日現在の教職員定数等を乗じて得た額の合計額と定められており、この教職員定数の中には任用の期間を問わず現に任用している産休等補助教職員の実数を算入することとなっている。
しかしながら、東京都ほか3府県(注3) においては、5月1日現在の教職員定数の中に算入した産休等補助教職員の実数のうちには、公立共済に加入していない者や任用期間が引き続き12箇月を超えるに至っていないため法令上組合員資格を有しないにもかかわらず公立共済に加入している者が含まれており、共済費に係る国庫負担対象額の算定に当たって、5月1日現在任用されているからとしてこれらの者を教職員定数の中に一律に算入することとしているのは、地方公務員等共済組合法等の趣旨に照らし、また、共済費に係る国庫負担対象額の一般県との比較において均衡を欠くことになるので、適切とは認められない。
いま、仮に上記により、公立共済に加入していない者等国庫負担金算定の基礎として算入することが適切でない者に係る分を除外して修正計算すると、60年度における上記4都府県の共済費に係る国庫負担対象額1361億2193万余円は1323億7397万余円となり、これに係る国庫負担金相当額680億6096万余円は661億8698万余円となり、18億7397万余円の開差を生ずることとなる。
このような事態を生じているのは、貴省において地方公務員等共済組合法等の趣旨に対する配慮が十分でなかったことから、教職員定数に正規の組合員であるか否かを問わず5月1日現在産休等補助教職員として任用されている者の人数を含めることとしていて、正規の組合員に係る共済費について国庫負担とすることとしている一般県の取扱いに比べて均衡を欠く算定方法となっているのに、これにより共済費に係る国庫負担対象額を算定することとしていたことなどによるものと認められる。
ついては、公立の義務教育諸学校の教職員に係る共済費は今後も引き続き国がその一部を負担していくものであり、その額も多額に上ることが見込まれるのであるから、上記の事態にかんがみ、貴省において、(1)一般県については、都道府県が産休等補助教職員に係る組合員資格の適正な取扱いを行うよう指導するとともに、これについての審査を徹底するなど所要の措置を講じ、(2)政令県については、共済費に係る国庫負担対象額の算定方法を適切なものに整備し、もって共済費に対する国庫負担の適正を期する要があると認められる。
よって、会計検査院法第34条及び第36条の規定により、上記の処置を要求する。
(注1) 北海道ほか22都府県 北海道、東京都、大阪府、岩手、宮城、福島、栃木、埼玉、千葉、神奈川、新潟、福井、山梨、静岡、愛知、滋賀、兵庫、鳥取、岡山、広島、徳島、福岡、長崎各県
(注2) 岩手県ほか5県 岩手、福島、埼玉、千葉、兵庫、鳥取各県
(注3) 東京都ほか3府県 東京都、大阪府、神奈川、愛知両県